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魔術の評価は実技に偏っていました

魔術研究部の設立を目指すことにしたミトカだが、そこには問題があった……。

 部活の設立に必要な部員はあと3人。集めるのは正直容易ではない。

 ただでさえ、すでに部活に入っている生徒がほとんど、部活に入ってない生徒を誘わなければならないということ。まあ、その点はおそらく問題はない。

 問題は……僕が誘わなければならないということだ。

「はーい、次はミトカくんね。」

 今は絶賛授業中。ちなみに実技の授業だ。

「えーと……物体浮遊の魔法でしたよね。」

 物体浮遊の魔法。物を宙に浮かせる魔法で、軽いものであればあるほど浮かしやすい。そして、浮かせるだけなら簡単だが、浮かせた状態で自分の思うように動かすのは少し難しくなる。ちなみに……。

「先生、すいません。どっか飛んで行きました。」

「あらま……どこ行っちゃったんだろう?」

「空の彼方……ですかね。」

 周りでは笑い声が起こっている。僕は魔法を使うのが下手なのだ。

 どうやら前世同様、魔力量は人並み以上だけれど魔法を扱うのは下手なのは変わらないようだ。

 そして、現代は新代魔術同様に魔術を扱える人間の方が評価が高い。

 旧代魔術においては魔術の研究と錬成により己の魔術を磨くことこそ人生と言われるほどのものだったが……そこは引き継がれなかったようだ。

「ミトカさんは実技だけは相変わらず上手くいかないですよね。筆記はいつも問題ないのに……。」

 クラスメイトのアーシュカ。学年主席であり学級委員長だ。僕がシュカと呼んでいた前世で知っている一人だ。深海のようになびく濃く蒼い髪。金色に輝く瞳。あの綺麗な顔を見間違えることはないだろう。

 僕が実技がてんでダメなせいで周りから落ちこぼれ扱いされているのを気にかけてくれる数少ない味方だ。

「ミトカのことバカにしないでよね。」

「そういうリザレットも魔法使えないだろー!」

「できますー!」

 ヤジを飛ばす生徒たちにリズが反抗を見せるが、僕は知っている。リズもそんなに魔法を使うのは得意じゃないはずだ。

「う、うぐぐ……浮いた!浮いたよね!?」

「ちょっと動いた気がしただけだね、リズ。」

「ミトカの意地悪。」

 リズは頬を膨らませてそっぽを向く。相変わらず可愛いんだけどな。

「ミトカさんもリザレットさんも何がそんなに上手くいかないんでしょう……?」

 リズも魔力自体はある、だが魔法を扱うのが下手すぎる。僕が言えた立場ではないが。だからこそ、シュカは不思議なのだろう。

 おそらくだが前世の記憶が引き継がれる前のこの僕も、僕であるが故に魔法を扱うための魔術の鍛錬ではなく、魔術の研究と錬成に打ち込み魔力を高めることをしてきていたからだろう。そして、幼馴染であるリズもそんな僕と同じようにしてきたんだろう。

 魔力量を増やし、自分の魔力は鍛えられているが、魔法を使うということをしてきていないのである。それが実技に影響しているのである。

「良ければ、今度私がお教えしましょうか?」

「え、シュカが……?そんな悪いよ。」

 僕らみたいな落ちこぼれのためにそんな、学級委員長の手を煩わせるようなこと。

 シュカの前世が元王女様だったこともあり、どうしても少し距離を取ってしまう。

「悪くありません。ミトカさんが落ちこぼれ扱いされるのは私は納得していないんです。」

「周りが勝手に言ってるだけですから……そんな気にしなくても。」

「気にしてください!自分のことなんですよ!」

 近い、近いです。綺麗なお顔がとても近いです……。シュカも顔を近づけすぎたことに気づいたのか顔を赤く染めてそっぽを向いてしまう。

「と、とにかく、お勉強会ということで、お家にお邪魔させていただきますから!」

「….…え?ええ?えええ!?」

 シュカが家に来る!?転生後にしては展開が早すぎないか……?いや、それは僕の勝手な思い過ごしか?幼馴染であるリズなんか毎日のように僕の家に上がり込んでるしな。

「わかりましたか!」

「は、はい。」

 否定することもできず、二つ返事で了承してしまった。


 その日はリズも部活が休みで、シュカとリズの二人と一緒に帰ることになった。

「リザレットさんとミトカさんはいつも一緒ですよね。」

「そうだね、幼馴染だからね。」

「なーに、シュカ。羨ましいの?」

 リズはそう言いながら僕の手を握る。

「リズ?」

「これくらい普通だよね、ミトカ。」

「僕はまあ……構わないけど。」

「じゃあ私も構いませんよね!ミトカさん!」

 そう言ってシュカも僕の手を握る。

「どうしてそういうことに!?」

 いやま構わないけどさ!大丈夫かと聞かれたら大丈夫じゃないよ!?

「えー、シュカ意外と大胆だね。」

「リザレットさんに言われたくないです!」

 二人とも同じだよ!僕の心臓が強くなかったらどうする気なんだ。

 結局、家に着くまで二人とも手を繋いだままだった。


「おかえりなさい、です!お兄ちゃ……ん?」

 家に着くなり出迎えてくれたのは義妹のウォナ。薄青のショートヘアに透き通るようなクリスタルの瞳をしている。とても可愛い。

「リザレットおねえちゃんと……誰、です?」

「クラスメイトのシュカだよ。こっちは妹のウォナです。」

「ウォナさん、こんにちは。」

「わぁ……こんにちは、です。」

 ウォナもシュカの顔に見惚れたか?まあ、綺麗だもんなシュカ。わかるよ。

「今日はシュカに魔法の使い方を教えてもらおうと思って、一緒に帰ってきたんだ。」

「シュカおねえちゃん魔法使える、です?すごいです!ウォナも教えてもらいたい、です。」

「じゃあ、みなさんでやりましょうかっ。」

「良いんだ……。」

 こうして4人で魔法を使う練習をすることになった。

「ウォナ、水を出すのは得意、です。でも、もっと上手になりたい、です。」

「ウォナさんは水の魔法が得意なんですね。ミトカさんもリザレットさんも、何か得意な魔法があれば良いんですけど……。」

 得意な魔法……か。得意というか自分の魔法ならある。それこそ、この魔力はそれの体現のはず……転生しているから確かなことは言えない。

「得意な魔法……私わからないんだよね。剣振ってるほうが性に合うから。」

 リズは魔法の扱いは下手だが、身体能力は高く、剣術は得意なため、戦闘技術は魔術師を超えている。

「とはいえ、魔法の使い方自体はわかっているんだよね。何が上手くいかないんだろうか。」

「おそらく二人とも魔力を出力するのが上手く行ってないんじゃないでしょうか……?」

「魔力の出力か、なるほど。」

 僕の場合はおそらく出力の制御が下手なんだろう。リズの場合は出力自体ができてない感じだろうな。

「シュカおねえちゃんはどんな感じで魔法を使ってるんです?」

「そうですね……ウォナさんにわかりやすく言うなら、魔力を必要な量だけコップに注いでから魔法を使う感じですかね。」

「魔力を……コップに……。」

 自分の中にある魔力全体から必要分だけ切り取って、その魔力を使って魔法を使うのか。言いたいことはわかるが、これが結構難しいことだ。自分の体の一部を切り離せと言われて、はいわかりました、とは簡単に言えないのと似たようなものである。

 魔力を持てば持つほど魔力はより命に結びついていく。高等な魔術師であるほど魔力を失うのは致命的となるほどである。

 基本的に魔法を使う時はもちえる魔力を持って魔法を体現させ魔法を放つものだ。

 だが、シュカが言っているのは魔法のために魔力を手放さなければならないということだ。もちろん、その分魔法に使われる魔力は切り離された量しか使われないためそれ以上にもそれ以下にもならない。制御する方法として適切と言っても過言ではない。

「僕には難しそうだな……。」

「まあ、簡単なことではないですからね……。魔力変換と魔力補充を行うからこそできることですらから。」

「とんでもないことをしてるんだな。」

「ミトカ、魔力変換と魔力補充って何?」

「リズ、もし自分の魔力が減ってきたらどうする?」

「え?魔力が回復するまで休むかな。」

「そう、基本的に休息を取ることで自分の抱えられる魔力量まで魔力を回復させる。だが、それは時間がかかるから、急激な魔力の減少に対応できない。そういう時に使えるのが魔力変換と魔力補充だ。」

「おにいちゃん、それはどうやるんです?」

「僕はできないんだけど、大気中に漂う魔素と自分の魔力を合わせることで大気中の魔素から自分の魔力を生み出すこと、これが魔力変換。そして、それを魔力の消費に合わせて行うことで実質的に魔力減少を抑えるのが魔力補助だよ。」

「相変わらず詳しいんですね。」

 僕の説明に関心するシュカ。

「知識だけは、ね。」

 だが、わかっていても僕には不可能だ。大気中の魔素が僕の魔力を嫌ってしまうからだ。

「リズの場合はそもそも魔力の使い方がわかってないから、出力以前の問題でもあるし、シュカの魔力出力の仕方は僕らじゃ参考にできなさそうだね。」

「わ、わかりますー!」

 リズは立ち上がり魔法を使おうとするが何も起きない。

「うぐぐ……。」

 リズの魔力はとても不安定だ。そのせいで、どうしても前世のリズが頭によぎってしまう。だけれど、ここまで明るいリズにはどうしても少し違和感を感じてしまうな。

「なーに、ミトカ。そんなに見られてるとやりづらいんだけど。」

「どうせ見てても見てなくても魔法使えないでしょ。」

「まーた、そういうこと言う。」

 リズは不満げに頬を膨らませ、そっぽを向いてしまう。

「シュカおねえちゃん、リザレットおねえちゃん、そろそろ帰らないと遅くなります、です。」

「あら、もうこんな時間なんですね。」

「ええー……ねえ、ミトカ、今日も泊まっていっちゃダメ〜?」

「ダメだよ、ちゃんと帰りなさい。」

 ちなみにリズは本当に頻繁に僕の家に泊まってる。むしろ、僕の家にいることの方が多い気がするけれど……。さすがにシュカもいるのに承諾するのは良くないだろう。

「リザレットさん、よくお泊まりしてるんですか?」

「え?まあ、そこそこ….?」

「そうですか。ミトカさん。」

 シュカの視線がこちらに向けられる。なんだろう、イヤな予感がする。

「今日は帰ります。でも、今度泊まりにくるつもりで来ますね。」

「……え?な、なんで?」

「ダメなんですか?リザレットさんは良いのに。」

「り、リズは幼馴染だから、今更気にしてないというか……そもそも、シュカが僕の家に泊まりに来る理由もわからないと言いますか……。」

「私がそうしたいと思ったからです。まあ、無理にとは言いません。考えておいてくださいね。」

 そう言ってシュカは立ち上がり帰る準備をする。

「では、今日はありがとうございます。ウォナさん、また来ますね。」

「はいっ!シュカおねえちゃんもいつでも来てください、です。」

「んじゃ、私も今日は撤退しまーす。」

「リザレットおねえちゃんもいつでも来てください、です。」

 ウォナと一緒に二人を見送り、二人の姿が見えなくなると、ウォナがひっついてくる。

「ウォナ、どうした?」

「やっと甘えられる、です。」

 ウォナの頭に手を置くと、嬉しそうに頭を揺らす。

 まさか、前世と違い、義妹になってしまうとはな……。少しだけ、関わり方に迷ってしまう。

「おにいちゃん?どうしたです?」

「ん?ううん、大丈夫だよ、夕飯にしようか。」

「はいです!」

 そのあとは、ウォナと一緒の時間を過ごしながら眠りについた。


 どうして魔術学園で魔術研究部がないのか。わざわざ部活でまで魔術に関わろうという気持ちが生徒にあまりないのもそうだけれど、やはり実力主義に近い思想が現代には残っている。

 ましてや、魔術の研究や錬成に打ち込む生粋の魔術師気質の生徒は見た限り、まともに見受けられない。

 そして何より、評価の仕方に納得がいかない。魔術学園である以上、魔法が使えてなんぼなのは、いくらか仕方ないとしても、その上で魔法を扱えない生徒を救済するための研究が行われてないのが気に入らない。魔術を広めるための学園なのに、結局魔法を使える人間を評価するだけの場になってしまうのは違うと思う。

 だからこそ、僕は魔術研究部を設立する。失われてしまった旧代魔術としての思想を持っているのは、やはり僕しかいない。魔術は己を見つめ、自分の魔術を生み出すために研究と錬成に打ち込むべきものだということを、再び示さなければならない。

 僕は改めて、魔術研究部を設立するための行動を始めることにした。

珍しく早めの更新ができてます。

更新がいつ遅くなるかわかりませんが気長にお待ちください

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