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陸上の渚 ~異星国家日本の外交~  作者: 龍乃光輝
フェーズ2 潜入偏 全15話

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第130話『100年ぶりの急襲』

 多葉田明耶(たばたあきや)はその日、休みで須田町の街を徘徊していた。


 渋谷や銀座のような若者向けや高所得者用の店はなく、八割近くがオフィスビルだ。残りの二割が飲食店やコンビニ類で、そもそも居住施設自体がない。

 これは拉致誘拐を防止する意味を込めいて、夜間は残業や夜勤を除いて残ることは基本無かった。

 そのため居住地は境界を跨いだ日本側の須田町にあり、その境界の行き来を通勤として須田町は日本の中でも特殊な町として発展中していた。

 須田町の主な産業はユーストル内のフォロン採掘事業を中心に、イルリハラン王国との貿易と日本領ユーストルの開拓だ。

 このどれもが国家事業として、当該省庁が主導と出資する形で民間企業が事業を展開していた。

 多葉田も国家事業の一つであるフォロン採掘に参加した資源採掘企業に就職し、日々フォロンを採掘していた。


 ユーストルに纏わる約七割近くの人が、転後に再就職をした者達で占められている。これも経済活性化政策の一つで、政府が率先して事業を展開することで全国にいる無職の人々に職を与えるためだ。

 多葉田も以前は自動車製造業に就いていたが、車が売れなくなったことで早期退職となった。転後二年目までは配給や生活保護で食いつないでいたが、国家事業を展開することでそれらが廃止となって資源採掘事業に転職。以後四年間贅沢は出来ないながらも安定した生活が守られた。

 昨今の働き方改革と相まって、相場は決まっているブラック事業でもない。

 これで結婚していて子供がいれば文句はないが、国土転移と言う超常現象を経験して生きていけてるだけ幸運と思うべきだろう。

 多葉田はそう思って生活を続け、今日は日常品を買いに家を出ていた。

 そろそろケチャップが残り少なくなってきたし、トイレットペーパーもそろそろか。

 などと考えながら歩道を歩き、ある横断歩道で立ち止まって信号機が青になるのを待つ。


 ふと、地面が小刻みに震える感触が来た。

 大型車の移動に揺れに近いが、今目の前を走るのは乗用車ばかりで大型車は走っていない。

 地震とも思うも転移して以来有感地震は日本全体で観測もされていなかった。

 気のせいかと見て無視し、信号機が青になったところで横断歩道を渡る。

 揺れが一層強くなった。

 多葉田は立ち止まって周りを見渡した瞬間。

 真下のアスファルトが盛り上がった。

 二十トン以上のトラックでも耐えられるアスファルトがひび割れ、盛り上がり、砕け、地中から何かが飛び出した。

 多葉田の体が何が起きたのか理解する前に宙に投げ出され、全身に激痛が襲う。

 視界に映るのは真っ青な快晴と、左右から閉じていく嘴のような何か。

 自身に何が起きたのか全く理解出来る間もなく、次に訪れる未来が何のか分かることもなく、痛みと共に目の前が真っ暗になり、何一つ声を出せず多葉田の生涯は幕を下ろした。


      *


 日本並びにフィリア社会の歴史に永久に残る映像は、拉致対策で死角なく設置された防犯カメラに記録されていた。

 テロが起きてからひと月が過ぎ、依然と調査は進まないが経済活動がテロに屈するわけにはいかず、ユーストル側日本領の須田町は以前と変わらない活動が続いていた。

 時刻は午後十三時四十九分。

 境界線から一直線に須田町外縁に伸びる須田大通りの交差点を映す映像には、信号で止まる車が三台と横断歩道の信号待ちをしている男性が一人がいた。

 横断歩道の信号機が青になり、男性は渡り始める。

 道路の半分歩いたところで男性は立ち止まって周囲を見渡した。

 直後男性の経っていた地面が盛り上がり、地面から直径二メートルはあろう蛇とは違う甲殻の嘴を持った巨大動物が飛び出した。


 巨大動物は男を空中に嘴ではね上げると大きく口を開け、落下したその男性を一口で飲み込んだ。

 地面から五メートルほど突き出た巨大動物は九十度体を折って地面に倒れた。

 信号機で止まっていた乗用車は数秒動かないでいると、危ないとようやく判断したのか反対車線にUターンして逃げていった。縦列で止まっていた車は、タイミングを計らずにターンをしたことで衝突しあってしまう。

 それでも命大事とアクセルを踏んで乗用車は巨大動物から離れていった。

 歩道には休日ともあって他にも人がいたが、巨大動物が地面から飛び出たことで一目散に近隣のビルへと逃げ込み始めた。

 しかし、全員が逃げられたわけではない。


 最初の横断歩道を皮切りに、その交差点を中心にさらに九体の巨大動物が飛び出し、ビルに逃げ込もうとする人を強襲して丸のみにしてしまったのだ。

 カメラにはマイクがないため映像しか記録されなかったが、人の動きからして阿鼻叫喚であっただろう。

 十体の巨大動物はそれぞれ一人ないし二人を捕食すると地中へと戻り、交差点からは人が消えた。

 巨大動物は撤退したわけではなく、さらに獲物を追いかけてか別の道路を走っていた車を真下から突き上げ、騒動を知らない別の区画で徒歩で移動していた人をまた襲った。

 マイクのある民間が設置したカメラでは最初の襲撃から三分後に警報アラームが鳴り響くのが記録され、続いてアナウンスも響いた。


『須田町、防災、センターから、緊急の、お知らせです。現在、須田町に、巨大生物、が、侵入しております。野外に、いる、人は、直ちに、近くの、建物の中に、避難、してください。繰り返します』


 自動音声によるアナウンスが須田町中に響き渡り、警報アラームもまた継続する。

 転後六年も経てば巨大動物への危機感は十分浸透していた。国防軍や海保によってこれまで須田町に巨大動物が侵入したことはなかったが、須田町では年に三度巨大動物に対する避難訓練を義務として実施しており、その訓練に従って住民は避難して町から人は消える。

 巨大動物に対応するのは、誘導までは海保でそれ以上は国防軍が担うことを巨大動物対策法で定められており、警報から十分後には国防軍の判断で車両が日本側須田町から緊急出動した。

 この須田町に起きた惨劇は、速報で日本のみならずイルリハラン経由で世界中に流れた。

 数十は記録された動画の中で、地中から飛び出しながら捕食に失敗した巨大動物の映像が一本だけ鮮明に残され、それが最も世界中で引用されることとなった。

 日本の放送基準に則って捕食された動画は見せないよう加工処理され、被害者に配慮して未加工の物は公私合わせて流れることは無かった。

 それでも絶滅したはずの生物が百年ぶりに、しかも唐突に表れたのは日本以上に異地社会にとって国土転移やテロを上回る衝撃的だった。


 グイボラ。


 空を飛ぶ人種のリーアンを好んで食す天敵。

 一世紀掛けて一致団結したリーアンに絶滅され、以後一世紀姿を現すことのなかった魔獣。

 それが一切の前触れもなく復活をしたのだった。

 須田町が編入している茨城県は緊急対策本部を急襲から三十分後に設置。同時刻には日本政府も茨城県と連携する形で緊急対策室を設置した。

 異地社会は強襲から三時間後には全ての国で非常事態を宣言。

 テロ事件は一時棚上げとなり、アルタラン安保理でもグイボラによる緊急会合が開始される運びとなった。

 被害者は連絡が取れない十七人と推定。乗用車が四台横転し、車に乗っていたとされる五人は行方不明者十七人に含まれる。


 七匹確認されたグイボラは、須田町の地下に潜んでいるとされても避難が終わったあとでの被害者は出ていない。

 これはビルは柔い地盤の上に建つことから地下のフォロン層にまで杭を打ち込まれ、その杭がグイボラの地中移動を阻害し、尚且つビルの基礎は頑強なため道路のアスファルトは破れてもビルのコンクリートまでは入ることはなかった。

 ユーストル側須田町では約八千人が取り残されるも、警察、海保、国防軍がヘリを総動員して空からによる救助活動を急襲後四時間後で開始された。


「二次被害はないか?」

 内閣情報収集センターの大型モニターには茨城県庁に設置された対策本部の映像が映し出されており、若井総理は上がってきた被害情報を見ながら再確認を取る。

「巨大動物対策法に従い救助に向かった国防軍の被害は出ていません。地下巨大生物による車両の横転、または移動に生じた地下抗に落下する恐れがあるため、移動には浮遊化した10式戦車を使用しています。隊員にも決して地面には触れないよう厳命してあります」

 若井の問いに桃田防衛大臣が答える。

「……この地下巨大生物……アレ……か?」

「現在イルリハラン防務省に確認中です。向こうもまさかの事態に困惑しているようです」

 誰が見てもグイボラが脳裏に浮かぶも、日本側はグイボラに関する生物学的根拠をなにも持っていない。歴史に存在した生物で、写真や映像、百年前の生物学的見地しかないので印象から断定することは出来なかった。

 イルリハラン側にしても百年前の生物だ。認めたくない存在を認めるには相応の時間が必要だろう。

「この地下巨大生物、土竜(どりゅう)と仮称しまして、この土竜は映像から十体は確認されて陸自のドローンで今現在も須田町の地下に潜伏しています」

 かつての資料によるとグイボラは一度人間を食べると三日は食さないとしているが、この土竜は一人ないし二人を襲って食べてしまい、さらに陸自の偵察用陸上ドローンを襲っている。

 さすがに機械を食すことはないが、一人や二人では襲うのを止めない事は分かった。


「駆除の方法は?」

「爆弾を捕食させて遠隔で爆破します。機械であれ地上を動く物は捕食することは確認されていますので、丸のみに出来る民間のラジコンを用意して駆除します」

「ですが、それをするには民間の避難が必須です。爆破は地下でも万が一がありますし、可能なら須田町郊外に誘導して執り行いたいです」

 駆除を優先するとしても町中では死骸の扱いなど風評被害が出る。

「誘導は可能か? 土竜が単調な生物ならいいが、犬やサルみたいに人と機械の区別が出来たら難しいんじゃないか?」

「それは救助活動と並行して行っていきます」

「救助作業の終了時刻は?」

「明日中には完了する見込みです」

「分かった。しかし、百年前に絶滅したはずの土竜がなぜ今日現れたんだ?」

「それは……イルリハランも動画を見るまでは信じていませんでしたし、ラッサロンが確認したことでひどく驚いてもいました」

「……博士、なにか見解はありますか?」

 若井はアドバイザーとして対策室に招かれていた羽熊に尋ねた。

「見解ですか。強いて言えば日本が転移してきたことで百年間休眠していた土竜が目を覚まして、六年掛けて成長して今日表に出た、くらいの想像しか出来ませんね」


 いかに羽熊が異地に精通していても、百年前に存在して資料でしか知らない生物だ。合理的な経緯しか話せない。

 グイボラの卵は巨木の幹に寄生する形で栄養を吸って成長する。その過程で年単位で休眠して永らえることはできるから、資料だけで言えばありえないとはいえない。

「けどそれだと六年間、あれは何を食べて来たのかの疑問が残ります。映像の大きさから多分成体になってますが、六年間日本人が食べられたことはないですし、他の動物を食べていたらラッサロンが気づいたでしょう」

 地中から飛び出し、逃げても地面は戻らずぽっかりと穴が開いている。出現した跡が強く残るなら日本周辺で活動しなかったとしても地面は抉れるだろう。かつての天敵を本能で覚えているリーアンが感づかないわけがない。

 つまり、この土竜は今日の襲撃時間まで一度も地表には出ていないはずなのだ。


「そうなるとどういうケースが考えられます? 羽熊博士」

「ケースと言われましても……地面に近づくだけで恐怖心が出る根拠を作った生物なので、人為的に飼育していたとは考えにくいですね。自然発生も空白期間がありますし……百年前の資料はこちらでも詳細は持っていないのでこれ以上は思いつきません」

 数多の資料や証拠があれば整合性の取れる推察はできるが、百年前から更新が途絶えた資料だけで転移初期やバーニアンのような推理は出来ない。

 なにより羽熊は生物学者ではないのだ。過去の実績だけでポンポンと閃きを求められても困る。

「総理、深刻なのは人命ですが経済活動もです。安全のため日本側須田町でも住民の避難をしています。幸い採掘現場で土竜被害はありませんが、もう我々が現地で採掘作業をすることは出来なくなります」

 日本人が採掘事業を展開出来たのはグイボラがいないからで、グイボラそのものかその近縁種かは分からないが人を襲う土竜がいる以上、今回の十体を駆逐したところでユーストルに人を送ることはもう出来ない。


「ドローンやロボットによる遠隔作業での採掘業務は限界があります。このままでは大事な収入源を失います」

「これでは須田町を含めてユーストルに投入した予算の大半が無駄になってしまいます」

「金の心配よりまずは人命の心配では?」

 閣僚は投資した資金についての心配に意識が向きつつあるのを、若井は牽制して方向を正せた。

「投資の回収はもちろん分かるが、それよりも大事なのはこれ以上の被害を防いだ上での対策でしょう。まだ須田町には八千人以上の人が突然の食べられる不安に駆られているのに、安全な我々がそれ以外の心配をしてどうするんだ」

 国を運営するからこそ資金巡りは大事に思うも、その資金を税金として納めてくれるのが国民だ。国民を蔑ろにして税金を心配するのは言語道断と言える。

「ユーストル側須田町の人が全員日本本土に避難するまで金の話は一切するな」

 総理として、危機管理のトップとして若井はリーダーリップを示す。

 閣僚もそれ以降は金に纏わる話はしなくなった。


「博士、土竜の発生原因は置いておくとして、現地の自衛官達に留意するべきことはありますか?」

「私が知っている資料では二メートル以上鉄以上の強度があれば突破はされません。車両を横転させるパワーは記載されてません。ですが地中のフォロンを利用して移動するので、単純に見て体重分は押しのけるパワーはあると見ていいと思います。多分十トンから十五トンかな……」

「桃田大臣、確か戦車を向かわせていましたね?」

「はい。須田駐屯地に配備している十式戦車が向かっております」

「空での救助に時間が掛かるなら、戦車に乗せての救助も視野に入れてください。本土まで地面から数センチでも浮かせれば、揺れや落とし穴で避難民が地面に落ちる心配もないでしょう」


 浮遊すれば完全に上下に対して不動になる。例え下から衝撃が来ても、レヴィロン機関を超える出力を出さない限り揺れることはない。

 理想は大量移送ができるバスだ。しかし、外装が軽量なバスだと突き破る恐れがあるから、ここは戦車が確実だろう。この際ブルドーザーのようなのでも可だ。

「その方法が可能かどうか本省と相談をさせてください。早急に返事を聞きます」

「総理、エルマ大使よりテレビ通信が可能になりました」

「繋いでくれ」

 確か危機管理センターの機器には密かにAEが組み込まれている。防衛大臣を抱き込んだことでインストールすることができ、こことエルマのいる別動隊とのホットラインはエミエストロンに覗かれる心配はない。


『日本政府の皆様、通話チャンネルを開けていただきありがとうございます』

 画面には大使館の執務室が映し出され、エルマ一人が画面中央に鎮座する形でいた。

「エルマ大使、さっそくですが確認をさせてください。あれは百年前にあなた方が絶滅させたグイボラですか?」

『本国で大至急確認中ですが、おそらくそうです』

 一個人とはいえ、本場の意見でセンター内に緊張が走る。

「百年前に絶滅したはずの生物が、突然蘇って襲って来たと言うことですね?」

『グイボラと証明されればそうなります』

 主観的に見ればグイボラでも、確認が取れないから政治的な返事にエルマは留める。

「では土竜と仮称して話をさせてもらいます」

『分かりました。私の方でも土竜と呼ばせてもらいます』

「イルリハラン王国での土竜の対処はどうなっていますか?」

『まだ定まっていません。そもそも貴国より提供された映像が捏造ではないかと言うほど信用したくないことですので。もちろん私はあの映像は真実と確信しています。正直、私も動揺が隠せず落ち着きが取り戻せていません』

「土竜の被害は割譲されたとはいえ、我が国の領土内で置きました。市民の安全のためにも、イルリハラン、強いてはアルタランの反応を待たずに我が国の判断で動かさせてもらいます」

『私も滞在している須田町は日本の領土です。若井総理の判断を支持します』

 これで土竜やユーストル内で軍事行動を取ったことへの責任問題は解決された。そもそも、元はイルリハラン王国の領土とは言え、正規の手続きを経て日本領の編入されたのだから文句もへったくれもない。


「アルタランから反応はありますか?」

『アルタランも先ほど緊急会議を始めたばかりですので、具体的な案は何一つ出てないでしょう』

「であれば日本政府の声明として、日本領ユーストルに現れた土竜は日本が処理をする。アルタランの介入はいらない伝えてください」

『承りました』

 ここでアルタランの介入を許せば土竜対策と言う大義名分で常駐を許してしまう。バーニアン問題もあるからそれだけは止めなければならない。

 それはエルマも同じだろう。

「ところでイルリハラン……いえ、フィリア社会では土竜など地中生物に対する武器はありますか?」


『残念ながら、半世紀前で装備の更新や訓練は出現しなかったことから途絶えてしまい、地下貫通弾や地中探知機などは廃棄してしまいました』

「五十年は警戒していたわけですか」

『万が一を警戒してです。ですが維持費や訓練費がバカになりませんので、五十年間発見されたかったことを機に世界中で廃止になったと聞いています』

 国家予算で浪費しやすいのが軍事費。その中のさらに使い道が限定され、尚且つ脅威が消失したとなれば廃止に進むのは当然の帰結だ。

 だがそれが仇となった。


「須田町の住民の避難が完了次第、我が国で用意できる対策で土竜を駆除します」

『分かりました。可能な限りのグイボラの情報を提供します。少しでもお役に立ててください。必要であればラッサロンから浮遊艇の提供も視野に考えます』

「支援感謝します」

『今後も連絡は密に。十分後に緊急の王室総会を開くため、短時間でありますがこれにて失礼させていただきます』

 短いながらも確かな二国間の意思疎通。ともかく土竜への対処に周囲が手を出すことはないだろう。

 エルマは信頼できる政治家だ。羽熊や若井に限らず、センターにいる人は全員知っている。

 映像通信は途切れ、通信を見ていた職員たちは再び仕事を始めた。

「巨大動物対策法に則り、土竜の駆除に武器使用を命じます。住民の避難が完了後、速やかに駆除に移すよう調整を始めてください。桃田大臣」

「下命、承りました」


 桃田大臣は総理の命令を受理すると、同じくセンター内にいる国防軍幕僚長へと指示をだし、幕僚長は電話を手にして司令部であろうところに掛けた。

 日本はこれまで一度も巨大動物を殺傷していない。

 食用の巨大動物のト殺許可をもらっても、国防軍がそれ目的でするのには世論が許してもらえず、結果として非殺傷兵器による誘導こそ行っても火器による攻撃はしたことがなかった。

 なにより殺傷目的での利用自体、転後一度もしていない。

 その自衛隊の初出動が、人類の天敵となる土竜とは何と因果なものだろう。

 異地社会の文化文明の礎となった土竜に、日本も絡もうとしている。

 なんであれ、これ以上の人的被害はやめてほしいと、羽熊は切に願った。

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― 新着の感想 ―
[一言] チャリオスがジュラシックパークみたいに蘇らせて転送で送り込んできたのかな ハーフなら本能的な恐怖も少しは薄いでしょうし
[一言] 更新お疲れ様です。 驚天動地のまさかの絶滅させた筈のグイボラの、一世紀ぶりの襲来!! 日本の転移の影響がここにきて発現? それともレーゲン、アルタラン、ムルート崇拝団体、バーニアン&チャリ…
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