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月の剣:奪われた王家本流への返り咲き  作者: 伊路八


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第三話 十三番村の決闘

 ショウが手に握る棒をスッと脇に構えた。


 ざわめきが起こった。

 初めて見る構えに、村人たちはいぶかし気に見ていた。

「なんだ。あの恰好は」

「やはり変な奴だ」

「今回もレオの勝ちだ」


 ビュン!


 投石器が目の前に飛んできた。

 髪に石が触れた。

 ギリギリのところで交わせた。

 ヒヤリとした。

 レオがニヤリとしながら、投石器を回していた。

 次は外さないぞ。という顔だった。


(危なかった……)


 ――やるべきことに集中するんだ。


 父親の言葉が、ふと蘇った。


(そうだ。あの石が当たれば、ひとたまりもない……)


 細い息を吐いた。

 慎重に間合いを取っていった。

 上段の構えに変えた。

 鞭で打たれた背中の傷に痛みが走った。

 一瞬、顔がゆがんだ。

 レオは、それを見逃さなかった。


 ヒュン!


 さっきよりも速く投石器が飛んできた。

(大丈夫だ。かわせる)

 そう思った瞬間、途中で軌道が足元に変わった。

 ――!

 地面を蹴り飛び上がった。

 半円を描くよう大空へと舞った。


 その美しさに、速さに、誰もが息を飲んだ。


 そのままレオの背後へと着地し、棒が勢いよく首元へ走った。

 そこにいる全員が、首を折られると思った。

 緊張が走った。

 ――!

 すんでのところで止まった。

 瞬く間の出来事だった。

 ほぉっと安堵する空気が流れた。


 レオが、投石器をボトリと地面に落とした。


「負けだ……」


 棒を当てたままでいるショウに尋ねた。

「なぜ隠していた。その力、桁違いだ……」

 一瞬の間があった。

「……群れるのは嫌いだ。だが孤立もしない」

 レオは、フッと笑った。

「勝負はついた。もう、放してもらえないか」


 はっと気づき、レオから離れた。

 レオは、首を回しながら言った。

「相変わらず、疑い深いな」


 ショウは棒を払い、腰に収めた。

 レオは、ショウに一歩近づき、面と向かった。


「お前が今日からリーダーだ」

「いや。望みを1つ聞いてほしい。お前だけに話す」

 レオは、一呼吸考えて答えた。

「分かった」


 レオが右手を上げ、後ろへ払った。

 村人はぞろぞろと、家に戻っていった。

 レオは、その後ろ姿に声を掛けた。

「ヒロ、来い!証人になれ」

 自分の顔を指差しながら驚いていた。

「俺が~?」

「いいから、来い!」

 しぶしぶという感じで、ヒロはやって来た。

「俺なんかでいいんですか?」

 レオに頭をくしゃっとされ、まんざらでもないという感じだった。


 日は落ちて行き、薄暮の色だけが村にあった。


「さて、望みはなんだ?」

「俺はこの村を出ていく」

「無理だ。それは許されない」

「村を出ていく」


 緊迫した状況に、ヒロはゴクリと唾をのんだ。

(もう一戦はじまりそうだ……)


「ワケは?」

「言えない」

「……だろうな」


 少しだけヒンヤリとした風が頬を撫でていった。

 ショウとレオは、お互い動くことなかった。


「……分かった」

 レオは両手を軽く上げて続けた。

「掟は掟だ。望みに協力するさ」


「レオ、でも一体、どうやって?」

 ヒロが興味津々に尋ねてきた。

「そうだな……ショウ、お前はもう何か方法を考えているのか?」

「いや」

 レオとヒロが顔を見合わせた。

「本当に何も考えてないの?」

 ヒロが怪しみながら尋ねた。

「まずは、レオに勝つことしか考えてなかった」


 真面目な返事に、レオとヒロの

「まじか~」

「計画しとけよ~」

 がっかりというか、面白げにというか、そんな感じに、

 三人は、なんとなく距離が縮まった感覚を覚えた。


「よし!三人で考えるぞ」

 リーダーらしくレオが仕切りだした。

「……あ!」

 ヒロが閃いた!という声のトーンだった。

「なんだ?」

 レオの問いかけに

「ほら!あれ!あの人!毎週来るじゃん!」

 ヒロは、頭に浮かんだことをなんとか言葉にしようとしていた。

「あぁ!商人のケイトか!」

 レオが察した瞬間、ショウも同時に声を上げた。

「あの馬車!」


 二人が嬉しそうな中、ヒロがあわてて、

「シー!シー!みんなに聞こえないように。秘密なんだから」

 手で声のボリュームを落とすようジャスチャーしながら、かすれ声で言った。

 二人は、ごめん、ごめんと片手で謝る仕草をした。


 三人は地面に座り込み、具体的な段取りを計画し始めた。

 空にはもう星が瞬いていた。

 ヒロがほろりと言葉を零した。

「なんかもっと早くこんな話したかったな……」

「なんだ?どうした?」

 レオが柔らかく問いかけた。

「こんな毎日だけど少し違ってたかもって……なんか言い方違うかもしれないけど、ワクワクするっていうか」

「あぁ、自分の意志で動ける……自由ということか」

「……今日のこの時のこと、俺、忘れないよ」

「うん」

 ショウは頷いた。

「そうだな」

 レオは、ぽんっとヒロの頭に手を置いた。

 ヒロはくしゃっと笑った。

 初めて見た笑顔だった。


「よし、それで村は出れる。が、問題はここからだ」

 レオが再び仕切りだし、ヒロが口を挟んできた。

「そうだよ。この足につけられている鉄の輪をなんとかしないと」

「外に出ても、農奴と分かってしまう。服もそうだ」

「一目でばれて、すぐ連れ戻されるよ」


「それに関しては大丈夫だ」

 ショウが落ち着いた声で言った。


「え?!」

 レオとヒロはびっくりしていた。

「これが一番、難題だぞ」

「あぁ。でも大丈夫だ。鉄の輪は外せる。服もある」


「よし!」

 レオが、ショウとヒロの肩に手を置いた。


「決行は、明後日!馬車が来た時だ!」

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