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戦闘力ゼロから始める曲がり曲がったVRMMO 。生産をしつつテイマーと弓の両立は欲張りすぎ……?  作者: kanaria
3章.VRMMOを遊びつくせ

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47.第一の街救出大作戦

 第一の街にあるレイが指定した場所に行くと、異様に大きな建物が建っていた。ただ、形は周りになじんでいる。


「これが、生産できる場所?」


 思った以上の大きさに驚いていると、レイが胸を張った。


「そう、大手ギルドにも資金提供をお願いしたら大きくなっちゃった!」


「うちらへの説明は事後やったんに、大手には先に言ったんかいな」


「……」


 拠点のリビングで説明した時にはいなかったナツミがジト目でレイを見る。もしかしたら呼び出されるまで説明がなかったのかもしれない。

 ナツミの隣に立っているハルカは感情の分からない目で建物を見上げている。


「あとはジローかな? アズキとザオはログアウトしてるから」


「……深夜に良くこんなにログインしてるね」


 ログイン率に驚いて見回すと、レイに鼻で笑われた。


「シオンに言われたくないな。それにVRMMOはリアルが夜の方が賑わうから。昼はみんな忙しいでしょ?」


 説明されてなるほどと頷く。

 働いていたり、学生だったりしたら夜しかログインできない。昼間より深夜の方がログインしててもおかしくない。


 レイって何者なんだろ。

 ゲームにも詳しいし、ほんとに定年退職後のおじいちゃんだったりして。


 私と同じくらいログインしているレイの素性が気になったけれど、聞くのはご法度だ。

 一度たしなめられたことと良い、教えたくないのかもしれない。


「悪い、遅れた」


「そんな待ってないよ」


 寝不足なのか疲れからなのか目をしばしばさせながらジローが登場する。レイが悪乗りしたせいでカップルのような応答になっていた。

 それでも反応の薄いジローは目頭を押さえている。普段なら突っ込むのに言葉の切れも悪い。


 ずっと生産してたのかな。

 アバターなのに顔色も悪そう。


 少し心配になったものの、ヤバそうならログアウトするはずだ。

 今回のお披露目は無理してでも来いと書かれていなかった。


 レイも様子のおかしいジローに気づいているはずなのに、スルーしている。となると、よくあることなのかもしれない。


「ジャジャーン! もう分ってると思うけど、新しい生産所の完成だよ! 見てみて!!」


「「おおー!」」

「「…………」」


 私とナツミの歓声と、無言組の反応に二分する。半分は無言だったことも、興奮気味のレイは気にしていなさそうだ。


「すっごいこだわったのがさ、1階なんだ」


 建物の入り口を開けてレイがみんなを中に招き入れる。

 建物の大きさ的に広いのだろうと思っていたけれど、想像以上だ。


「何ここ、ホール?」


 エントランスがホールのようになっていて、私たちを出迎える。広いせいかとても迫力があった。

 特に目を引くのは2階へとつながる階段だ。ででんと構えるその様は、まるでファンタジーの世界の王宮にでもありそうだ。しっかりと赤いカーペットも敷かれている。


 すごく豪華だなぁ。

 臨時の建物ならここまでしなくても良かったんじゃ……。


 目の前の目立つ階段だけでなく、こだわった装飾がいたるところにある。

 この天使をモチーフにした像は本当に必要だろうか。生産に全く関係がない。


 天使の像にやたら似ているレイをついジト目で見てしまう。まさかレイがここまで自分のアバターを気に入っていると思わなかった。

 私なら絶対、像にされたくない。


 にこにことご満悦なレイには悪いけれど、ギルド拠点がまともで良かった。

 アヒル型だけど。


 それでもレイの像がないだけまともだよね。

 もしそんな像があったら壊しちゃってたかも。


 私が黒い笑みを浮かべている間に他のメンバーはある程度建物の構造を把握したらしい。

 目を瞠ったり、壁を触ったりしている。


 近未来的なギルド拠点と違い、中世ヨーロッパがモチーフだから気になる。なぜか入口の横にでかい招き猫が居るけれど、招き猫も雰囲気に馴染んでいると言えば馴染んでいる。

 いや、馴染んでるか?


 夜に見たら怖そうな招き猫の足を撫でると、ツルツルした陶器の質感を感じた。

 これもただの置物なのかもしれない。ラテや薬草丸も招き猫を触っている。


「そうそうそれでね、左側が素材買取所と素材販売所! NPCの1割増しで買い取って、そのままの値段で売るの。利益は出てないけど、慈善活動だし仕方ないよね。右側は作ったアイテムを販売するスペース。NPCに任せても良いし、自分で売っても良い。ただ、自分で売るには【露店】のスキルが必要になるから気を付けてね」


 次々と説明していくレイはまるでマシンガンのようだ。余程構想を練った部分なのだろう。

 確かに素材の買取や販売をするのは素晴らしいと思う。掘り出し物を探しに来てみたい。


 天使像や招き猫には驚かされたけれど、思ったよりしっかりとした生産所だ。

 プレイヤーが使いやすいように工夫がされている。


 それに右側の販売スペースも良い。勝手にアイテムを売ってくれるなんて最高だ。

 私の【空間収納】に眠っているアイテムも売れるのだろうか。


「NPCにアイテムを預ける場合はいくらか引かれるの?」


 NPCを雇う場合お金がかかる。素材の買取や販売にもNPCを使うのならどこかで補填しなければならないはずだ。

 多少は利益が減っても仕方がない。


 そう思ったけれど、レイは首を横に振る。


「販売に関しては無料だよ。ただ、生産用の部屋を使う場合に100Gもらおうと思ってる」


「へぇ、管理が難しそう」


 生産総合所はゲームの一部としてNPCが管理しているから集金も簡単だ。でもプレイヤーが運営するとなると、悪だくみする人が出てくる。

 追い出すのは簡単だろうけど、どうするつもりなのだろうか。


 謎の招き猫を触りながら問いかけると、レイがにやりと笑った。


「その招き猫にお金を入れると対象の階にお金を払った時間居られるシステムを導入したんだ。ギルド拠点の個人部屋の応用だね」


「へー、そんなこともできるんだ」


 ただの置物だと思ったのに違ったらしい。

 そのシステムがあれば拠点で複数のギルドがパーティを開くことが出来そうだ。


 ずいぶんと実用的で面白い仕組みだなぁ。

 このために生産スキルごと階分けがされていたのか。


 感心して頷きつつ招き猫の模様を触ると、急にモニターが出た。

 そこにはいくらか金額が書いてある。


「みんなに謝らないといけないんだけど……、大手がすごくお金を一杯出してくれたから『暇人の集い』からお金を出してなくてさ。代わりに管理をやることになったからよろしく」


「「「はぁ!?」」」

「…………」


 今度はハルカ以外全員の声がハモる。

 さすがにそれは想定外だった。


「管理って何したら良いん? めんどいやろ」


「いや、NPCの雇用契約が切れるタイミングで再雇用するだけかな。そこの招き猫からお金を出して」


 嫌そうな顔をしてレイに詰め寄りそうだったナツミが元の位置に戻る。

 その程度なら許容範囲内だったのかもしれない。


「それだけでええん?」


 そんなうまい話があるのかと私も疑っていると、レイが上目遣いになった。


「さすがにそれだけだと、僕も悪い気がしてさ。もし可能なら第二陣向けにレシピ相談会とか、講習会みたいなのを開いてあげてよ。そうしたら不満も出ないと思うしさ」


 小首をかしげてお願いというポーズをとるレイは確信犯だ。

 うるうるした目を向けられても、胡散臭い目でしか見れない。


「まあ、それくらいならええよ。なあ、ハルカ」


「…………うん」


 こくりと頷くハルカに目を見開く。すごい人見知りのハルカが教師をできるのか甚だ疑問だ。

 でも本人がやると言っているのだから問題ない……のだろうか。


 ハルカも不安だけど、私も大丈夫かな?

 他の人と違って大した技術なんて持ってないんだけど。


 私は他のギルドメンバーと違い、生産スキルがゲーム内トップクラスに至っていない。せいぜいサーバートップに入れるかどうかだ。

 アレンジ力にもかなり不安がある。


 下級ポーションとか下級マナポーションとかしか教えられない気がするんだけど……。


 それもみんみんから教わったものだから、教えて良いか聞いた方が良いかもしれない。門外不出のレシピとかだと困る。


 私とジローが悩んでいると、レイが近づいてきた。


「第二陣用だから難しく考えないでよ。初心者用レシピシリーズあるじゃん。あれを教えてくれれば良いから」


「えっ、それだと参考にならなくない?」


 その程度のレシピなら生産総合所にある。

 作ろうと思えばいくらでも作れるのだ。わざわざ講習を行う必要性が分からない。


「だーかーらー、教える相手が第二陣なんだってば! それにレシピを読むだけで実践するのって結構スキルが要るよ」


「あー、そっか」


 確かにレシピ本だけ見ても難しいところはある。初心者用シリーズだとあまり感じないけれど、教室があった方が楽だろう。

 生産アイテムが足りないから、少しでも作れる人を増やそうという作戦でいくらしい。


 初心者用シリーズなら構わないと私が頷くと、今度はジローが唸る。

 普段仕事をしているジローはあまり余計なことに割ける時間がないようだ。


「それって回数は決まってるのか? 悪いが1,2回にしたい」


「うーん、4,5回はやって欲しいけど、忙しいなら無理をしなくて良いよ。もし回数が少ないならジローは【裁縫】をお願い」


「分かった」


 このギルドで【裁縫】持ちはジローだけだ。その配役も頷ける。逆に【細工】や【解体】は覚えている人が多いから分担すれば良い。


「第二陣向けのアイテムを作るより断然楽だね」


 にっこりと笑うと、みんな頷く。


 さすがにアイテムを作り続けるのは厳しかったので、まぁまぁな落としどころだ。

 これで文句を言う人は勝手に言わせておけばいい。


 嫌な言い方をすれば、ここまでしているのに第一の街のNPCが物を売ってくれなくなったら第二陣の自己責任だ。

 場所を提供したのに使わないで第一の街のNPCにそっぽを向かれるのならどうしようもない。助けを求めるだけ求めて自分たちは何もしないのは間違っている。


 ここをフル活用してもアイテムが足りないのなら何か考えないといけないけど、その場合でも時間稼ぎにはなるでしょ。

 私は私にできることをしますか。


 それ以上レイから説明もないようなので、一度ログアウトして今度【調合】の講座を開くことを決めた。

誤字脱字のご報告ありがとうございます。

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