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風間と女の距離が縮まるのに、それほど時間はかからなかった。
画面越しに映る二人は、互いを警戒しているようには見えない。
俺はパソコンモニターの電源を切ると、重いため息をついた。
これ以上見続けても意味はない。
監視カメラの録画はそのままに、俺はしばらく見るのを止めた。
__翌朝。
俺は職場に向かい、風間と共に雨音と名付けられた女の捜索に当たった。
その間、風間は何食わぬ顔で仕事をしていた。
『風間、お前は平気で別の女と浮気する最低野郎だ』
俺はそう言いたかった。
だけど、心の底では、安堵していた。
風間は完璧な人間じゃない。
綺麗に見えるものでも、中身を開けば汚れてる。
それを知った俺は、満足していた。
ただ、女が本当に風間のことを愛してしまっていたなら、
その時は、俺は本当の意味で壊れてしまうかもしれない、そう思った。
仕事を終え、自宅に帰ったその日の夜。
ふと気になり、パソコンの画面に表示された監視カメラの映像を確認する。
部屋の電気が消されているのか、真っ暗で何も見えない。
ただ、女の笑い声と、ベッドの軋む音がスピーカーから流れていた。
「雨音…愛してる」
と風間の声が聞こえた。
「私と南さん、どっちを愛してる?」
女の声。
「わからない…」
「そっか…私が愛してるのは瞬だけだよ」
「…ありがとう、雨音」
俺は録画ボタンを停止して、映像データを自分のスマホに転送した。
「はは…、あはははははははは!!」
その時、ようやく気付いた。
女は最初から俺なんて見ていなかった。
俺が風間を裏切り者として告発しても、女から誘ったことだと分かれば、
風間はそこまで処罰されることはない。
風間を警察の裏切り者としてじゃなく、この映像で風間と南が別れることを、
女は最初から狙っていたんだ。
翌朝、まだ空が白み始めたばかりの頃だった。
監視カメラの映像に動きがあった。
女が一人、静かにマンションの部屋を出ていく。
俺はすぐ車に乗り、女の後を追った。
女の姿を見つけると、車を停め、女の後をついて歩く。
一定の距離を保ちながら歩き続ける。
女は一度も振り返らない。
まるで目的地が決まっているかのように、迷いなく街を進んでいく。
やがて、大きな交差点に差しかかった。
赤信号で立ち止まった女の前に、一人の男が姿を現す。
見覚えのない、ロングコート姿の男だった。
男は慣れた手つきで自分のコートを脱ぐと、女の肩へそっと掛ける。
二人は短く何か言葉を交わしたあと、互いの存在を確かめるように抱き合った。
その様子は、長い時間をともに過ごしてきた者同士のように自然だった。
俺は思わず息をのむ。
――誰だ、あの男は。
風間じゃない。
俺がまだ知らない謎の男。
女は男と並んで歩き出す。
俺はポケットの中のスマートフォンを握り締めた。
本来なら、この時点で風間のことを警察へ報告するべきなのかもしれない。
だが、俺はそうしなかった。
風間も俺と同じように、女に騙された被害者なのかもしれないからだ。
真実はまだ、この先にある。
そう自分に言い聞かせると、二人に気づかれないよう距離を保ち、その後を追い始めた。




