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宇宙人総理  作者: 竹内遼
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#9

10月19日

 AIがホワイトカラーの仕事を抹殺した現代では、全ての画像・音声・動画がフェイクかリアルかなんて判別することは不可能だ。メディアで出す画像や動画は全て、ファクトチェック委員会がチェックをする。もしもファクトチェックに引っかかった場合は、該当の会社に通告をされて世の中にリリースもされる。過去に、視聴者からの動画として大手放送局NTVが配信したものがAIの動画だったとして、ファクトチェック委員会から指摘を受けた。そこから世間は大手メディアへの不信感が爆発をして、正当な指摘や陰謀論がNUTSを席巻した。その後は、全てのメディアのニュースをファクトチェック委員会以外の一般人も正当でもない目でチェックするようになった。メディア各社は、メディアの信頼失わない崇高な理由を掲げて、全ての画像・動画・記事内容全てに慎重を期すようになった。そんな今の時代に、ニューヨークバッファロービル爆破の瞬間の動画なんて誰が信じるのだろうか。そんなことを頭がぐるぐる巡る中、夜の東京に立つ東方ジャーナルの古いビルに入っていった。

神保町の古いビル群から東方ジャーナルは全く移動しないのは新聞社時代からの矜持なのだろう。その矜持はオフィスの中にも蔓延していて、いまだに紙媒体の雑誌を刊行してゾロゾロと並べている。だが、東方ジャーナルはNUTsと業務提携をしてネット媒体での影響力を保つことで元新聞社の中で唯一黒字化出版社として生き残っていた。NUTsは東方ジャーナルの記者の取材力の高さを評価し、日本拠点のメディアとして目をつけたようだった。そんな順風満帆な東方ジャーナルでも、記者のデスクは資料とカップ麺とペットボトルとでごった返している。なぜ未だにこんな昔気質なのかと新入社員の時は思っていたが、居心地が良くなっている自分に可笑しさと頼もしさを感じてしまっている。一旦、自分のデスクに座って、爆破映像を公開した後に世間の人々がどのように反応するのか考えを巡らせる。しかし、どうしても世間が信じる流れが思いつかない。

「おい!滝上。会議室来い」

「…はい」

会議室に入ると、滝上は椅子に座って鋭い視線でビジョンを見ていた。滝上に指導された私は、すぐに彼が話の核心をつく映像を出せということがわかった。無言でビジョンに「JAM PHONE」を繋げる。ビジョンには例の映像が流れる。

「…」

無言の20秒ほどが過ぎ去って、その後さらに2分ほど無言が続いた。

「なるほど。一応確認するが、これはフェイクじゃないよな?」

「アメリカ大統領直々に話して、情報を出してくれと言われました」

「アメリカ大統領?!クリンプトか?」

「です」

この人とツーカー過ぎて全て読み取られていると思っていたが、そうか。この情報は言っていないし予想できるはずもないか。

「記者会見の後に、アメリカ大統領に呼び出されました。この情報をアメリカも掴んでいるようです。私は匿名で受けた情報なので信憑性は低かったですが、アメリカは確定の情報で進めています。アメリカはこの情報を日本で報道してくれと言われました。宇宙人が人間の形をしているのではないかという内容で」

「いやちょっと正直すっと頭に入らない情報ばっかり言われて混乱してるが…。お前が嘘を吹くわけないしな」

「嘘な訳ないでしょ」

「それにしても…まぁ理由がわからないな。アメリカ様が俺たちに命令してきたのが」

「命令ですか?」

「そりゃそうだろ。直々に呼び出して、出せよってことだろ。逆に出さないと俺たちが何をされるかわかんないよ。NUTs経由でいくらでもできる」

「記事を出すなじゃなくて、記事を出せっていう圧力ですか」

「まぁ、政権を落とすとかどっかの支持を上げるためとかなら、よくあることだけど。これは、アメリカ様の事件で、宇宙人からの攻撃だ。全く理由がわからない。宇宙人が人間の中に紛れ込んでる可能性を示唆するならアメリカから広げれば良い。あそこは日本より陰謀論が踊り狂うには良いクラブだ」

「アメリカンジョークみたいに言わないでください。ずいぶん余裕ありますね」

「こういう時こそ…」

「冷ややかに見る。分かってますけど、日本から出す意図が全く読めない以上、時期は考えるべきでしょうね」

「いや、出す」

「え?」

「もちろん、FC(ファクトチェック委員会)には先に出して、お墨付きをもらってからだが、できるだけ早く出す」

「なんでですか?」

「これは真実だから。ジャーナリストとして出さない理由がない。それに…」

「面白いから」

「そういうことだよ。これで日本が、いや世界が一気に蠢くだろ」

すぐにデスクについて記事を作り始めて、数時間で滝上のチェックを貰い、FCに回した。外は夜から朝の狭間を告げるように紫と赤が混じった色をしていた。綺麗でおどろおどろしい混濁した空は、私の興奮と不安を混濁させた気持ちを表すようだった。

「このまま綺麗な朝がくればいいけど」

デスクのビジョンには「宇宙人攻撃の瞬間!人型宇宙人の存在?!」という記事が写っていた。

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