↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/66

第49話 整体院のいちにち⑤

いやー、タイジュさん面白かったなー。これだけでもう、何か楽しい感じ。

鼻歌を歌いながら、施術室の椅子に座ってのんびりしていると。

チリーン。

ドアの鈴が鳴った。外から、大きな影が身を縮めて入ってくる。

そのサイズ感から、はじめは「まさか、メーメー君!?脱走!?」とか思ったりもしたけど、普通に人間でした。お客さん、失礼しました。

そうだ、お出迎えしなきゃ。いつもサクラちゃんに任せてたから鈍ってるわ。


「いらっしゃい。」

「『コユキ整体院』というのは、こちらでいいんですかい?」

「ええ。私、院長のコユキと申します。」

「ほう、ほう、そうですかいの。わしはオーガと申しますじゃ。いやー、先ほど、アサという我が同胞がここに行って、パーティーに帰ってきましてだ。大変良いという話を聞きましての。」


嘘だ。

この人の目は、嘘を言っている目だ。

とはいえ、今は接客中。やんわりと対応する。

「そうなんですか、気に入っていただけて嬉しいです。」

そしてこの人、イベントの結果発表の時も思ったけど、やっぱ、別ゲームで「勝負だ!」っつって挑んできて、返り討ちにした人だね。この、なんだか老けたようなしゃべり方も、筋骨隆々のでかい体躯も一緒。


「それにしても、貫禄のあるお体ですねー。武道かなにか、やってらっしゃる?」

「いやー、昔はちょいと、柔道その他もろもろで、ならしたもんですがのう。」

「その他もろもろ」が何なのかは……聞かない方が無難だ。うん。

「それに、お話しされてる感じも、なんだか武道を極めた老師って感じですねー。」

「ろ、老師……。」

オーガさんは、なんだかえらい傷ついたような調子で、施術台に手を突いた。

「わし、これでも28なのに……花盛りの20代なのに……。」

「ああ、いえ、そういう風なかっこよさがあるってことですよ!強そうで、いいと思いますよ!」

確かに、言われてきたろうなあ。前も今も、普通に30半ばに見えるもん。しかし、申し訳ないことをしちゃったな。


そうして、整体しながら話してみると……この人、なんだかんだ、結構楽しく話せる人だな。

出会い方が、別ゲームでの「勝負だ!」だからアレだったけど、普通に知り合ってたら仲良くなれてたかも。


「ありがとうごぜーやしたー!」

「またお越しくださーい。」

ちなみに、会話中にさりげなく、ライバルと思っている人を聞いてみたら、何人か上がった中にアオバ、というか私の名前もあったよ。やっぱり、相当響いたんだろうな。体格ではるかに劣る小娘に負けたってことが。ちなみに他は、確かランキング一位のセルリアスさんとか、ジョーさんとか。


そしてまた、静かな時が流れる。

リーン。

次に入ってきたのは……。

「あら、いらっしゃ……い……。」

ここに来るはずのない人だった。

「あんた、前身代わり人形を買った人で合ってますかい?」

裏道横丁で、私がダミーコユキ用の泥人形を購入した店の店主は、黒い頭巾ですっぽり覆った頭を、私に真っすぐ向けて聞いた。

「ええ、そうです。」

「気を付けてくだせぇ……使いすぎると、人形に心が一部移って、独立した行動を取ってしまいます……。そうなってしまうと、檻に入れておいても、抜け出すようになります……。インベントリで厳重に保管するか、使うのを控えるか、どちらかお願いします……。」

「わかりました。」

私がそう答えると、人形屋の店主は、一礼してスーッと消えていった。

あれはもしかして、イベント期間中に使いすぎたからかな?使用はほどほどにしないとな……。


リーン。

「いんちょーう、ただいま帰りましたー!」

えらい軽やかな武器にチェンジしたサクラちゃんが、ルンルンした足取りで帰ってきた。

「あら、おかえり。どんなの、買ったの?」

「アサさんが武器屋のおじさんと相談して、軽いけれどうまく使えばダメージにつながるものっていうことで、こういうフルーレ剣になりました!」

サクラちゃんは、抜き身にしたフェンシングで使うような剣を、すいっと突いて見せた。

「これは出来合いですけど、特注のも作ってくれるらしいです!」

「そうなの、よかったわね。」

はしゃぐサクラちゃんを微笑ましく見つつも、頭からはさっきの人形屋の店主の言葉が離れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。