危機が絆を強くする
振り向かない。
僕は、そう決めた。
澪から、渡された。
キーホルダー。
ボイスメッセージを送ると、少しだけ、気持ちの整理がついた。
「海!」
榊さん親子が、手を振っている。
「早く!早く!」
「あぁ・・先に行ってて」
気になっていた。
僕の送ったメッセージが、澪を傷つけないか。
手すりに掛けたキーホルダーが、
澪が、来るまで、なくならないのか。
これは、間違いなのか、
揺らいだ。
そこから、離れたくなかった。
手摺に掛けたキーホルダーを外そうと思った。
外れない。
澪が、来るまで、待ちたいのか。
簡単に、かける事ができたのに。
「何やってるんですか?」
手摺にいたずらしていると思われ、警備に声をかけられてしまった。
「あ・・あの。外そうと思って」
「あなたが、かけたんですか?」
「彼女に渡そうと思ったんですが・・・いくら、待っても、来ないんで」
「こういう事されると、困るんですよ」
「すみません」
「すみませんけど・・・身元だけ、確認させてもらえますか?」
「え・・と。そろそろ搭乗しないと」
「すぐ、すみますよ」
海は、まずったと思った。
「本当に、すぐ、終わりますね」
格好悪いと思った。
未練がましいから。
澪に笑われる。
警備員は、工具を撮りに行くと、
キーホルダーを外し、海に渡した。
「向こうで、確認するだけだから」
「はい・・・」
次の便で、向かうことを、榊さん親子に伝え、警備室に向かおうとした。
その時だった。
激しい音と、空気が震えた。
天井から、幾つもの、埃や建物の欠片が、降ってきた。
「なんだ?」
海は、警備員と顔を見合わせた。
何か、不味いことが起きた。
外へ飛び出る人々に混じって、二人は、何が起きたのか、
確かめる為に、走り出た。
目にしたのは。
空港の先。
海上に、立ち上る黒煙だった。
「嘘・・・だ」
頭の中が、パニックになった。
自分が、乗る筈だった飛行機が、
黒煙の下にあった。
・・・もしかしたら・・・
そんな思いが駆け巡った。
榊さん・・・・?
思わず、
携帯を取り出した。
繋がらない。
何かが、起きて繋がらないのか。
意図的なのか。
周りを見ると、誰もが、携帯を取り出し、
撮影をしたり、誰かに連絡を取っていた。
澪に、無事を知らせないと。
何度も、掛けたが、澪には、繋がらない。
電波が悪いのか。
もう一度、建物に入り、場所を探す。
榊さん・・・。
澪。
海の頭は、混乱していた。
誰に、一番、連絡したいのか。
建物が、揺れた時に、振ってきた欠片で、
頭に怪我をしていた事に気が付いた。
近くの、旅行カウンターの女性が、海を呼んで、
手当をしてくれていた。
その時だった。
自分を呼ぶ声が聞こえた。




