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第4話 「過去」


 菜乃葉はかつて、みつほのように、感情を素直に露わにする普通の女子だった。

楽しい時は楽しい。悲しい時は悲しい。

そんなことを、素直に言えた。


─────── しかし、その日を境に、


菜乃葉は感情を表に出さなくなった。


時は、2年前に遡る。

菜乃葉が中2の時だ。


その時の菜乃葉には、好きな人がいた。


彼の名前は、栗本清と言った。


彼は所謂「陽キャ」というやつで、女子とも男子とも、分け隔てなく関われる、優しい性格を持っていた。

菜乃葉はその優しさに心惹かれ、

好きになったのだった。


そんな時、よく恋愛相談の相手になってくれたのが、当時の親友、松下奈緒という人物だ。


彼女はどんな悩みも聞いてくれた。…というより、受け止めていた。


「奈緒〜」

「奈緒、聞いてよ〜」


奈緒もまた、人から好かれる性格を持っていた。


菜乃葉は、奈緒を完全に信じ切っていた。



─────── しかし、それが仇となった。


「ねえねえ、栗本くん」

「栗本くん、あのさ……」

「栗本くん」

「栗本くん」


……あれ?


他の人も、同じことが起こっているという。


「橋本ー」

「芦屋くーん」

「伊藤くん」


え、なんで……。


応援してくれるって、言ったじゃん!


家に帰り、やるせなくなる。

今日のことを、AIに相談してみた。


……嘘だ。


『好きな人を奪う』


だって、奈緒は、そんな人じゃ、


『猫かぶり』


ヒュッ


自分の喉から、冷たい息を吸うような音がした。


奈緒が、?

ずっと、私たちに、嘘吐いて……?


あの優しい性格だって、根っからじゃないってこと……?

なんで。

好きな人を奪って、いいことなんて……。


「ちょっと奈緒、話、いい?」


次の日、奈緒に話しかけてみた。

正直、怖い。


「え、いいよ?」

この天使のような笑顔も、嘘。


「なんか……あったの?大丈夫?」


この優しい気遣いも、嘘。


「うん、あのさ……」


全部、全部全部嘘なんだ。


私は奈緒を信じ切ってたのに、奈緒は私たちのこと裏切ってたんだ。


「……酷いよ、奈緒」


「……え?」


奈緒の顔が、一瞬引き攣る。


「どうしたの?急に何……?」


そんな落ち着いた顔したって、無駄。


「好きな人、奪おうとしてるの……?」


「……え」


奈緒の顔がみるみる青ざめていく。

だがお構いなしに、菜乃葉は続ける。


「さっきの笑顔だって、その気遣いだって、

この前ハンカチ貸してくれたのも、弁当分けてく

れたのも、全部、全部全部全部全部嘘なんでしょ

う!?!?」


「っ!」


まるで、なんで知ってるの、と言わんばかりの顔だ。


「私たちの恋愛相談に乗ってくれたのも、私たちから好きな人の情報を集めるためだって知ってる」


「そんな、こと」


「好きな人を奪おうとしてるのだって!!」


全部、知ってるんだから。

いやー、ダークっすねー(?)

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