17 お茶会で
ガゼボでサマンサ様を待った。風が穏やかで優しい光で満ち溢れている。
庭の花々の香りが心を落ち着かせてくれた。
今日で彼女の目的が分かると考えているわけではない。少しでもバルモア伯爵家の約に立ちたかった。アルフが幸せでいられるように心を尽くすつもりだ。
メイドに案内されサマンサ様が近付いて来た。今日のドレスは髪色と同じ薄いピンク色だった。可愛らしいプリンセスラインだ。
「ようこそいらっしゃいました。可愛らしいドレスですね。良くお似合いです」
「お招きありがとうございます。二人でお話できるなんて感激しております。ローズマリー様のドレスも素敵ですわね。まるで水の精のようです」
「ありがとうございます。さあお掛けになって。人気の茶葉とお菓子を用意しましたの。気に入っていただけるといいのですが」
かしこまって紅茶を飲む姿を見て可愛らしいと思ってしまった。流石にマナーが綺麗だ。ケーキを食べる様子も上品。
「アレフとはいいお付き合いを?」
何を言っているの?私。小姑みたいな聞き方をしてるわ。小姑だけど。
「はい、アレフ様は優しくて一緒にいてとても楽しい方です。ローズマリー様、ウイルフリード様とはどのような縁で会われたのですか?」
いきなりどストライクな質問が来た。近頃のお嬢様のマナーはこうなのかしら。
「デビュタントで出会いましたの。シルビア様と来てらして、具合の悪くなった私を助けてくださったのです」
本当のことを言う必要はないけど、アルフから何も聞いていないのだろうか。
聞いていてわざと話題にしているのなら返り討ちもありだ。もう昔の私ではない。
「デビュタントで倒れられたローズマリー様を抱きとめたウイルフリード様が一目惚れされたと社交界で噂ですわ。物語のようでロマンチックだと憧れておりました」
「えっ!?一目惚れ…ですか?ウイルフリード様の?」
思いがけない攻撃を受けた気がする。
「はい!学院でも素敵だと憧れる者が沢山いて、それがアルフ様のお義姉様なんて、神様に感謝いたしましたの」
これはどうやら噂を流したのは ウイルフリード様だろう。 情報操作ね。 公爵家だものね。 簡単だろうな。
恥ずかしすぎる。 私の勘違いをどうやって収めたらいいものか、この場を何とか凌がなくては。
「では、サマンサ様の視線は舞台の俳優を観るようなものだったのですか?」
「えっ!気が付いていらっしゃったのですか?」
「あれだけ見られていると分かりますわ」
あの視線を感じない方がおかしいのだけど。
「申しわけございません。不躾な視線でご不快に思われましたよね。罰は婚約破棄でしょうか?」
輝いていた笑顔が萎んだ。
「私にそんな権限はありません。ただいつも視線を感じていたのでなぜなのか分からず不安に思っておりました。アルフのことはお好きなのですよね」
「はい、優しくて頼りになる素敵な婚約者様です」
真っ赤になったサマンサ様が俯いてしまった。
「ではこれからもアルフをよろしくお願いしますね」
「はい…。あの…態度を改めますので 今度お二人のお茶会の時に アルフ様と一緒に招いていただけませんか?」
「ウイル様にお聞きしてみますね。了解が得られましたら招待状をお送りしますわ」
「はい楽しみにしています」
再び花が開くような笑顔を浮かべたサマンサ様にきゅんとしてしまった。
「義姉上、サマンサ僕も一緒にお茶を飲んでも?」
心配だったのだろう。アレフが現れた。
「そちらに座って。お茶を一緒に頂きましょう」
アレフがすっと腰を下ろした。アレフを見て嬉しそうだったサマンサ様が真顔になった。
「アレフ様申しわけありません。私お義姉様とウイルフリード様のお茶会やお散歩を陰から見さていただいていました。学院でお義姉様達の出会いが話題になっていたのです。それで不躾にも目で追ってしまって、大変失礼なことをしてしまいました」
「覗いていたの?」引き気味に身体を反らせたアルフが聞いた。
「覗きではありません。あまりにも絵のようで美しかったので視線が吸い寄せられたというか…つい見てしまったというか。でもいけないことなのでもうしません。 お義姉様にも謝りました」
「それは…義姉上 申し訳ありませんでした。 気がついていませんでした。 なんと言ってお詫びをしていいか」
「もういいの。どうして見られているのか分からなくて困っていたけど、悪意がなかったので許します」
「サマンサ、もう一度マナーの勉強が必要だね」
アルフの声が低くなり空気が冷たくなった。
「あまり叱らないであげて、舞台を観ているような気持ちだったのよ。それにご友人とのお付き合いもあるでしょうし」
「ウイル兄様は公爵家だと分かっているよね?義姉上がそこに嫁ぐために努力をされていることも知っているはずだ。侯爵家の令嬢である君が毅然としていないとお二人に迷惑がかかることが分からなかったとは思えないんだけど」
こんなアルフは初めて見た。サマンサ様がドレスの裾を掴み泣きそうになっていた。
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