『バグの脈動、白銀の処刑人』
「……非効率な抵抗だね」少女――魔法少女007が放つ光の剣が、俺の肩を深く抉った。熱い。だが、痛みを感じる暇さえない。彼女の動きは、人間が反応できる領域を超えていた。設計図が視界を埋め尽くし、俺の脳を「回避不能」という絶望的な計算結果で焼き尽くそうとする。「がっ、は……っ!!」腹部に強烈な蹴りを食らい、俺は屋上のフェンスまで吹き飛んだ。鉄格子の軋む音が、死のカウントダウンに聞こえる。「バグは修復されるのが世界の『効率』。……消えて」彼女が最後の一撃を振り下ろそうとした、その時だ。「やあ。随分と手こずっているみたいだね、人形くん」空間がノイズと共に裂け、あの白い毛を汚したウサギ――リッパーが姿を現した。「……リッパー」「一分で終わるはずのデリート作業が、もう五分も経過している。マイナス一万点だ」あいつは無機質な目で俺を見下ろすと、パチンと指を鳴らした。瞬間、俺の右腕の異形が、内側から爆発するような激痛に襲われる。「あ、あああああああッ!!」「君に埋め込んだ『核』は、設計者の所有物だ。僕がその気になれば、君を内側から破裂させることなんて容易いんだよ」リッパーが歩み寄るたび、胸の核が逆流し、俺の意識を闇へ引きずり込もうとする。巴先輩の悲鳴が、呪いのように耳元で反響した。「……ふざ、けんな……ッ!!」俺は血を吐きながら、無理やり立ち上がった。「ほう? まだ動けるのかい」「お前の思い通りには……一歩も、動かねえよ……!」俺は震える左手で、右腕の異形を無理やり掴んだ。「効率だの所有物だの……全部まとめて、俺の毒で塗り潰してやるッ!!」胸の奥で、巴先輩の温かな記憶を、あえてドロドロの憎悪で焼き尽くした。システムへの拒絶反応が、黒い雷火となって俺の全身を駆け巡る。「……上書き、しろ……っ。俺の命を、全部持ってけ……!!」俺がリッパーの喉元へ突っ込んだのは、拳ではなく、むき出しになった俺の『核』そのものだった。設計者が計算できない、純粋な、破滅的な自己犠牲。「なっ、君……正気か!? 自らを消去する気か……!?」初めてリッパーの声に焦りが混じる。黒いノイズが屋上全体を飲み込み、白銀の死神と、漆黒のバグが真っ正面から激突した。




