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第40話 リターンマッチ

かくして私とサクラは整体院に戻ってきた。本来なら、ここを経由せずにゴールドベアもといメーメー君の森まで行ってもよかったんだけど、もしかしたらまだ整体院に、メーメー君の手掛かりが残されているかもしれないと思ったのでこちらに来た。

「施薬室はもう、コユキ院長と私でことごとく探索しちゃったし、院長室は院長しか鍵を持ってないから入れないので……。」

「探す場所は限られるわけか。では、中から見ていくか」

「そうしましょう。」

サクラに鍵を開けてもらい、待合室、カウンター、施術室と念入りに探していく。整体院を開くときにもさらっとは整理したしアイテムも確認したが、今度は、もっとくまなく。続いてベッドの並ぶ入院部屋、その奥のシャワー室、隣の拘束具付きの部屋も。ぶっとい杭やロープを、サクラはこわごわ横目で見ていた。

「室内には何もないか、では外だ」

外の芝生や植え込みをがさがさと探る。葉の裏に虫がいてぎょっとする、なんてことがないのがありがたい。

「あ、アオバさん、何かありました!」

サクラが革製のベルトのようなものを掲げる。


首輪

院長のペットの首輪。病院が荒れ果てた時にペットは首輪を引きちぎり、野生へ還って行った。


なるほどその記述通り、えんじ色のその首輪は、引きちぎられたような恰好で切れている。

「でもこのくらいなら……えい、『修復』」

サクラが、ベルトの切断面を合わせて唱えると、首輪が淡い光を帯び、断面が癒合された。

「そんな技、いつ覚えたんだ……?」

「施薬室に、簡単でよく効く治癒魔法の本があったんです!」

「そうか」

サクラもサクラなりに色々やっているのか、としみじみ思う。

「では、道中で準備を進めながら行くぞ」



範囲攻撃で雑魚をズバンズバン倒していく。今回はインベントリの残り容量を心配する必要がないから、律義に倒して素材を取りまくる。なぜ必要ないかって?ふっふっふ。

「いやぁ、やっぱりいっぺんにたくさん仕留められるって、いいですね!」

素材を拾い集めながら、サクラが目をキラキラさせる。

「そうだな」

「楽しいです、素材回収!」

らんらんらん、と歌いだしそうになったサクラを、手で制止する。

「……?」

「来るぞ」

「……!」

以前と同じ、強い気配を感じる。その気配は、のっそ、のっそとこちらに近づいてくる。サクラの腕に鳥肌が立っていた。

ついに、巨大な金色の熊がその姿を星明りの下に現す。

「はわわ……こ、怖いです……!」

「大丈夫、大丈夫だから」

しがみつくサクラをなだめすかしながら歩を進める。

「今回は倒さなくていいんだから」


カンのいい読者の皆様にはわかっていただけたかな?今回の目的が、ゴールドベアの討伐ではないことを。

すっと大きく息を吸う。右手に首輪を握りしめる。

今日は。

「メーメーくーーーん!」

逃げ出したペットを、連れ戻すために来たんだ。

熊の表情が明らかに変わり、堂々とした歩き方がやや控えめになる。

「ほらっ」

右手の首輪を掲げる。ついに、ゴールドベアことメーメー君は、地面に伏せておとなしくなった。

すかさずそこに首輪をつけ、道すがら調達してきた縄をかける。

「よーし、脱走した悪ガキペット、捕らえたりー、です!」

メーメー君は、すりすりとその金色の毛皮を、私とサクラにすり寄せてくる。その長い毛を、ふさふさとなでてやる。

「おうおう、よしよし、いま帰ろう」

メーメー君の、元居た場所へ。

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