幕間。――有給休暇の現状報告と、収穫資産目録。
マシマシ系ラーメンという名の巨大なプロジェクト(一杯)を完遂し、拠点の調理場には束の間の静寂が訪れていた。
俺は、トート神から無理やり引き出した【神域の目録(Wiki)】を開き、ここ数日間の休暇で更新された、自分自身の「能力」と、周囲の「環境」を整理することにした。
無計画な拡張は、いつか破綻を招く。現状把握は基本中の基本だ。
休暇執行人:御子柴
• 職業: 某社のエンジニア(現在は有給休暇中)
• 特性: 【職人的な最適化】。物事を「効率」と「こだわり」の視点で解析し、魔法を使って物理的に解決する。
• 保有スキル:
• 【神域の目録(Wiki)】:対象の食用可否、最適な調理法、植物の育成マニュアル(土壌や日照時間など)を網羅したデータベース。
• 【魔導調理】:火加減、水分量、衛生管理を、職人級の精度で制御する魔法技術。
• 【間引き】:食材調達の際、立ちふさがる魔物を「生態系管理」の名目で排除する、圧倒的な実力。
従者(加入順)
1. ガウル(銀狼)
• 役割: 索敵、荷運び、およびおじさんの良き理解者(ツッコミ役)。
• 経緯: 最初に加入した従者。今ではおじさんの作る濃い味の料理に完全に胃袋を掴まれている。
2. ピヨ(フェニックス)
• 役割: 高機動型火種、および「恒温管理(暖房)」担当。
• 経緯: 地這龍の卵に紛れていた貴重種。おじさんの魔力を吸って孵化し、最初におじさんを見たことで親だと思い込んでいる。
3. コウジ(発酵の精霊)
• 役割: 熟成、醸造、および「衛生管理」担当。
• 経緯: 古井戸に封じられていた潔癖症の精霊。おじさんの徹底した「クリーンルーム並みの掃除」に感動し、醤油造りの相棒として定住。
協力(あるいは陥落)した神々
• 女神
• 経緯: おじさんのラーメンの香りに釣られて降臨。その味に陥落し、拠点に通い詰めている。
• 知識の神トート
• 経緯: マシマシ系の「理不尽な美味」に衝撃を受け、「無知の悦び」に目覚めた神。おじさんに「Wiki鑑定(目録)」を授けた。
• 死神
• 経緯: 熟成醤油の染みた「ブタ(チャーシュー)」を食し、「死が遠のく味がする」とまで言わしめた。
拠点環境:北の山脈・魔導農園
• 付帯施設: 『神域のニラ農園』:ピヨの熱とWikiの知識で急速育成される、香りが武器レベルの菜園。
• 『熟成井戸』:コウジが管理する、最高級の醤油を醸造する施設。
• 周辺住民: スカイエルフの狩人たち:天空山羊のチーズを提供。おじさんの「マシマシ」の洗礼を受け、完飲の喜びを知った山の民。
目録の情報を確認し終え、俺は静かにウィンドウを閉じた。
マシマシ系という「塩分」のピークを越え、口の中は今、強烈なニンニクと醤油の残響に支配されている。
「主……。目録を見ながら、なんでそんなに険しい顔をしてるんですか?」
ガウルが、空になったどんぶりを舐め終え、不思議そうに俺を見上げる。
「……いや。ガウル、お前も知っているだろう。……しょっぱいものを全力で堪能した後は、口の中を『リセット』しなければならん」
「……リセット?」
「……『甘いもの』だ」
おじさんの有給休暇、第二段階(フェーズ2)。
これまでの「脂と醤油」の暴力から一転、今度は「糖分」による、神々をもとろけさせる甘美な構築が始まろうとしていた。
「ピヨ、次の火加減は繊細だぞ。……焦がさないよう、とろ火を維持しろ」
「ピヨッ!」
プロットなどということは考えず、食べたいものを書きたいという作品です。
第2章もお付き合い頂けると幸いです。




