部活の設立のために動くことにしました
魔術研究部を設立したいミトカだが、魔術学園では魔法を扱うのが苦手な落ちこぼれ扱いだった。
そんなミトカだが、魔術研究部の設立のために行動を起こすことに。
さて、魔術研究部の設立にあたって必要なのは部員をあと3人集めること。
「リズは頼めば入ってくれる気はするけれど……。」
どうしてもリズに対する違和感を拭えないため魔術の研究に専念できる気がしない。申し訳ないが、今は誘うのは控えたい。
「ウォナは……中等部だしな、とりあえず先に高等部を探してからにしよう。」
ともなれば……まずは高等部で、他に協力してくれそうな人間をまずは探さなければならなさそうだ。
「シュカは学級委員長なのもあって忙しそうだしな。他に当てを探すとなると……。」
ひとまず学園内を見て回ってみるか。
大体見て回ったものの、生徒は部活に行っており、人影もほとんど見当たらなかった。
「嘘だろ……。でもまあ、部室は別館だもんな、仕方ないか。」
ふと、通りかかった教室を見ると、生徒が一人窓際に立って、外を眺めていた。
薄赤紫のショートヘアに黄色と赤のオッドアイの少女。
「あれは……。」
またとないチャンスに引き寄せられ、教室に入る。
「ん?見ない顔……。この時間に何の用……。」
「突然でごめんよ。この時間にここで一人でいる君にだからこそ用があってね。」
「それってどういう……。」
ここは押すしかない。協力者がいなければ先に進めないのだから。
「部活に入っていないのだろう?理由は聞くつもりはないけれど、そんな君に頼みたいことがあるんだ。」
「た、確かに、部活に入ってないけど……。」
「僕は部活の設立をしようと思っていてね、部員を集めないといけないんだ。もちろん、君に入ってくれと言うわけではない。ただ、部員探しに協力して欲しいんだ。」
「部活の、設立?」
「魔術研究部という部活を僕が必要としているんだ。そのために部員を集めなければならない。手伝ってはもらえないだろうか。」
「そ、そんなこと急に言われたって困ると言うか….…。」
「君なら頼れると思ったんだ。お願いだ、アベラ。」
アベラは驚きで言葉を失う。それもそうだ、現状ではこちらが一方的に知っている状態なのだから無理はない。
「な、なんで名前……。」
「僕は君のこと前から知ってたから。」
よく考えると怖いこと言っている気がする。大丈夫だと信じたいところ。
「とにかく、今の僕に君が必要なんだ、協力してほしい。」
「協力って言ったってどうしろと……。」
「魔術研究部に入ってくれる部員を一緒に探して欲しい。願わくばアベラが入ってくれると嬉しい。」
「無茶言わないでよ!私が声をかけて話を聞いてくれる相手なんて……!」
「それってどういう……?」
アベラが魔術において評価が低いのか?そんな風には思えないが……。
「ただでさえ他の人と話すことなんてあまりないのに、いきなり話しかけたって怖がられるだけだし。」
違う、確かなことはまだわからないが、アベラは孤立してしまっているのか。
「アベラちゃん、部活終わりました〜。待たせちゃってすいませ……ん?」
教室のドアを開けて入ってきたのは金色のストレートロングヘアに碧い瞳の少女。その姿にも見覚えがあった。
「ナフェル!」
「アベラちゃん、その人は?」
ナフェルとアベラはこっちでも仲が良いんだな。
「私に協力して欲しいって、急に押しかけてきた人。多分先輩。」
「アベラちゃんに協力を……?一体何を?」
「魔術研究部の設立に協力してもらおうと思ってね。」
「部活の設立、ですか?なるほど……。」
ナフェルは考え事をするような素振りを見せる。
「私、協力しましょうか?」
「ナフェル?」
「良いのかい?それは僕としては助かるけど。」
「アベラちゃん、いつも一人でいますし、部活にも入らないしで心配してたんです。良ければ先輩もアベラちゃんの仲良くしてくれると嬉しいんです。なので、私も先輩に協力します、アベラちゃんのために。」
そういえば、アベラもナフェルも前世だと会ってすぐ付き従ってくれていたけれど、今はそうじゃない。僕の知らないアベラとナフェルの姿なんだ。
「せっかくですし、協力してみましょう?アベラちゃん。」
「ナフェルがそういうんだったら……わかった。でも、私はあまり力になれないと思うけど。」
「落ちこぼれの僕よりはマシだよ。」
「あ、もしかしてミトカ先輩ですか?魔術の知識はあるのに魔法が使えないことで有名ですよ。」
「そうなんだ……。」
嬉しくない形で有名になってしまったもんだ。
「とりあえずまだ部活に入ってない生徒を探すことからしようと思う。」
「部活に行ってない方はだいたい帰っちゃうので、放課後に帰る人たちを調べることからしたら良いんじゃないですかね。私は部活があるのでお手伝いできないですけど。」
「ナフェルを待ってる間、ここから外眺めてること多いから、大体目星はつくけど。」
「じゃあ、まずはそこからだね。明日からまたアベラのとこに来るようにするよ。」
「えっ、あ、うん。わかった。」
「私は私にできることを考えてみますね。」
こうして、アベラとナフェルが部員探しを手伝ってくれるようになった。ひとまず進歩だな。
それから毎日、放課後にアベラの元へと向かい、一緒に部員になってくれる人を探すことにした。
「アベラ!」
「先輩、お願いだから毎日そんな大声出して呼ばなくても大丈夫だからやめて……。」
「嫌だった?」
「い、嫌でしょ……毎日放課後になったら先輩が呼びに来てたら、その……。」
「何か問題があったのならごめん。気が回ってなかったみたいだ。」
「魔術バカの先輩にはわからないでしょうね。」
魔術バカって……でもたしかに前世以上に魔術に対する意欲が強い気がする。というか前世の僕に問題があっただけだろう。
「ほら、みんな帰っちゃう前にいきますよ。」
「そうだね。」
部活に入ってない生徒たちにアベラと一緒に声をかけて回ったが、正直あまり好印象とは言えなかった。
「やっぱ私じゃ力になれない気がするんだけど……。」
「そんなことないよ。僕一人じゃそもそも話にすらならなかっただろうからね。」
「でも、進展はしてないし……。」
「アベラがこうして一緒にいるだけ僕としては進展だよ。」
アベラは今は協力者だが、何よりアベラは部員の候補でもある。一緒に行動することで、それこそアベラが部員になってくれれば一人確保できるのだから。
「先輩、悪い顔してません?」
「そう?だとしたら元からだよ。」
「それはそれでどうかと思いますけど……。」
自分の顔なんて気にしてこなかったから、どんな顔してたかなんて、わからないけれどね。
「そう言えば、アベラ。気になってたことがあるんだけど。」
「ん?なに?」
「アベラは別に悪い子でもないし、魔力の感じからして魔法が使えないわけでもないと思うし、他の生徒と話してる感じ人当たりが悪いわけでもないと思うんだけど、どうしてクラスで孤立するようなことに?」
「それは……。」
アベラは言葉を濁し俯く。聞くにはまだ早かっただろうか。
「無理に話すことはないよ。」
「私の魔法、火炎魔法なんだよね。もちろん他の魔法も使えるんだけどさ。火炎魔法が強すぎて怖がられちゃって。」
「なるほど、そうだったのか。」
こうも平和になっていると確かに火炎魔法は少し怖がられてしまうのかもしれない。それより……。
「私の魔法って言ったよね。自分の魔法をちゃんと把握してるんだね。」
「ああ……たしか、今じゃ珍しいんだっけ。魔法を扱うことに重きを置いてるから、自分の魔法に向き合う人ってあまりいないもんね。」
そう、それこそ旧大魔術の考えであり、今では失われつつある考え方だ。
「アベラ、やっぱり魔術研究部に入るの、考えていてくれないかな。」
「私が入っても……ま、まあ、考えとく。」
せっかく自分の魔法と向き合っている人間を無駄にはしたくない。ぜひともアベラには魔術研究部に入って欲しい。とはいえ、無理強いは良くない。どうしたものか……。
「どうしてもあと一人見つからなかった時は…入ってあげる。」
「ほんと?ありがとう。じゃあ、あと二人見つけないとだね。」
「どうしてもって見つからなかったらだからね!」
「はいはい。」
どうせこの調子じゃあと二人も見つかるか怪しいんだ。前向きにみておいて問題はない。
「ところでさ、その魔術研究部って何する部活なわけ?」
「そのままだよ。魔術の研究をする部活。魔術の知識を集めながら、自分の魔法の研究と錬成に打ち込むための部活かな。あとは、そうだね……僕みたいに魔法が使えなくて評価されてない子がいたら力になってあげたいかもね。」
まあ、魔術学園で僕みたいな落ちこぼれがいたら目立つだろうけど……。
「私はよくわからないけど、ナフェルは顔広いからもしかしたら、そういう子がいるのもわかるかも。」
「そうなんだ。」
「クラスのみんなとも仲良さそうだったし。クラス違う私のことも気にかけてくれるし。ナフェルはいい子だよ。だから、他にも気にかけてる子がいるかもしれないし。」
「なるほどね。」
周りを気遣うところは変わらないんだな。まあ、それこそナフェルの良いところだろうな。
「今度、ナフェルにも聞いてみようか。」
少しずつでも行動を起こさないと進展しない。例え、結果が小さくても行動することに意味があるはずだ。
「それじゃ、今日はここまでにしておこう。また明日ね、アベラ。」
「ん、また明日。」
その日はそのまま解散した。
次の日、ナフェルにも話を聞こうと思って早めにアベラの元に向かった。
「あ、ミトカ先輩!大変なんです!」
僕に気づいたナフェルが急いで僕のところへと駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「アベラちゃんが!」
「アベラが……?」
ナフェルが指差す方へと急いで駆けていく。そこには、数人の男子に囲まれたアベラがいた。
「いつもアベラちゃんに構ってくる男の子たちなんですけど、ミトカ先輩のことで揉めちゃってるみたいで。」
「僕のことで……?」
一体どういうことだ?どうして僕のことでアベラが……?
「先輩は確かに魔法は下手かもしれない!でも魔術師としてバカにされるような人じゃない!」
アベラの声が響く。
「魔術に向き合うこともしないあんたらよりも立派な魔術師だよ先輩は!」
僕が落ちこぼれだと揶揄されているのに対して怒ってくれているのだろうか。どうして僕の話題になったかはわからない。だけれど、まさかアベラにそこまで言ってもらえるとは。黙ってみているわけにもいかないか。
アベラは感情的になっているのか、火炎魔法を放とうとする。アベラの元へと歩み寄り、背中に触れ魔力を流し込む。そして、僕の魔力に飲み込まれた火炎魔法が霧散していく。
「先輩……?」
「男の子たちが寄ってたかって女の子を取り囲むなんてカッコ悪いことするんじゃないよ。」
アベラと男たちの間に立ちはだかる。
「まあ、女の子に気を遣われるようなカッコ悪い僕が言えた立場ではないかな?」
「そんな、気を遣ったつもりは……私はただ、先輩のことを何も知らないのに落ちこぼれの評価だけで判断するのが気に食わなかっただけで。」
「僕としてはそれだけだ十分だ。ありがとう、アベラ。」
男たちも黙ったままでいられないのか魔法を発現させる。
「魔法の使い方は確かに君たちの方が上手だろうね。でも、魔力の練度が足らないかな。」
放たれた魔法は僕の周りに漂う魔力に触れたものから飲み込まれ霧散していく。何一つ僕に届くことはなかった。
「魔法の強さは魔力に依存する、基本を忘れちゃいけないよ。そして……。」
一人の体に触れ、魔力を送り込むことで相手の魔力を放出させる。
「魔術師にとって魔力というのは一心同体。魔力の過度な消費は命取りになることも、ちゃんと覚えておくんだよ。」
魔力不足でその場に倒れる男を見た周りの連中は恐れるように撤退していく。
「命に別状はないはずだけど……彼、保健室に連れて行かないと。誰か手を貸してくれるかな。」
周りを見渡すが僕を恐れて誰も近づいてこない。
「先輩、任せてください。」
アベラだけが、すぐに男の腕を肩に回し、体を起こそうとする。
「全く……率先して動いてくれるのはありがたいけど、女の子が一人で力仕事を頑張ろうとするんじゃない。」
反対側の腕を肩に回し、アベラと一緒に保健室へと運んだ。
「まさか、ミトカくんとアベラが一緒にいるなんて思わなかったわ〜。」
保健室に連れて行くとアベラと一緒にいることにリベルが驚きを見せる。
もちろん、男の処置はちゃんとしてくれて、ベッドで休ませている。
「もしかして、アベラが魔術研究部の最初の一人?」
「候補としては1番目ですけど、今はまだ。」
「ふーん。でもミトカくんにならアベラを任せても良い気がするわ。」
「それってどういう……。」
「あら、言ってなかったかしら?アベラは私の娘だもの。娘がなかなかクラスに馴染めてないのを気にしてしまうのは母としては仕方ないでしょう〜?」
そこは前世同様、親子関係なんだな。そんな気はしていたが、それはそれで都合がいい。
「なるほど。じゃあ、早くあと二人を見つけないとだね。そうしたら入ってくれるみたいなので。」
「どうしても他にいなかったらって言ってるのに勝手に3人目確定にしないで……。」
「良いじゃない。ミトカくんは良い子だと先生思うけどな〜。」
「ほら、お母様もこう言ってることだし。」
「調子乗んなバカ。」
顔面に火炎魔法をぶつけられる。もちろん僕の魔力が防いでいるのでダメージはない。
「……少なくとも部員が見つかるまでは協力するから。」
「うん、ありがとう、アベラ。」
「ふふふ、なんだか見てるだけで私も嬉しくなってきちゃった。」
「お母さんまで揶揄わないで……。」
兎にも角にも、あと二人の部員を見つけないといけない。結局、ナフェルにも聞けなかったし。
でもまあ……少しずつアベラと距離は縮んでいる、と思いたい。
魔術研究部の設立は第一目的に過ぎない。そこにばかり意識を持ってかれてもいけないんだ。
前世のように主人と奴隷の関係ではないのだから。ちゃんと、関係を結ばなければならない。
少しずつ、少しずつでも構わないから、一歩ずつ事を進めていこうじゃないか。
なんとか更新続いております
引き続き頑張りますのでよろしくお願いします




