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第3話 「ハルト」


『ハルト』先生がこの教室に来て、3日が経った。

菜乃葉は今も、彼がくれた教科書を愛用している。


昼休みになった。

男子たちは外へ遊びに行き、女子は群れになって先生の所へ押し寄せる。

菜乃葉も行きたかったが、勉強が最優先だ。


教室の隅で一人、黙々と勉強をしていた。

すると─────。


「小笠原さん──…で、合ってる?」


質問攻めから開放された『ハルト』が、

菜乃葉の机にやってきた。


「え──、あ、はい…」


なんで、私の机に……?


菜乃葉は戸惑いながらも、返事をした。


『ハルト』は優しく微笑むと、間違ってたらごめんだけど、と言って、菜乃葉の使っている教科書を指さした。


「これ、僕の使ってた教科書…な気がして」


菜乃葉は目を見開いた。


やっぱり、この人だ。

前の、持ち主。


「そう…だと思います。表紙に『ハルト』って書いてありました、から……。あ、呼び捨てしてすみません……」


「いいよ、下の名前で呼んでもらっても。

ところで、僕の落書き、見てくれた?」


ハルトは苦笑しながら言うと、52ページを開いた。


そこには……。


『この僕のアドバイスを持ってしても数学が嫌な時は、47ページを開いてみろ。』


ナルシスト……っ。


まあそんなことは置いといて、47ページ……。


47ページは、1度開こうとしたのだが、のりでくっつけてあって開くのを諦めたページだ。


あれ、わざとだったんだ。


「……これ、おふざけで書いたんだよね。だけど、ちょっとギミックっぽくて面白くない?」


確かに。ちょっと面白い。


「じゃあ、勉強に疲れたら開いてみますね」


「うん」


ハルトがまた、微笑む。

その綺麗な笑顔に、菜乃葉の胸は高鳴った。


なんだろう、この人。

すごく綺麗な目をしてる。


夏の明るい陽射しのような、心を優しく慰めてくれる風のような。


すごく、優しい。


─────────────────────


「なのっちー!一緒にかーえろっ!」


帰りに突然飛びついてきたのは、菜乃葉の大親友、春宮みつほだ。

彼女は勉強がよくできるため、ちょくちょく菜乃葉に勉強を教えてくれる、優しい人だ。


「いいよー」


菜乃葉とみつほは、歩き始めた。



電車の中。


「ねえ、なのっち。なんかいい事あったの?」


菜乃葉がスマホをいじっていると、

みつほが話しかけてきた。


「え、?そう見える?」


「うん、今日すっごく楽しそう」


「そう…かもね」


今日、なにかいいことあったっけ。


───────あ、思い出した。


ハルトと、初めて話したんだ。

それって、そんなに嬉しいことだったかな…。


「ふーん、何があったのか、また聞かせてね!」


「うん」


みつほはバイバイ、と言うと次の駅で降りていった。


電車に揺られながら、今日あったことを思い返してみる。


……楽しかったな。

ハルトと話すの。


明日も、話したいな───────。


ちょっと長くなりました!

すみません……。

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