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月の剣:奪われた王家本流への返り咲き  作者: 伊路八


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第二十三話 夜襲

「この者たちが、ショウとケイトを襲ったのか?」

 フィンリー竜騎士は、静かに口を開いた。


「仕方がなかったんだ!」

 一番背の低い男は、悲痛な顔で叫んだ。


「何があった?セキ村に行った騎士から村が全焼していたと聞いた」

 フィンリー竜騎士の言葉に、ショウとケイトは驚いていた。


 椅子やベッドに腰を掛けていた男たちがガタガタと震えだした。

「あんな……あんな惨い……」

「何もなくなった。食べるために仕方なかった……」


 バタン――

 ケイシー騎士が扉を開け入ってきた。

 男たちは、一瞬ビクッとなり、そのまま口をつぐんだ。


「一晩だ。たった一晩でだ……」

 一番背の低い男は、うなだれたまま声を出した。


「一晩で村が全焼したというのか?」

 ケイシー騎士が、口を挟んだ。


「ああ!そうだ!魔獣たちがいきなり襲ってきたんだ。暗くなった頃だ。急に外が騒がしくなった。ドドッと動物の群れのような音が聞こえてきて、外に出ると魔獣たちが村に入っていたんだ。火を吹いて、あっという間に村が炎に包まれて……みんな、逃げ惑った」


「本当に魔獣だったのか?」

 ケイシー騎士が、用心深く尋ねた。


「あぁ、間違いない……聞いたことのない言葉で魔獣を操っている少女がいた……真っ黒い髪で異国の服を着ていた……」


 ショウは顔をしかめた。

(信じられない……魔獣は本来、守り神のはずだ……)


「しかし、それほど燃えていたのなら、なぜ、ここの塔の見張りは煙さえも見ていないのだ?」

 ケイシー騎士の呟きに、一番背の低い男が思い出したかのように話を続けた。


「火の勢いが凄すぎて、とにかく逃げることしかできなかった。村の奥の避難壕に逃げた。そこに来た男が、村の入口から逃げようとしたが出られなかった、と言っていた……まるで透明の壁でもあるかのように、外に出ることができなかった……と。訳が分からず、避難壕の方に走ってきたそうだ」


 一番背の低い男は、考えるように話を続けた。


「関係あるか分からないが……その時、赤いマントの魔女を見た……とも言っていた」


 胸ポケットにいる白魔女がピクリと反応したことに、

 ショウは気がついていた。


「家も家畜も畑も全部燃えた……なぜ、セキ村が襲われるんだ……」


 一番背の低い男の声は小さくなっていった。


「今は、分からないが調べてみよう。しかし、襲撃された後、なぜ、私たちを頼らなかった?」

 ケイシー騎士は、尋ねた。


「騎士団は信用ならん!王族と繋がっているに違いない!国全体が貧しくなり、今やどこも治安が悪いじゃないか!」

 一番背の低い男の隣に座っていた男が、不意に大声を上げた。


「何か勘違いしているようだ。我々は、王族とは独立して存在している。既に騎士団が、セキ村へ救済に向かった。再建も手伝うつもりだ」

 ケイシー騎士は、冷静に答えた。

 五人の男たちは、顔を見合わせ、小さく会釈すると

 それ以上何も言わなかった。


 フィンリー竜騎士は、扉を静かに開けると、

 ショウとケイト、ウル騎士、ケイシー騎士に目配せした。

 それに気づいた四人は、フィンリー竜騎士の後をついて外に出た。


「あの者たちの話をどう思う?」

 フィンリー竜騎士は、誰にともなく尋ねる。


「魔獣に、異国の少女に、赤い魔女か……しかし、セキ村の状態を見る限り、嘘を言っているようにも思えないな」

 ケイシー騎士は、少し迷うような表情だ。


「あの……」

 ケイトが遠慮がちに声を出す。

 誰も咎める様子がないことに、ほっとして続ける。


「僕の親方が、魔獣を操る異国の魔術があると貿易街で聞いたことがあるって言ってたんです。僕、貿易外に行って調べてみたくて……」


 ケイトは、ショウの顔を見る。

 ショウは、ケイトが何を言いたいか気づき、口を開く。


「私は、魔獣を操る言葉が話せます。騎士の試練の洞窟で、魔獣と対峙しました。だけど、どうして私が、魔獣を操る言葉を話せるかは、思い出すことができないんです」


 ケイシー騎士とウル騎士は、驚いた表情でショウを見た。


「魔獣を操る異国の魔術……か。ところで、二人は竜の鱗を取って来られたんだね?」

 フィンリー竜騎士は、ショウとケイトの方を見た。


「はい!」

 ケイシーは手に持っていたリュックを開け、竜の鱗を二つ取り出した。


 フィンリー竜騎士は、一目でそれが本物だと分かった。

「約束は守ろう。君たちが騎士になることを認めよう。だけど、騎士見習いとして、基本訓練や教養を身につけてもらう訓練期間が必要だ」


「え……じゃぁ、直ぐには貿易街には行けないんですか」

 ケイトは、がっくりと肩を落とす。


 フィンリー竜騎士に微かに笑みがこぼれた。

「セキ村の件は気になる。早く原因を探りたい。だから、現場教育というのはどうだろう。ケイシー、この二人と一緒に貿易街で情報収集をしてほしい。実務をしながら訓練をしてほしい」


 ケイシー騎士が、苦々しい顔をした。

 ショウとケイトは、緊張し、背筋が伸びた。


「よろしくお願いします!」

 二人は、ケイシー騎士に頭を下げた。


「明日、発ってくれ。セキに村にはウルが行ってくれ。再建と調査を頼む」

「分かりました」

 ケイシー騎士とウル騎士は、真っすぐに立ち、返事をした。


「私は、一度、城へ行き、王に面会をしてこよう。セキ村のことを報告し、再建の許可をもらうつもりだ」


 ショウは、王という言葉に反応したが、

(まだ時期ではない……)

 と、逸る気持ちを押さえた。

 そして、同時にフィンリー竜騎士の判断力の早さに、

(経験と地頭よさか……)

 と、その統率力の資質を見抜いていた。

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