15 婚約披露をしました
あの後爆弾発言をしたウイル様はあっという間に元侍女長メリーサを私の専属侍女にしてしまった。
私達は泣いたり笑ったりと随分忙しかったが全てウイル様にお任せした。
そして今日は婚約披露パーティー当日だ。
金色の縁取りの天井で天使や女神様がほほ笑んでいた。
私はウイル様に贈られた薄紫のシフォンを重ねたプリンセスラインのドレスだ。腰のサッシュは黒。あの日見たお星さまのようなダイヤモンドが襟とスカートに縫い付けられている。
あれから何度もエステに通い髪は艶が出て肌はつるんとして透明感が出てきたと思う。メイドは褒めてくれるけどウイル様の隣に立って見劣りしないか心配だ。
彼は生まれた時から美しい人だもの。
ドレスを着て化粧が終わり控室で待っているとウイル様が来てくださった。
「…美しい。藤の花の妖精のようだ。 今日は私の隣にいるんだよ、離れてはだめだ」
「ウイル様こそとても素敵です」
声から瞳から色気が漏れ出ている。反則です。
薄紫色の正装が美貌を引き立てている。
公爵家主催の夜会とあって、シャンデリアが煌々と輝き赤や青のドレスや宝石をを照らしていた。
婚約の儀はハミルトン公爵家とお義父様達の立ち会いの元に静かに済んだ。
こうした大きな夜会は人生で初めてだった。(黒歴史なのでデビュタントの夜会は数に入れたくない)
私はウイル様の腕に手を添えたまま入場を待っていた。
「緊張しているよね。私に任せておけば良い。傍で笑っていてくれるだけでいい」
ハミルトンお義父様が挨拶をされる前に公爵家の列に並んだ。
「今宵は皆様にお集まりいただき嬉しく思う。我が息子ウイルフリードの婚約を発表する。相手はローズマリーバルモア伯爵令嬢だ。皆今後とも宜しく頼む。
では乾杯!!」
「「「乾杯!!」」」
多くの貴族の声が続いた。
ローズマリーは堂々としていた。不躾な視線にも怯まなかった。
隣に立っているのは王族に連なる公爵令息ウイルフリードなのだから。
勝ち目のない喧嘩など売ろうとする方が馬鹿なのだ。
かつての自信のない令嬢はそこにいなかった。
始まりはウイルフリード様とローズマリーのダンスだった。何度も練習しただけあって踊りやすい。リードに身を任せれば自然と笑顔になる。
「挨拶は任せておいて。本当は可愛い過ぎて誰にも見せたくなかった」
「ウイル様こそ素敵すぎて心配です。私だけを見ていてくださいね」
「またそんな可愛いことを言う。これから三曲踊るんだよ」
「嬉しいです。ダンスが楽しいのはウイル様が相手だからですわ」
ウイルフリードの笑顔が普段と違うことに気づいた貴族達は認識を改めた。
婚約者に見せる蕩けるような笑顔が本物で普段は貼り付けたものだったのだと。
二人の周りの空気が砂糖をまき散らしたように甘い。
影響されて自分のパートナーと仲良く踊る姿があちこちで見られた。
二人の義両親や公爵夫妻の姿もそこにはあった。和やかに綺羅びやかにダンスは続いた。
挨拶が終わるとシルビア様の所に連れて行かれた。
「ここで待っているんだよ。少し仕事相手と話をしてくる。飲み物を持ってこさせよう。直ぐ帰ってくるからね」
給仕に合図を送り杯を受け取った。私は葡萄ジュースでシルビア様は白ワインだった。
「もうお兄様が離さないからお話ができなかったじゃないの。素敵なドレスね。よく似合っているわ」
ツンと怒っている振りをするのも可愛らしい方だ。今日のパートナーはハミルトンお義父様の方の従兄弟様らしい。
金糸が織り込まれたタフタ生地のドレスがよく似合っていらっしゃる。
「シルビア様こそ素敵すぎです。女神様降臨としか言えません」
「もう今日の主役が何を言っているの。とても綺麗になったわ。愛の力かしら?」
「揶揄わないでくださいませ」
「本当のことよ。お兄様を笑顔にしてくれてありがとう。お 姉 様」
「ふふふシルビア様と姉妹になるのですね。嬉しいです。頼りない姉ですが宜しくお願いします」
「こちらこそ、仲良くしましょうね」
和やかに話をしているとウイル様が急いで帰ってこられた。
「ごめん、遅くなった。シルビアありがとう。二人共何もなかった?」
「兄様ったら心配症ね。大丈夫よ、私が付いているのだから」
「お姫様二人だから心配したんだよ」
参加している貴族はハミルトン公爵派ばかりだというのにウイルフリードは油断なく目を光らせていた。
かつて甘く微笑み手が届きそうだと夢を与えた王子様は、氷のような微笑みをたたえる公子となって降臨していた。
読んでいただきありがとうございます!楽しんでいただけると嬉しいです。




