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部員が集まらないので中等部で探すことにしました

 結局、高等部の人間に声をかけて回ったものの、好印象な反応は得られなかった。とはいえ、一応ナフェルにも魔術に困ってる子がいないか聞いてみよう。

「そうですね……高等部では聞かないですけど、中等部の子で話に上がってくる子がいた気がします。」

「なるほど、やっぱ中等部の方に探しに行くしかなさそうだな。」

 アベラとナフェルと一緒に中等部の棟へと向かうことにした。

「アベラちゃん、最近は放課後になるとミトカ先輩と一緒にいること多いですね。」

「そ、それは、協力するって言ったからには仕方ないでしょ。」

「アベラちゃんが最近は一人にならなくて安心してるんですよ?良かったですね、アベラちゃん。」

「だから……まあ、そうだけどさ。」

 向かってる途中もアベラとナフェルは楽しそうに話していた。本当に仲が良いんだな。

「あ、あの二人ですよ、ミトカ先輩。」

 ナフェルが指を指した先にいたのは見覚えのある二人だった。

 真紅の髪にルビーの瞳の少女、漆黒の髪にルビーの瞳の少女、双子のように似た相貌の二人。

「そこの二人とも、ちょっと良いかな。」

「見ぬ顔じゃな……先輩方と言ったところか。我らなんぞに何用かの?」

 警戒した様子でこちらを見上げてくる真紅の少女。

「二人とも、もしかして魔術のことでお困りなんじゃないかと思ってね。」

「魔術を扱えぬことを揶揄いにでもきたのか、おぬし。」

 勘違いをさせてしまったのか、彼女からの視線が強くなる。

「やっぱり魔術を扱えないんだね。安心して欲しい、僕も魔法を使うのは苦手なんだ。」

 ポケットから小さな玉を取り出し、浮遊魔法を使って遥か彼方へと吹き飛ばす。

「ほら、浮遊魔法でさえこの有様だよ。」

「天井突き抜けておるが……?大丈夫なのかの?」

「後で叱られないうちに逃げるつもりだよ。」

「わかったわかった、話くらいは聞いてやろう。」

 呆れた様子で肩の力を抜く真紅の少女。

「僕はミトカ。二人は…?」

 本当は知っているけれど、形上聞かないと不自然だからね。アベラの時はやらかしてしまったけれど。

「我はルメルア。こっちはショウカ。」

 真紅の少女ルアと漆黒の少女ウカ。この二人も前世で奴隷だった二人だ。

 しかし、出会った当初の警戒心が強い二人はなんだか久しぶりな感覚だ。

「僕は魔術研究部を設立したくて、部員になってくれる人を探してるところなんだ。」

「それで何故我らに声を……?」

「魔術の研究をしたいのもそうだけど、僕や二人みたいに魔法を扱うのが苦手でも魔術師として価値があることを示したいんだ。魔法を使えるだけが全てじゃないってね。」

「ふむ……。」

 なんだかんだ話を聞き始めてからは、しっかり聞いてくれてるな。

「まあ、そもそも魔術の研究自体は我は嫌いではない故…構わぬといえば構わぬのだが。」

 ルアはそう言いながらウカのほうを見る。

「ウカは元より魔力が少なくての。魔術を扱うに至らぬのだ。それでもウカに魔術研究部に入る意味があるであろうか。」

「もちろんだよ。それこそ、解決策を探すのだって魔術の研究の一環になりえることだ。」

「ふむ……確かにそうじゃな。」

 ルアは話を聞きながら考えている。だけれど、ウカは時折こちらに視線を向けるだけで、一言も発することはなかった。

「まあ、すぐに決めて欲しいとは言わない。考えておいてくれると嬉しい。」

「うむ、あいわかった。」

 ひとまず部員候補に声をかけて回ることはできた。

「アベラもナフェルも今日はありがとう。ひとまず、今日はここまでにしておくよ。」

「いえいえ、私は私にできることをしただけですから。」

「また、何かあれば呼んでください、先輩。」

 今日のところは解散とし、今後の動きを考えることにした。

 時間が解決してくれれば簡単な話ではあるが……それとは別に、魔術研究部に入ろうと決断させるための一押しが必要な気はしている。

「そういえば、ルアはどうして魔術を扱えないんだ?魔力は十二分にあるように見えたけれど。」

 二人についてもう少し調べたほうがいいかもしれないな。

「ミトカ、今から帰り?」

「リズ。そうだよ、一緒に帰ろうか。」

 部活終わりのリズと一緒に帰路に着く。

「あれからどう?魔術研究部は。」

「ひとまず順調だよ。まだ部員は増えてはないけれど。」

「ふーん、大変だね。」

「リズ、なんだか浮かない顔してないか?」

「別に、気のせいじゃないかな。」

 そういう割には、リズの心はどこか寂しさを感じているようにも見えた。

 隣を歩くリズの手にそっと触れる。リズは一瞥だけして、手を近づけてくる。リズの手をそっと握る。

 そこから家に着くまでリズはこちらを見てくれることも、言葉を交わすこともなかったけれど、手を離そうとはしなかった。

「ミトカ。」

「ん?どうしたの、リズ。」

 家の前まで来ると、リズは手を強く握った。

「今日は泊まって行っちゃ……だめかな。」

「良いけど、着替えはあるんだろうな。」

「頻繁に泊まりに来てるから、何着かミトカの家に着替えおいてるもん。」

「知らなかったんだけど。」

 ウォナがきっちりしてくれてたんだろう、ありがとうウォナ。

「あ、おにいちゃん、リザレットおねえちゃんもおかえりなさい、です。」

「ただいま。今日はリズ泊まっていくみたいだから。」

「わかりました、です。3人分のお夕飯準備する、です。」

 ウォナはそう言ってキッチンに向かって行った。

 それから夕飯を食べる時までなぜかリズはくっついて離れなかった。

「リザレットおねえちゃん、今日はおにいちゃんに甘々、です。」

「え?そ、そうかな?」

「ずっとお側にくっついてる、です。」

「気づかなかったなー。ごめんね?ミトカ。」

「いや、僕はいっこうに構わないけど。」

「ふーん。」

 それからもリズは離れる様子はなかった。

「リズ、さすがにお風呂は別で入らせてくれないかな。」

「ん……。」

 多少不満げではあったものの、抵抗することはなく、やっと離れて大人しくリビングのソファに座りに行った。

「その間、ウォナとお話する、です。」

「うん、そうしよっか。」

 ウォナは本当にいい子だな。義妹であるのが惜しいくらいだ。

 お風呂はなんとか一人で済ませることはできたものの……そのあとはそうもいかなかった。

「あの……狭くない?」

「くっついてたら狭くないよ。」

「あったかい、です。」

 どうして一つのベッドで3人も寝てるんだ。狭いだろうに。

 前門のウォナ後門のリズ、逃げ場はない。諦めるしかないのだが、寝るに寝られないだろこんなの。

 そう思っていたものの、腕の中で大人しく寝ているウォナと、僕を抱きしめて離さないリズの後ろからの寝息に挟まれ、寝られていないのは自分だけだと思い知らされる。

「助けて……助けて……。」

 泣き言も虚しく救いはないまま悶々とした夜を過ごした。


「眠い……。」

 次の日は激しい睡魔に襲われながら過ごす1日だった。

「……あ。」

「あれ、ウカ。どうしたのこんなとこで。」

 わざわざウカが高等部の棟に来てるなんて、どうしたんだろう?

「……ミトカ、聞きたいことがある。」

「僕に用があって来てくれてたの?」

「……そう。魔力が少ない私でも魔術を扱うことはできるの?」

 前世と違い、少なからずウカには魔力がある。なら、魔術を扱える可能性は十分ある。

「可能性はある。ただ、絶対とは保証できない。そのために、魔術の研究を進める必要があるんだ。」

「……魔術研究部が必要ってこと?」

「そういうことだね。」

「……そう。」

 ウカは悩むように視線を泳がせる。

「……本当に魔術の研究をしたら、私でも魔術を扱えるなら、手伝う。」

「わかった。ウカのためにも、いい方法がないか探してみるよ。」

「……うん。」

 ウカはそう言って中等部の棟へと向かって戻っていった。

「さてと、確証はないけれど先に進むための道は見えて来たな。」

 ルアはウカを気にしている。ウカは魔術を扱えるようになる可能性がわかれば入ってくれるということだろう。そして二人が部員として入ってくれるとなれば、アベラで3人揃うことになる。

「魔術研究部の設立も夢じゃなさそうだ。」

 そうとなれば、魔力が少なくても魔術を扱えるようになる方法を探さないとだな。


 前世のウカにはそもそも魔力がなかった。その場合、まず魔力を持つ状態にしなければならなかったけれど、今回の場合は魔力を持っている。

 魔力量を増やす方法としては、魔力の練度を高めるのが一番だけれど、即効性はない。もちろんウカに魔力の練度を高める方法を教えたほうが良いのは確かだろうけれど。そして、魔法を扱うともなれば、また話は変わってくる。

 魔法の扱い方は僕が教えれるのかも怪しいし.…でも、ウカに魔法を扱う体験をさせてあげれたら一番良いと思うんだよな。

「さて、どうしたものか……。」

 それなりに魔術の知識は持っているつもりだけれど、何より古いんだよな。旧代魔術と新代魔術の知識はあるけれど、現代魔術の知識は持っていない。

 とはいえ、魔術の進歩はそこまで感じられない。だからこそ、魔術研究部に必要性を感じているのだから。

 ただ、魔導書に依存していた新代魔術の頃とは違い、魔導書を通じて魔術の知識を共有し、自らの魔力を持って魔法を体現するという新しい形にはなっている。

「待てよ……?魔導書を使えばウカでも魔法を使えるんじゃないか?」

 とは、思ったものの魔導書自体が今どこにあるのかもよくわかっていない。

「だめだ、現代魔術の知識が足らない。どこまでのことが可能なのかわからないと、行動の起こしようがないな。」

 なににせよ、現代魔術の知識を集めることから始めないといけないか?

 魔術研究部の設立まで魔術の研究を怠るわけにもいかないし、普段の授業もちゃんと聞く必要が出て来たかもしれないな……。

「そういや、部室の空きはあるんだろうか?」

 部活棟にいったことがなかったな。見に行ってみるか。


 部活棟は予想よりも大きくて、心配する必要もないくらいに空き部屋が残っている。

「これだけ空き部屋があるなら、一部屋くらい使っても怒られないのでは……?」

 どうせ、魔術研究部の設立は今は仮でもいつかは正式になるのだから。

 本棚がすくないな……まあ、さすがに今のうちにレイアウトなんて考えるのは気が早すぎるか。

 ひとまず、今日はここで魔術の研究でも進めるとしようかな。

 旧代魔術と新代魔術と現代魔術、魔術においての違いのわかりやすさは魔力と魔法の扱いの違いだろうか。

 旧代魔術は魔力中心の世代。魔術の研究と錬成に打ち込み、魔力の練度を高めることを主に行って来た。そして、自分の魔法という自分の魔力そのものが持つ特性を追い求めていた。

 新代魔術は魔導書中心の世代。魔導書の存在の登場により、魔法の共有が行われるようになり、誰でも魔法を使えるようになった代わりに、魔術の研究がだんだんと行われなくなった。

 現代魔術は魔法中心の世代。魔導書に依存せずに魔法を扱えるようになるために、魔法の扱い方を学ぶようになっている。その結果、魔法を扱える人間が評価されるようになった。

 魔術師の成長自体は止まってはいないように見えるけれど、魔術の進歩はあまり感じられない。魔術を見る時、魔力と魔法の両方を見なければならないからだ。だけれど、魔力そのものに目を向けられることは少なくなり、魔力量くらいしか気にされなくなってしまっている。

 魔力というのは人間が魔素を取り込んだことで自らに魔素を蓄えているもので、人によって抱えられる量が変わってくる。だが、魔力というのは目にははっきり見えないが感覚的に感じられるものではある。そして、その感覚的に存在している魔力を練り上げていくことで練度を増し、抱えられる魔力量が増えたり、魔力そのものが持つ特性や力も増していく。

 ここで大事なのが、魔法というのが魔力を持ってして体現された事象の一つに過ぎないということ。人によって得意な魔法などがあるのは、自分の魔力の特性と魔法の特性の相性が影響している。

 つまり、魔力も人によって個人差があり、そもそもその個人差こそが魔法の多さを表しているといっても過言ではないのである。

 魔力の特性から体現された魔法を自分の魔法と旧代魔術では呼んでいた。

 ちなみに、自分の魔法は他の人間には扱えない魔法である。

 しかし、魔導書の登場により、魔法の共有が行われてしまったため、自分の魔法という概念が薄まってしまったのである。

 魔法の共有により、数多くの人間が同じ魔法を扱えるようにはなったものの、魔力が違うため、厳密には違う魔法である。とはいえ、魔法の名称自体を使い分けることはない。

 現代魔術では、その魔力に対する知識があまり伝えられていないように思える。数多くの魔法を教え、数多くの魔法を扱えるようになることを目的とした学習が行われている。

 とりあえず……現状までの魔術をまとめるとこんなものか。

「旧代魔術派の魔術師の端くれである以上、魔力を中心に、自分の魔法を成長させることに意味がある。今日も少しずつ魔力の練度を高めておくとしよう。」

 椅子に座り、静かに瞑想をすることにした。

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