3
風間は、女の計画どおりに動いた。
階段の下で倒れていた女を保護すると、記憶を失っているという彼女を放っておけず、そのまま怪しいマンションへ連れて帰った。
俺は、その様子をただ影から見ることしかできなかった。
風間が一人、マンションから出たその時、俺は身体にバスタオルを巻いた女と入れ替わる形で部屋に入った。
女は隣の部屋の扉をノックしていたが、俺は特に気にすることなく、女との約束どおり室内に小型の監視カメラを設置した。
作業を終え、部屋を出ようとしたときだった。
玄関の向こうから話し声が聞こえる。
女が隣の部屋の住人と何かを話しているらしい。
女は終始落ち着いた様子だったが、扉越しでは会話の内容までは聞き取れない。
彼女が部屋に戻ってきた、そのタイミングで俺はその場から離れ、マンションを出た。
その日の夜から、俺はリアルタイムで映像と音声を記録、確認し続けた。
パソコンのモニター画面の向こうでは、風間と女が何気ない会話を交わしたりしている。
互いに警戒しているようにも見えるが、ときおり自然な笑顔がこぼれる瞬間もあった。
その光景は、まるで長年連れ添った知人同士のように見えた。
俺は何度もモニターから目を逸らそうとした。
それでも、視線を外すことはできない。
風間が女に名前をつける姿、女が風間にキスしている姿が、辛くて見ていられない。
「なにが、雨音だ…くそっ!」
『…ドキドキした?』
その女の声は監視を終えたあとも耳に残り続け、俺の胸の奥に拭いきれない焦りと疑念だけを積もらせていった。




