差し出した手を握るのは。
蒼は、そっと、そこに立つ人物を確認すると。
澪の手を差し出した。
目が合う。
今まで、こんな風に、正面から、瞳を見る事はなかった。
きっと、
この瞳は、父と同じ色。
自分が受け継げなかった色。
海の両目が、そこにあった。
口元を緩め、
蒼に微笑みかける。
生きていたんだ・・・。
良かった。
この人が壊れないで、済むなら。
自分のつまらないプライドが恥ずかしかった。
自分達は、何をやっていたんだろう。
澪の指先が、海に触れると、
澪は、ハッとしたように、指先を絡めた。
「海・・・なの」
「そうだよ」
「本当に・・・」
そう言いながら、澪は、膝から崩れ落ちた。
慌てて、蒼は、駆け寄ろうとしたが、
海を見て、その場を譲った。
「心配掛けた・・・」
澪が、どうして、ここに現れたのか、察した。
「僕が、間違っていた」
海は、そう言って、澪を抱きしめた。
「離れては、ダメだったんだ。僕も、父親と同じ過ちを繰り返すところだった・・・」
「私の方こそ・・・勇気がなかった」
澪は、両腕で海の体をキツく抱いた。
「何も、考える事はなかった・・・だって、海と出会った時は、何もなかったんだもの」
「そうだ・・・そうだった。僕らは、何も、いらなかったんだ。遠回りしすぎたんだ」
海が、もう、いなくなてしまうかもしれない。
あの時の、大事な人を失ってしまった恐怖が、澪の目を覚まさせた。
一体、何を迷っていたのか。
海を永遠に失ったら、後悔しないのか。
海自身も、踏み切れなかった。
自分の実力に自信がなかった。
こんな状態で、澪を連れて行ける訳がないと思い込んでいた。
互いの存在無くして、未来なんて考えられないのに。
父親と同じ過去を繰り返す所だった。
過去は、戻らない。
自分は、父と同じ道は、歩かない。
「待たせたよ・・・澪。一緒に行こう」
しっかりと抱き合う二人を蒼は、ほっとした顔で、見つめていた。
あたりは、サイレンや人々の話し声で、うるさい。
そんな中で、二人の時間だけが、止まっていた。
父は、母と空港で、別れた。
母のこれからを思い、自分は、夢を叶える為に、一人、海外に行き、
夢半ばで、天に召された。
僕は、
自分が、危機にあって、ようやく、自分自身を何よりも、大事に思う人に気付いた。
間に合った。
なんとか。
父と母の物語を僕らは、繰り返さずに済んだ。
澪と。
生きていこう。
蒼。
すぐ、分かち合う事はできないかもしれない。
でも、
きっと、最高の弟になる気がする。
その日は、近いだろう。
この後、僕のドイツ行きは、少しだk、延長した。
墜落した飛行機に乗ったと思っていた、榊さんは、僕を待つ萌さんのお陰で、
事故に遭わずに済んだ。
そして、
今回の事で、
澪の叔母 麻美さんの件が、明らかになった。




