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月の剣:奪われた王家本流への返り咲き  作者: 伊路八


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第十五話 洞窟

 北の方角に向かって行った。

 林の中を馬で駆け抜けた。

 ナイト街の手前にあった林とは全く違っていた。

 木々の葉は落ち、枝だけになっていた。

 落ち葉も地面に溶け込むように朽ちていた。

 北から吹く風が頬を斬るようだった。


 サムがくれたコートが寒さを遠ざけた。

 身に着けているのは、ショウは棒ひとつ。

 ケイトは、剣とリュックだけだった。


 ショウもケイトも無言のまま林を駆け抜けた。


 視界が開けた。

 林を抜けたのが分かった。

 目の前にごつごつとした険しく尖った山がそびえていた。


 ショウは馬を停めた。

 二人とも馬から下りた。


「ここだ」


 ショウが山を見上げながら言った。


 到底、山の上まで登ることなんてできないと思うほど、

 尖った高い山だった。


「洞窟は上の方じゃない……よね?」


 ケイトが恐る恐る尋ねた。


「どうかな?道案内人に聞いてみないと分からないな」


「道案内人?」

 ケイトがキョロキョロと周りを見回した。


「うん、これから呼ぶんだ」

 ショウがにまっと、両手を上げながらケイトに笑いかけた。


「ふーん……」

 とケイトが言葉を返そうとする間もまく、

 ショウは上げた両手をケイトの脇腹へ滑らせた。


「あははっはは!ははは!」

 ショウは、いきなりケイトの脇腹をくすぐり出した。


「ちょっ!ショウ!止めろってば!ははは」

 ケイトは体を捩りながらも笑いが止まらなかった。


 ケイトの笑い声が響く中、

 ショウは手を止めることなく山のふもとを見た。


「そのまま笑いながら、あっちを見てみろ」

 ショウがくすぐりながら、ケイトに小声で話しかけた。


「あはははは!ははは」

 本当にくすぐったくて、ケイトは笑いを止められず、

 そのままショウの目線の先を見た。


 ――!


 ケイトは笑いながら目を見開いた。

 岩陰からひょっこりとこちらを覗き見ている顔と目が合った。


 ショウは、ケイトのわき腹から手を離した。

 そして、にっこりと笑いかけた。


 ショウが呆けているケイトを小突いた。

 ケイトも察して、にっこりと笑った。


 岩陰からひょっこりと姿が現れた。

 二人の膝くらいの高さしかない背の低い人物が出てきた。


(童話や絵本で見るような絵にかいたような小人じゃないか……)


 ケイトは、背が低く大人顔の小人をニコニコした顔のまま見た。


「道案内人の小人だよ」

 ショウがぼそりと囁いた。


「何やら楽しそうじゃ」

 小人は興味を持ったように近づいて来た。


「あぁ、楽しいな」

 ショウは、ニコニコして答えた。

 そして、続けた。


「洞窟への入口を教えてほしい」


 小人の足がピタリと止まった。


「……」


「洞窟の中へ行きたいんだ」


「ワシのことを知って呼んだんだな!」


 心なしか小人は少し嬉し気な大声だった。


「あぁ」


「二度と戻ることはできないかもしれぬぞ!」


 やはり小人は少し嬉し気な大声だった。


「あぁ、分かっている。それでも行きたいんだ」


 ショウは、ニコニコしたまま答えていた。


「洞窟に案内するなど、この230年ほどなかったぞ!」


 小人はニコニコ笑った。


「ついてこい!」


 小人は振り向き歩き出した。


 ショウはスッと真顔に戻ると、小人の後をついて行った。

 ケイトもその後をついて行った。


 ごつごつとした岩の上を歩いて行った。

 木や草の姿はひとつもなく岩だけがあった。

 小人は慣れた足取りで、ひょいひょいと進んでいった。


 小人は大きな岩のところを曲がると、

 大きくひょいっと飛んでいった。


 ショウが立ち止った。


 パラッ……。


 小石が落ちて行く音が聞こえた。

 ケイトもショウの後ろで立ち止まった。


 地面を見て、ゴクリと唾を飲んだ。


 足元には深い溝が深く切れ込んでいた。

 底は見えず真っ暗だった。


 距離は1m半ほどだったが、

 一歩踏み間違えれば、底が見えない深い溝に落ちることになる。


 小人は、ためらうこともなく

 ひょいっと深い岩溝(いわみぞ)を飛び越えて行ったのだった。


「ケイト、飛べるか?」

「うん……多分」

「じゃ、先にいくぞ」


 ショウは、深く息を吸った。


 ザッ!


 地面を蹴り上げ、大きく飛んだ。


 ザザッ!


 ショウは、余裕をもって向こう側へと飛んで行った。

 振り返ると、ケイトの方を見た。


 ケイトは下を見た。

 足がすくんだ。


「ケイト!こっちを見ろ!」

 ショウが手を差し出した。


 ケイトはギュッと目をつぶり、息を深く吸った。


 ――3、2、1……!


 ザッ!


 地面を蹴り上げ、大きく飛んだ。


 ザザッ!


 足が地面を捉えたのを感じた。


 ほっとした瞬間、


 ザリッ!


 と片足が空を切っていた。


(しまった!)


 体が後ろに倒れていくのが分かった。


 が、どうすることもできなかった。


 手が浮いた。


 ぐいっ!


 とその手が力強く掴まれた。


 体が引き寄せられた。


 両足に地面を感じ、体がショウの体温を感じた。


 これほど安堵したことはなかった。


「あぶなかった……ありがとう」


 ケイトはショウから離れた。


「あれ?小人は?」

「どうやら、先に行っているようだ」

「なんだよ……待ってくれないのか」


 ショウとケイトは速足で小人の後を追った。


 そびえ立つ岩に囲まれた一本道を進んで行った。

 岩がどんどんと高く、視界が暗くなって行った。

 ほとんど真っ暗になっていた。


 小人はそこで立ち止まっていた。

 ショウとケイトが追いつくと、ニコニコして言った。


「案内はここまでだ」

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