第17話 神域のニラと、Wikiによる環境構築(ビルド)
「……なるほど。この崖の斜面、日当たりと風通しが『マシマシ』だな」
俺は拠点の裏手に広がる断崖を、新調した眼界で見渡していた。
知識の神トートから無理やり引き出した【神域の目録(Wiki)】は、俺が視線を向けた岩肌の情報を、淀みないテキストデータとして網羅していく。
【エリア:拠点北側斜面】
• 土壌: 弱酸性(腐葉土多め)。グリフォンの糞が魔力肥料として蓄積。
• 推奨作物: 『断崖のニラ(神域変種)』
• 育成アドバイス: 朝露を魔法で急速冷却(結露)させると、繊維が柔らかくなり、香りの強度が200%向上する。
• 警告: あまりに香りが強いため、風下に住む魔物が一時的に混乱する恐れあり。
「……完璧だ。マシマシ系に不足していた『鮮烈な緑』、ここで自給自足できるな」
俺は指先から魔力を放ち、岩肌を耕しながら、北の山脈で間引きがてら採取したニラの種を蒔いた。
普通なら数ヶ月かかる成長も、俺の魔力供給とWiki直伝の「急速冷却」を当てれば、数日で収穫まで持っていける。
「ピヨ、お前はあっちの区画を温めろ。発芽には一定の地熱が必要だ」
「ピヨッ!」
フェニックス(ピヨ)が小さな羽を羽ばたかせ、地面に適度な熱を供給する。
ガウルはその横で、俺がWikiで見つけた「品種改良用の魔石」を一生懸命掘り起こしていた。
「主……これ、ただの菜園じゃなくて、もう魔導農園ですよね? ニラから放たれる『圧』が、普通の野菜のそれじゃありませんよ」
「ガウル、食い物は鮮度が命だ。……それと、Wikiによればこの先に、醤油の熟成を数百年分加速させる『発酵の精霊』が封じられた古井戸があるらしい」
「……えっ、封印を解くんですか?」
「いや。……『有給のついでに、掃除してやる』だけだ」
俺はWikiのマップをスクロールし、目的地をピン留めした。
マシマシ系の「カエシ(醤油ダレ)」をさらなる高みへ導くには、今の醤油では足りない。精霊の力で極限まで熟成された、粘り気のある漆黒の雫が必要だ。
俺が歩き出すと、ピヨが肩に乗り、ガウルが先導する。
その後ろからは、俺の「農園ビルド」を遠巻きに眺めていたスカイエルフたちが、ニラの放つあまりの強烈な香りに涙を流しながら、拝むように付いてきていた。
「……待ってくれ、御子柴様! その草を育てるだけで、なぜ山の空気がこれほど『スタミナ』に満ち溢れるのですか!?」
知るか。俺はただ、俺のラーメンに最高に合う「ヤサイ」が欲しいだけだ。
俺たちの行く手には、古びた井戸と、そこに漂う微かな「麹」の匂い。
おじさんのこだわりは、ついに「菌」と「発酵」の世界をハックし始めようとしていた。
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