13 公子の暗躍
屋敷に帰ったウイルフリードはあの日演劇に来ていた貴族家の令嬢達を調べさせた。あの時はまだ婚約者ではなかったが、ローズマリーはハミルトン公爵家に繋がる伯爵令嬢だったのだ。
いずれ排除する為に名前を知っておくのは悪いことではない。
サハル子爵家の令嬢とミラー男爵家の令嬢が該当者だった。二つの家はウイルフリードのリストに載せられた。
再び嘲れば破滅が待っている。
演技か、きっと叔母上の入れ知恵だな。私の前だけで本当の姿を見せてくれれば何も言う事はない。色々な表情を見せてくれるローズはとても可愛い。
演技など子猫が威嚇しているようなものだ。
後ろに控えている者が誰か知らしめるのも面白い。ローズを侮ればどうなるか目にもの見せてくれる。
磨かれてローズマリーはますます可愛くなった。金色の髪は艶を取り戻し長くなった。白い頬はふっくらし赤い瞳はキラキラ輝いている。
さくらんぼの様な唇は紅を着けなくてもぷるぷると魅了してくる。
ローズマリーはもう少し身長を伸ばしたいらしい。ウイルフリードにとっては今のままで充分なのだが。
医者が言っていた。「成長期の栄養不足が響いていますね」と。
だからだろう、牛乳をよく飲んでいた。
努力の方向が子供っぽくて斜め上だがウイルフリードにとっては可愛いしかない。
「チーズや小魚を干したものを食べるのも良いそうだよ。公爵家のシェフに作らせた」
それはワインにも合いそうなチーズタルトだった。アクセントに砕いたナッツも入っている。
「……美味しそうです。これを私のために……後でシェフにお礼を言いたいです」
「ローズに食べさせたいと言ったら喜んで作ってくれた」
公爵家の使用人はローズマリーのファンが多い。連れて来られた経緯を知っているので同情から始まったが今では性格の良さで人気だ。
「ぜひ頂きたいです。ウイル様と一緒に」
これくらいで喜んでくれるローズが可愛くてウイルフリードは顔が緩んでしまった。手を繋ぎ離宮の庭園を歩いた。
「甘い物もあるんだ」
いつものガゼボにマカロンや苺のケーキプリン、チーズタルトが並べられてある。
ローズマリーがほうっと息を吐いた。
「ウイル様が婚約者でこうしてお茶を飲んでいるなんて、まるで夢のようです。絶望しかなかった私には両親の元へいくことだけが望みでした。
あの頃の私に教えてあげたいです。未来は明るいよ。頑張っていたら良いことがあるよって」
そう言いながらローズマリーは涙をぽろぽろ零した。
ウイルフリードはハンカチを取り出しそっと涙を拭いた。
「ローズが生きていてくれてよかった」
と言いながら細い身体を抱きしめた。
「涙は幸せな時に流れるのですね」
笑いながら涙を零すローズマリーが愛しくて腕を離したくないウイルフリードだ。
「ローズ…」
耳の近くで甘く囁く声にぞくっとする。私は息ができなくなるほど絡め取られている。
腕の中から離れたくない。上は向けない。キスをせがんでいるように見えるから。
「ウイル様お慕いしております」
大きな手が顎にかかり上を向かせられた。
「愛しているよ、私のローズ」
触れるだけの優しいキスが降ってきた。
涙が止まった。どくんどくんと心臓が妙な音を立てている。ウイル様の瞳が蕩けるように甘い。
愛されているのだわ、ぽぽぽと頬が熱を持った。胸も温かい。
暫く動けなかった。
「ローズの身体は腕ですっぽり抱え込めてちょうど良い。無理に大きくならなくて良いのだよ。今のままで可愛い」
「ウイル様に相応しくいられるように綺麗になりたいのです」
「今のままで充分なんだけどね。でも女性が綺麗になりたい気持ちは分かる。
母上が経営する美容サロンを予約しよう。王妃様もお気に入りだそうだ」
「それは…私が行ってもいい所でしょうか?」
「結婚前の令嬢がよく行くらしいから磨かれて来ると良い」
「はい、綺麗になれるのなら行きたいです」
真っ赤になりながら言葉を紡ぐ様子が愛しくて仕方がない。重症だ。
漸く落ち着いた私たちに侍女がお茶を淹れてくれた。恥ずかしいのだろう。ローズマリーは真っ赤なままだ。
「さあ食べよう、どれが良い?」
「せっかくなのでチーズタルトが食べたいです」
「あ~ん」
フォークの先に乗せたチーズタルトを ローズの 唇に差し出した。
驚いて固まるローズが可愛い。食べるまでじっと待った。仕方ないというように口を開けた。
ああ、なんて愛おしいのだろう。はむはむと咀嚼する様子に癒される。
読んでいただきありがとうございます!いちゃいちゃ多めでした。お楽しみいただけましたら嬉しいです。




