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俺をNTR系チャラ男と勘違いして上官口調の僕っ子生徒会長があからさまに口止め料のキスを毎日してきて困る。しかも月日と共に愛が重い通い妻化してメチャ可愛い  作者: 神達 万丞
第二話『分からなくなってきた、君は何でそんなに優しくするの?』警戒対象→とても不器用ないいやつ
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16「キス十一回目。夕暮れのイタズラ、首筋にアマガミする会長」


☆★ 


 七月二十六日


 取り引き十一回目。


「暑い、だるい。りんご亭のアイスコーヒーが飲みたい」

「神無月うるさい、うだうだ文句たれるな。これもれっきとした学業の一環だ。黙ってちゃっちゃとポスター貼っていけ。そこ位置が右に曲がっているぞ」

「へいへい。それにしてもパッとしない地味なポスターだ。私立高なんだからもっとカラフルな色合いにするべきだろ? せめて旅行会社並に華やかなレイアウトならひと目もつきそうなのにな」

「学校的にはたかが文化祭程度だからな、生徒が思い出を残せて楽しめる程度の低予算で十分なんだろ」


 今回、だるい生徒会活動は外回り。

 文化祭のチラシ配りとポスター貼りだ。

 駅前でチラシを配布したり、商店街の掲示板とか駅前とかへ貼る許可をもらいに役場など巡る。

 複数関わっているところもあるので結構面倒だ。

 仕事が押しているのは理解するけど、そこまで青春を急いで何処へ行くのやら。


 今日も二人きり。

 司令塔に不信感募る生徒会はスタンドプレイが多い。

 夏休みに仕事をしなければならないので気持ちは分かるが、この様子だとその原因を招いたのも、大方他の役員が仕事を放棄していたんだろ。


 そんな二人きりの仕事も慣れた。

 されど俺達の場合、世間話をするほど親しい関係でもないのでほぼ黙々と作業をやっている。

 それどころか呉越同舟だと言うことを忘れてはいけない。

 会長を裏切ったら躊躇いもなくその場でパンツ脱ぎさり、俺の輝かしい未来へとどめを刺しにくるぞ。


 それにあの女帝とぶつかるほど急接近したがまだたったの十日程度なのだ。

 何か劇的に変化が起こるわけはない。

 それでなくても何が好きなのか、何が嫌いなのか、家庭環境とか会長の詳細は不明だ。

 元々学内活動以外は謎のベールに包まれている。友達とか一杯いそうだがそういう交友関係は噂で流れてこなかった。


 しかしだ、今日は会長の様子がおかしい。

 先程から改札口付近に貼ってある掲示物の内容に興味を抱いている。


「出し抜けにどうしたんだ。各駅停車で行く温泉地のポスター凝視して?」

「神無月、世の中は不公平だと思わないか?」

「宗教勧誘なら間にあっているぞ」

「違う」

「じゃあ政治批判か?」

「興味ない」 


 今日は珍しく感情を顕にしている会長。

 不機嫌そうに眉間を寄せている。


「なら、かたや山や海やプール、かたやサマーバケーションなのに制服着て文化祭の挨拶回り。そんなに教師へ媚び売って無駄な無料奉仕に青春を費やしたいのかとか?」

「それは好きでやっているからいいんだ。社会へ向けて色々と勉強になる」

「では何が言いたい? 俺でも理解できるように説明してくれ」

「僕には友達がいない。なのに世間はおひとり様イベントが少なすぎる。ひとり旅を計画していたら、地元料理は値段だけがゴージャス。行きたい温泉宿が一人だと二人料金になる理不尽さ。ぼっちは適当に全国チェーンのラーメン屋か銭湯でも入ってろということか?」

「それはご愁傷様。俺も友達二人しかいないから気持ちは分かる。企業的にはおひとり様よりグループや家族の方が金を落とすからどうしても優先するんだよ。なので一人で入るカラオケやボーリングは周囲に気を使う」

「友達といっても、たったの二人しかいないのに上から目線か? 不良のくせにいい度胸だ」


 ぼっち? 

 初めて耳にする特ダネ級情報。

 あのカリスマが? 

 学園のマドンナが? 

 ブーツで踏まれたい上司三年間不動のナンバーワンが?

 俺でも二人いるのに? 

 道理で昼休み一人寂しく屋外でお昼食べているわけだ。


「会長にだって長野がいるじゃないか?」

「あいつは友達というよりもっと違った存在だ」


 旅館に断られたのが相当悔しかったのか、歯軋りしておもむろに俺へ愚痴を吐く。

 確かに一人旅行は学生には難易度高め。

 俺の場合は駅前にあるビジネスホテルを利用している。

 温泉旅館だと二人部屋で料理の兼ね合いもあり二人料金になることが多いから使わない。


「相変わらず難儀な関係だな」

「とにかく僕は一人旅行がしたい!」

「なら温泉旅館にこだわらなければいい。泊まる気あるなら何処でも泊まれるからな。もっと根気よく探せば宿が見つかるかもしれないけど先は長いぞ」

「昔からの天然温泉にこだわりたいんだ。それにバイトと家の家事もこなしているから泊まって暫く離れたい」

「一人旅はそれが理由?」

「いや、メインは観光地の極上スイーツを食べることさ。僕はケーキに目がなくてね、ご当地ならではのお菓子を食べてみたい」


 そういうことか。

 会長と初めてプライベートの話をした。

 俺は内心戸惑っている。

 どういう心境の変化だ?  

 散々肌には触れているのに手順が真逆だから苦笑する。


 本日の業務が終了。

 現地解散したかったが真面目な会長は先生へ報告義務があると学園へ戻る。

 付き合わされた俺も生徒会室に戻り、夕暮れをバックに疲弊してダレていると、また不意に会長からキスされた。 

 女にキスされるのはまだなれない。


 今日の場所は首筋。

 しかも会長は噛んできた。

 甘ったるい香水と痛いけど興奮がそれを打ち消す。

 また難易度高いところをチョイスしてきた。

 学園の憧れに日々背徳的な行為をされて俺の理性は最後までも持つのだろうか?


 最初に約束した通り会長は同じところにはしてこない。

 あと残すところ五回……。

 無事に終わってくれと俺は普段から信じてない神様に願った。


 ちなみに夜。

 用事があってお竜とビデオ通話で会話したら俺の異変を察知する。

 歯型がクッキリと首元に付いていたからだ。

 寝ているうちにうちの飼い猫がエサをねだって噛み付いたんだろうと、苦し紛れの嘘で何とか誤魔化す。

 会長にしてやられた……。


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