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ヒトラーが告げる  作者: 猫提督
「磔の男」作戦
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「磔の男」作戦 10


 1958年 ドイツ第三帝国 ウィーン

 ギュンタースたちと別れて目的地である「町はずれの飛行場」と呼んでいる場所に向かって移動を始めた4人であったが、市内には多くのSSが展開しており、何とか出口を探している。

 SSは、各交通機関と主要道路にある検問所に部隊が展開しており、周囲の巡回にもSd.Kfz. 250や騎兵隊が巡回しており、ルセフたちを探していた。

 昨日行った店も何人かのSS兵士による立ち入り調査が行われており、店の中をぐちゃぐちゃにしていた。

 「・・・・ここもダメみたいですね。周囲には親衛隊が展開しておりますし、検問所や主要交通施設じゃ市街地戦装備の兵士が見張りについている状態だ」

 周囲を警戒しながら大尉が、残りの者たちに伝える。

 ルセフは深々と帽子をかぶって襟を立てて周囲の人に顔をなるべく見られないようにしていた。

 「何とかして、町はずれの飛行場に向かわなければ。しかし、ここまでSSが展開していては・・・・」

 完全手詰まりとなってしまったルセフの顔には焦りの色を隠せない状況であったが、大尉一人ではとても戦力不足と言える状態であった。

 「嫌だけど、もう一度この下を移動するのはどう?そこまでは警備されてないでしょうから」

 全国指導員が鼻にハンカチを当てながらマンホールを指差す。

 「できない事はないでしょうが、行き先にたどり着けるかどうか。元々地元民でもない人間がほとんどですから、道順も警戒すべき所も理解していないから。あまり、お勧めできませんな」

 記者が地図を見ながら答える。

 「しかし、いい加減ここに隠れているのにも限界があるんだぜ。何時SSに見つかってもおかしくないよ」

 大尉がそう言って手に持っているFG42を布にくるみながら背中に背負い込む。

 「ん?」

 背後から数台の発動機が唸る音が響かせて近づいてくる。

 ルセフたちの横を走っていくと、目の前にある移動司令部となっているADGZに向かって数人の士官が歩いて行った。

 「どうやら、お偉いさんが来たみたいだな」

 目の前で降りてきた親衛隊将校の肩には「どくろをかみ砕く狼」が描かれたエンブレム下げており、後ろにいる兵士は身長180㎝の大尉よりも一回り大きいような体つきをした者たちが立っていた。

 「見たことのない部隊称だな。戦後新設された部隊か?」

 大尉がそう話していると、体格のいい兵士が何かに気づいたかのように周囲を見渡し始める。

 兵士は、フルフェイスのマスクで顔を覆い、ぶらりとぶら下がった両腕は、床につくくらいに長く垂れ下がっていた。

 ギョロっとした目つきで周辺を見渡す姿は、人というよりは爬虫類のそれであった。

 「なんだ、あいつは!」

 姿を見た大尉は、驚いて腰を抜かしそうになっていた。

 他の三人も、顔から血の気が引くように青ざめていった。

 「あれがギュンタースさんが言っていた厄介な部隊なのかしら」

 「だとしたら、ここにいる事がますますまずい状況となったな。直ちにここから離れないとな」

 記者は、それを言った後に近くのマンホールへと手を伸ばした。

 「大尉。動かすのを手伝ってもらえないか」

 「わかった」

 二人が腰に力を入れて、マンホールのふたを横へ動かすと、真っ黒な深淵がかっぽりと口を開けていた。

 「さあ。早く降りてくださいよ」

 大尉が戦闘となってマンホールの底へと降りていくと、下には身を潜めた浮浪者などが数人座っていた。

 「すまないな。騒がせる気はなんだ」

 ルセフが浮浪者たちに向かって宥めるような口調で告げると、周辺の浮浪者も落ち着いて座っていた。

 「おい、そこの浮浪者。ここに行きたいんだが、どう行けばいいか教えてくれないか?」

 「・・・・そこだったら、われらが案内するよ」

 その声の主の方向を見るとアルバン達一行がランタンを向けながら声をかけていた。

 「アルバンさん。どうしてここに」

 「上の騒ぎを聞いたのでね。地下を駅側に向かって探していたのですよ」

 アルバンがそう言いながら近づいてくる。

 「上で走り回っているSSの連中は、本部の増援が中心となっている。ウィーン駐在の者たちは、消極的だから、総統府の警備や治安警察の補助などにあてがわれているようだ」

 親衛隊の配置を確認していたアルバンの話をまとめている時。大尉が何かに気づき、書き足している地図を広げて指差す。

 「なあ、アルバンさん。今までの話を聞くに、ここの道は、地元部隊が警備しているから、そこまで警戒していないってことだよな」

 「ああ。この道は、本部からのSSの隊員がほとんどいなかったが、例の正体が分からない者たちがチラチラと姿を現しているようじゃ」

 大尉はしばらく考えた後、周囲の武器を見てから。

 「この装備であれば、この道を通っていく以外は、かなり厳しい突破戦となるだろうな。だとしたら、ここを突破するのが一番いいだろうな」

 大戦時にいくつもの市街地戦を経験していた大尉から見た突破路にアルバンを含めた兵士たちは、驚いた表情で顔を見合わせていた。

 「あなたって、本当にあの『キエフの悪魔』だったのね」

 全国指導員が唖然とした表情でつぶやくと、アルバンや他の兵士たちがのけぞるように驚いた。

 「大尉。君の読みであれば、勝算はどれくらいありますか?」

 ルセフが、大尉の顔を見ながら伝えると、大尉は深くうなずいた。

 「よし!大尉の作戦で進めよう」

 こうして、大尉立案作戦である「ライヒス橋突破作戦」を行う事を決定した。

 

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