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第39話 セルリアスのダンジョン攻略

アオバたちがムショダンジョンから放り出され、先にオーブを取ったレンとサクラが鼻高々でふんぞり返っているころ。

セルリアスも、アオバやジョーと同じくオーブを先に取られ、他のメンバーともどもダンジョンから放り出されていた。

オーブはひとつのダンジョンにひとつだけ。一番先にオーブを取ったものがオーブをゲットし、それ以外の挑戦者は外に追い出される。

「つまり、この俺が先を越されたわけ、か。」

あぐらをかいて座り込んだセルリアスの額には、青筋がビキビキと立ち始めていた。

ちなみに、サクラとレンが、先客でしかも彼らより明らかに強いセルリアスを出し抜き、先にオーブを取れた理由は、単にラッキーだったからだ。彼らもセルリアスも、アオバのように透明になって看守から逃げおおせるという芸当ができないうえに、事前情報も何もなしにダンジョンを脱出しなければならない。スタートラインが同じなら、少しでも出口に近い通路を選択した方が、少しでも看守と鉢合わせをせず、う回をしなかった方が勝つのは当たり前だ。それくらいのこと、セルリアスとて百も承知している。しかし、

「気に入らない……」

どこの馬の骨ともわからん連中に負けたことが、彼にとっては屈辱なのだ。

そのどこぞの馬の骨の片方は自らの左腕、もう片方は以前自分が追い払った少女であることを、彼は知らない。

ストレアとジンジャーは、そのセルリアスの傍らで、もしかしたらそれはジョーたちのところかもしれないと推測している。が、今の彼にそれを言っても、余計に怒らせるだけなので言わない。クリアしたのはジョーとアオバではないので、どっちみち的外れなわけだが。

「まぁまぁ、ボス、そんなにお怒りにならないで。」

「次のダンジョン、探しましょうや。ね?」

セルリアスの両隣にひざまずき、二人のプレイヤーが声をかける。ストレアとジンジャーのような小物がそれを言っても、セルリアスの機嫌をいたずらに損ねるだけだが、彼らが言うと、彼の機嫌をどうにか直す言葉として機能するのだから不思議だ。

「……すまない。俺としたことが、つまらんことに目くじらを立ててしまった。」

「いえいえ、オレもそんなことありますから、全く気にしませんよ。」

「お互い様ってやつです。」

手近な穴を滑り降り、彼らは再びモンスターを討伐する。いや、彼らというよりは、セルリアスと、その機嫌をどうにか取った二人組が討伐した、と言った方が正しいかもしれない。ストレアとジンジャーとジンジャーは、ただ指をくわえてみているだけだ。

「ホント、才能って残酷だよな。」

ジンジャーの言葉にストレアがうなずく。

そう、今セルリアスと共に、ストレアやジンジャーを差し置いてモンスターの大量殺戮をしている二人組は、何を隠そう先のイベントの5位と7位の入賞者なのだ。

「あの二人で一緒に止められちゃ、さすがのボスでも苦戦するからなぁ。」

組んでセルリアスと勝負するなら、彼に一歩も引けを取らないくらい戦える。

「ま、言い換えれば、サシで勝負するなら負けるっつうことだけどな。」

勝率はせいぜい、一般人よりほんのちょっとマシって程度だな、と、ジンジャーは推測する。

「そりゃ、ボスとタイマン張って五分五分の勝負ができるのが2位3位、4位はいい試合ができるけど勝率は結構下がる、ってなもんだぜ。5位も……いい試合は射程圏内、なんだろうけどな……。」

「アイツ、ボスとバトるとしたら、絶対本気出さねえもん。」

「俺たちも、めちゃ強いボスに従ってこそいるし、ご機嫌取りのような真似もしちゃいるが、もしボスを倒せるほどの力があって、ボスに勝つことと引き換えにここのメンバーの座を補って余りあるほどの何かを得られるとしたら、間違いなく寝首掻いてるもんな。」

あいつをそこまで屈服させたのは一体何なのか、と、ストレアとジンジャーはそろって首をかしげる。

「んー、あとボスと戦って、どうにか見られるような試合ができるのは……アオバくらいか?」

「あ、あのゲームで『最強』の称号もらってた?あー、確かにあいつならワンチャン勝ちも望めるけど……そもそもこっちにいるのかどうかわかんねえんだろ?」

「まあな。もしいたら、の話だ。」

階層を下りていくセルリアスたちにちんたら続きながら話し続ける二人。

「おい、ストレア、ジンジャー!ボスを撃破したから、戻るぞ!」

「へーい。」

そのあともいくつかダンジョンを攻略したが、ストレアもジンジャーも無言で、金魚のフンのごとくボスについていった。

空が赤く染まり、現実時間でもすっかり日が暮れつつあるころ。

「それでは、俺はそろそろ帰る。明日は平日だしな。これ以降、このイベントに参加できる見込みはないから、なるべくたくさんのダンジョンを攻略して、なるべくたくさんのオーブを取っておけ。お前らは、時間的には大丈夫なんだよな?」

「もちろん。」

「バイトも入れてませんし。」

「よろしい。では。」

セルリアスはそう言い残し、ログアウトしていった。

「さあ、ストレア、ジンジャー、次なるダンジョンに行ってこい。」

「行ってこい?」

「そうだ。お前たち、さっきから全く仕事をしていないではないか。」

「ボスは暖かく見逃して下すったが、ワシらはそう甘くないからな。」

「セルリアス様が、ほとんど無能なお前たちをこのパーティーに誘った理由、わかっているだろう?」

「へい……」

「ならばさっさと行って来い。これ以上我々に無能をさらすな!」

うつむく二人に追い打ちをかけるようにして、上半身裸のやせた青年が怒鳴りつける。青いコスチュームを身にまとった大柄な男が、とぼとぼと歩く彼らをあざ笑う。ひとしきり笑った後で、大男は青年の方を見た。

「ほんじゃ、邪魔ものも追っ払ったし、行こうや。」

「そうだな。」

上半身裸男と青コスチューム、それにジンジャーとストレア。特に似通ったところのない四人だが、共通項が一つだけある。それは、全員ゲーマーであることだ。定職についていないので、平日でも関係なくダンジョンを攻略できる。ランキング5位の半裸と7位の青コスは実力ということもあるが、そういう理由でセルリアスは彼らをメンバーに選んだのだ。プレイ時間が長いゲーマーたちは、基本的にそうでない人々よりも強い。普通に学校に行ったり仕事に行ったりしながら順位を叩きだす、セルリアスやジョー、レンのようなプレイヤーが一目置かれるのは、そういう理由もあってのことなのだ。

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