12 強い女性に憧れます
「彼の顔を見て少しは元気が出たみたいね」
お義母様が微笑みながら言われた。
一人で夕焼けの見えるバルコニーに立っていた時のことだった。
「ご心配をおかけして申しわけありませんでした」
「顔色が良くなったみたいで良かったわ。あのねローズマリーちゃん、貴族社会はあの様な人がこれからも履いて捨てるほど出てくるわ。
強くなるために演技をなさい。心を許せる場所ではしなくても良いわ。戦いの場所でだけでいいから強い女性の仮面を着けるの。もちろん私達の前では今のままで良いのよ」
「演技をするのですか?」
「そうよ、貴女は次期公爵夫人になるのよ。侮られたら負けなの。傷つくのは誰でも一緒。でも演技をすることで心を守るのよ。それが出来るだけ傷つかない方法。
それに味方がいるのよ、今の貴女には安心できる場所があるでしょう?」
「私に出来るでしょうか?」
「出来るわ。演技をしている内に身に付いてくるから息をするように出来るようになるわ。
昔は一人で戦ってきたのでしょう。それを思えば彼のいる世界は生きやすいのではないかしら。
もしも駄目でも私も旦那様も息子達もみんな貴女の味方よ。いつでも帰って来て良いのよ。ちょっと早いけど嫁ぐ娘への贈り物」
「お義母様… …」
ローズマリーは胸に熱いものが込み上げてきて思わず抱きついてしまった。
そのフローラルな香りに安心した。
「泣きたくなったら彼に聞いてもらって。それでも駄目なら帰ってらっしゃい。
頑張って生きてきたのだからこれからの人生楽しまないとね」
まるで実の母が言ってくれるようだった。
「お義母様養女にしてくださりありがとうございます」
涙は暫く止めることが出来なかった。
演技と聞いて思いついたのは気丈なヒロインが出てくる恋愛小説だった。
理由を話してウイルフリード様に相手になって貰った。
今日のウイルフリード様もキラキラしていらっしゃる。グレーのスーツが凛々しい。イケメンが過ぎる。はあ、美丈夫オーラで殺す気だろうか。
「気の強い振りをするの?心配だな。 無理しなくてもいいんだよ」
「ウイルフリード様の隣に立っても侮られないようになりたいのです」
「心を守る為だと言われたら許すしかないけど。ずっと腕の中というわけにもいかないから協力するよ。で、何をすればいいの?」
「悪女になりますので見ていてくだされば嬉しいです」
「どうして悪女…?」
顔を横に向け肩が震えている。
「私を嘲笑ってくださいませ」
「えっ!?可愛いローズマリーを嘲笑うなんてできないよ」
「お芝居の練習です。さあ」
「うん、いくよ。アノカタッテ チイサクテカワイラシイ ダケネ」
「どうして棒読みなのですか?それに褒めてませんか?」
「思っていないことをローズマリー相手に言うのは辛い。ローズマリーを侮る奴は私が潰すけどね」
悪女はこういう時にツンとするのだ。だから顔を上に向けてそっぽを向いた。
「…可愛い……そんなローズマリーも可愛いね。あっローズと呼んでいい?私のことは ウイルと呼んで欲しい」
もしかしたらウイルフリード様を練習相手にしたのは失敗だったのだろうか。
「ウイルフリード様」
返事がない。
「ウ、ウイル…様」
「なんだい?ローズ」
その顔は蜂蜜に砂糖を混ぜて溶かしたくらい蕩けていた。
そのせいで私の頬は熱を持ってしまった。でもこれでやめたら練習にならない。
「あんな地味な娘きっとメイドよ。公爵令息様には似合わないわ。と言ってみてください…」
ウイルフリード様の顔が怖くなった。
「私のローズにそんなことを言う馬鹿がいるんだね」
「あっ、あの。ずっと前のことです。それに面と向かって言われたわけではなくて。もう気にしていません」
「気にしてるから出てきたんだよ。気が付かなかった。ごめんね。何処で言われたの?劇場の化粧室?」
あまりの鋭さに驚いた ローズマリーは
「今日はこれくらいでやめましょう。今度 台本を作ってきますね」と言って慌ててごまかしたのだった。
読んでいただきありがとうございます!
よく考えれば義母やシルビアという見本がいるのですが、今回はそこに行き着きませんでした。
演技という言葉で直ぐ恋愛小説を思い浮かべたローズマリーです。
楽しんでいただけると嬉しいです。




