表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

『蝕まれる日常と、最初の毒』

「……化け物、め」リッパーは忌々しげに吐き捨てると、空間の歪みの中へと消えた。俺の右腕に残ったのは、焦げ付くような熱と、どろりとした黒い残滓。助けた少女は、腰を抜かしたままガタガタと震えている。「あ……ありがとう、ございます……?」「……早く帰れ。ここはもう、普通じゃない」ぶっきらぼうに告げ、俺は逃げるようにその場を去った。家に戻り、鏡の前に立つ。シャツを捲り上げると、胸の中央に赤黒い『核』が、まるで心臓と融合したかのように脈打っていた。そこからひび割れた血管のような黒い紋様が、右腕の先まで伸びている。「はは、これじゃどっちが化け物か分かんねえな……」乾いた笑いが出た。巴先輩を喰ったシステムの一部が、今、俺の命を燃料にして動いている。設計者を地獄に叩き落とすための力。その代償は、俺自身の「人間」としての崩壊らしい。翌日、学校は異様な静けさに包まれていた。リッパーとの接触のせいか、視界に浮かぶ『設計図』の解像度が上がっている。廊下ですれ違う教師、談笑する女子生徒。彼らの笑顔の裏側で、透過された骨格や、生命エネルギーの残量がバーコードのように表示される。世界が、ただの巨大な工場に見えて仕方がなかった。「――見つけた。君が、昨日の『エラー』だね」昼休み、屋上の扉を開けた瞬間、冷ややかな声が鼓膜を刺した。そこにいたのは、リッパーではない。純白のセーラー服に身を包んだ、人形のように整った顔立ちの少女。だが、その瞳には感情の色がなく、頭上には巨大なウィンドウが浮かんでいる。【個体識別:魔法少女007(調整体)/状態:正常(システム追従)】「設計者からの伝言だよ。バグは修復されるのが、世界の『効率』だって」彼女の手元で、光の粒子が一本の鋭い剣へと収束していく。俺は右腕を強く握りしめた。胸の核が、巴先輩の悲鳴に似た不快なノイズを奏で始める。「修復? 上等だ……。俺を直したいなら、その綺麗なシステムごとぶっ壊してみろよ」黒いノイズが、俺の腕を再び異形へと変貌させていく。日常は、もう二度と戻ってこない。俺は、この少女――設計者の手先を殺し、地獄への階段を一つ降りる決意を固めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ