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戦闘力ゼロから始める曲がり曲がったVRMMO 。生産をしつつテイマーと弓の両立は欲張りすぎ……?  作者: kanaria
3章.VRMMOを遊びつくせ

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46.待機時間は落ち着かない

 にんまりと笑ったレイが気になるけれどあの場はそこで解散し、私は薬草ダンジョンへ向かった。万が一の場合に備えて薬草類の準備をしておきたかったのだ。

 ついでに果物ダンジョンにも潜って【醸造】用のアイテムを確保しておく。もうトレントの相手は慣れたものだ。裏ボスでも普通に倒せてしまう。


 その後ログアウトしてもレイからの連絡はまだ来ない。

 リアルで計算するとそこまで時間が経っていないと分かるけれど、どうしても気になってしまう。レイは一体何をするつもりなのだろうか。


 気がそぞろになり何も手につかない。

 頼まれていることもないので、私が手伝えることはなかった。こういう時間が昔から苦手だ。


 新しく生産できる場所を作るだけなら変なことにはならないと思うけど……。


 そう思うものの、レイはお風呂に浮かべるアヒル型の拠点を作った前科がある。

 何をしでかしてもおかしくない。


 滝に行った時のモンスターを【解体】しながらそわそわする。

 何か企んでいそうなレイの顔がチラついてブルーモンキーの【解体】に失敗してしまった。


「シャー」


 珍しく岩凪が近づいてきて落ち着けと言わんばかりに舌を出す。

 亀の方もぬうっと顔を近づけてきた。あまり亀の顔を間近で見たことがないので新鮮な気がする。亀の目が半眼なのは岩凪の特徴なのだろうか。


 見慣れない亀のドアップを見たことで少し落ち着きを取り戻した。


「そそそ、そうだよね。岩凪を見習わなきゃ!」


 どんな時でも岩凪が取り乱していることはない。気になり過ぎて何もできないのなら、心が落ち着けることをするべきだ。


 でも、落ち着けることって何?

 ログアウトしてても気になっちゃうと思うんだけど。


 うんうん悩み、出した答えはこれだった。


「ぴぃ? ぴぃぃ?」


 目の前で首をかしげるドジョウのようなモンスターが可愛い。

 本当はもっとモフモフした生き物が好きだけれど、この愛嬌は素敵だ。私のテイムモンスにはない愛くるしさがある。


 じっと自分のテイムモンスたちを見まわすと、ラテに睨まれてしまった。

 ラテは言葉だけでなく、私の心まで読めるのだろうか。ツンデレだけど可愛いと思ってるよ。


 心の中でそう考えると、ラテがツンとそっぽを向く。照れている様子はないので心が読める訳ではないのだろう。

 でも、そんなつれなところも嫌いじゃないぞ。


 ラテを見てにやにやしていると、袖が引かれた。


「ぴぃぃ、ぴぃ!!」


「ん? もう食べきったの?」


 少し目を離していた隙にドジョウのようなモンスターが小エビを食べきっていたらしい。催促のように鳴いている。

 一緒に出した練り餌は尾びれで弾いてしまったようだ。


 必死にアピールする鳴き声に応えてもう一度小エビを【空間収納】から取り出す。するとドジョウのようなモンスターの目が輝いた。よだれを垂らしながら待てをするこのモンスターが野生だなんて信じ難い。

 良しと言うとがっつくので犬を思い浮かべてしまう。


 よく野生で生きていけるよなぁ。

 ご飯をくれたら誰にでもついていきそう。


 2回目の小エビもすぐに食べきり、尾びれで水面を叩く。これも催促の一種なのだろうか。

 小さいけれど威力のありそうな尾びれが直撃し、気絶した哀れなウグイが浮かんでくる。


「うーん、やっぱりモンスターなのかな……」


 この尾びれは脅威的だ。戦ったら強いのかもしれない。

 浮いてきたウグイを【空間収納】に入れると、それを見たドジョウのようなモンスターが滝つぼに潜る。素早い泳ぎはさすが水辺のモンスターだ。


「ぴぃ! ピィィィィ!!」


 突然大きな鳴き声が響き、滝つぼが黄色く光る。一拍の間を置いて魚が浮かんでくる異常な光景に目が丸くなった。


「ぷぅ!」


 警戒したラテが私に駆け寄って水面を睨む。

 でも、水面から出てきたのはどや顔をしたドジョウのようなモンスターだけだった。


「……君、何をしたの」


「ぴぃ!」


 自慢するように胸を見せつけるモンスターは相変わらず強そうに見えない。

 ただ、このモンスターが不思議現象を引き起こしたことは確かだ。


「……シャー」


 呆れたように岩凪がドジョウのようなモンスターを見つめ、浮かんでいる魚を食べる。私が【空間収納】にウグイを入れたのを見て、魚をくれたのかもしれない。

 それならこのドヤ顔も納得がいく。


 とりあえず好意に感謝して手に届く範囲の魚を【空間収納】に入れた。なぜか空き缶まで浮かんでいたのは何があったのだろうか。


「ありがとう!」


「ぴぃ?」


 近くの魚を取り終えたところでお礼を言うと、ドジョウのようなモンスターが首をかしげる。

 私を見上げるその仕草は、もう要らないのかと聞いているようにも見えた。


「私は【水泳】のスキルを持ってないから泳げないんだよ」


 何事もスキルで決まるゲームなので、泳ぎ関連のスキルを持っていなければ溺れるだけだ。

 リアルでは泳げるのに溺れるという間抜けなことはしたくない。この前、ラテが沈んでいったのもトラウマになっている。


「ぴぃ、ぴぃ」


 何て言っているのか分からなかったけれど、何かを訴えたドジョウのようなモンスターが再び滝つぼに潜る。そして、気絶している魚を器用に私の近まで集めてきた。

 波が立っていたので、水魔法的なスキルを使ったのかもしれない。


「おお、ありがとう! めっちゃ大量!」


 岩凪だけでは食べきれないくらいの魚が手に入った。

 ついでに何に使えるのか分からない空き缶もそこそこある。


 こんなにあるならハルカに【料理】してもらおうかな。

 塩焼きとか美味しそうだし。


 この前は魚を釣る行為に怒っているのかと思ったけれど、自分が釣り上げられなければ良いようだ。今回大量にくれたことと言い、特に魚に親近感を覚えている訳ではない気がする。

 しばらく【釣り】をしなくて良いどころか、売れる量の魚に胸が躍った。


「…………シャー」


「ぴぃぴぃ」


 呆れたような岩凪とは対照的にドジョウのようなモンスターがキラキラした目で見上げてくる。

 もっと小エビが食べたいのかもしれない。


「貰いっぱなしは良くないもんね」


 これだけの魚を貰ってしまっては小エビをあげない訳にはいかない。手のひらではなく、木の器に小エビを盛ってドジョウのようなモンスターの前に置く。

 ついでに小さく切られたウグイのお刺身とポイズンクラブを山盛りにしたものも置いた。ウグイのお刺身は私が【釣り】、ハルカに【料理】してもらったものだ。


 この子は一体何が好きなんだろう?

 魚は食べないのかな。


 がっつき具合から小エビが好きなことは分かる。でも、他に何を食べるのか分からない。ドジョウと同じならプランクトンを食べているはずだ。


 プランクトンの用意の仕方なんて知らないけどね!


 水をそこら辺に放置していたら湧くのだろうか。

 むしろ滝つぼの方が豊富にいる気がする。


 じっとドジョウのようなモンスターを観察していると、小エビを食べ終わったモンスターがウグイのお刺身を食べ始めた。

 魚を食べない訳ではないらしい。


「大きいから食べられなかったんだね」


 ウグイは大して大きくない。

 それでも手のひらサイズのこのモンスターにとっては自分と同じくらいのサイズになる。食べられなくても仕方がない。


 量は食べられそうだけど、口がつっかえるのかな?

 自分の体積以上の小エビを食べて、さらにウグイも食べてるから胃の大きさは問題ないよね。


 ドジョウのようなモンスターはどこに入っているのか不思議なくらいよく食べる。

 でも、さすがにポイズンクラブは食べられないようだ。1つ食べて首を傾げ、2つ目で完全な毒状態になっていた。


「おっと」


 そういう倒し方をしたい訳ではなかったので毒消し薬を渡すと、そちらも躊躇なく飲み込む。野生のやの字もない。


「ぴぃ!」 


 毒消し薬を飲み込んでから毒状態になっていたことに気づいたのか、威嚇するように鳴く。

 今回は完全に私が悪い。


「ごめん、食べられるかと思ったんだ」


 小エビとカニは同じ甲殻類だ。食べられるなら好きかもしれないという出来心だった。


 こんなに近くに生息してるから食べたことがあると思ったよ。

 今もカニが一杯滝つぼに落ちたし。


 食べようと思えばいくらでも食べられる環境だ。

 まさか食べたことがないとは思わなかった。


「ぴぃぴぃ!!」


 滝つぼの水面をべしべし叩くドジョウのようなモンスターをなだめようと両手を上下に振る。

 どうどうと声をかけると、余計水面を尾びれで叩き出した。これは完全に怒っている。


「ピィピィ!!」


「……シャー」


 今にも攻撃をしかけてきそうなドジョウのようなモンスターに、岩凪が呆れたような視線を向けた。私の方もチラリと見ていたので、私にも呆れているのだろう。


「ごめん……」


 ちょっとした出来心がここまで大事になるとは思っていなかった。

 反省してドジョウのようなモンスターの前に小エビの山を作ると、ドジョウのようなモンスターの視線が私と小エビを右往左往する。それでも先ほどまでと違って飛びつかなかった。


「ぴぴぃ?」


 小エビを見て眉間に皺をよせ、口をもごもごさせる。警戒はしているけど食べたいのかもしれない。

 ドジョウのようなモンスターはじっと私を見た後、すすーっと小エビに近づいた。


「ぴぃ!」


 ゆっくりと小エビを食べ、異常がないことを確認してから猛スピードで小エビを頬張る。

 魚とは思えないくらい頬が膨らんでいた。


 良かった。

 怒りは解けたみたい。


 ほっと胸を撫でおろすと、周りに集まっていたラテたちも解散する。

 ドジョウのようなモンスターが怒ったことで近くに来てくれていたようだ。今日は何度も警戒させてしまって申し訳ない。


「…………ぷぅ」

「ササッ」

「…………」


 どこか呆れを含んだ視線をドジョウのようなモンスターに向け、各々興味のある方へ移動していく。

 移動する前にラテと薬草丸を撫でるとラテはツーンとした態度で、薬草丸は照れたように葉っぱの帽子を撫でる。ラテはよくブラッシングをしているのでさらさらのふわふわだ。


 いつまでも触っていたくなる魅力に囚われていると、レイからチャットが入る。

 ようやく第一の街の対応が決まったらしい。


 長かった気がするけれど、結構早かったような気もする。

 途中ログアウトもしていたから、リアルだと深夜だろう。


 指定された場所へ向かうため、私は腰を上げた。

 ドジョウのようなモンスターともお別れだ。


「ぴぃ?」


 小エビを食べ終え、悲しげな目で器を見るドジョウのようなモンスターにこれ以上おかわりはないことを告げる。

 するともっと悲しそうな目になったので、次に来るときも小エビを持ってくることを約束する。野生のモンスターにえさを与えて良いのか悩んだけれど、禁止されていないから問題ないはずだ。


 私は木の器を【空間収納】に入れ、ドジョウのようなモンスターに手を振った。

 どうでも良いけど、ドジョウのようなモンスターって長いよねと考えながら。

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― 新着の感想 ―
勝手に着いてきそうな感じだなこの子 岩凪「お前なんで着いてきてんの?」 ドウジョウ?「面白そうだから?後美味しいものくれるから!」 岩凪「・・・・・・・はぁ」
連れて帰ってあげなよー
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