第三十四話
私は屋敷の裏山で増やし鬼をしている。めちゃくちゃ急な崖を飛び降りて怪我している者もいた。やっぱり人間が速攻捕まっていく。屋敷の庭に書いてある残り人数がもう三人。
「成羅さま!」
アキが木の上にいた私の横に来た。アキからは騙す匂いがしない。
「見えますか、獣人の娘。明様でしたか?」
アキの目線を追ってみた。斜面を駆け下りていく明の横を猛スピードで走った影があった。陽だ。
「あれ?陽がいる。」
ん?三人だったような。
「ばれました?」
アキの匂いが変わった。飛び込んできた手を避けた。その拍子に木の枝から落ちてしまった。身体がふわっとするけれど前はこの空中でも移動できたのにな、とか思ってしまう……。
爪先が地面に触れた瞬間、体重を前に落とした。しばらく筋トレしてたからか、脚が軽い。
「遅いね!」
遥か後ろから追いかけてくるアキ。術無しなら怜利四天王、ハル、ナツ、アキ、フユにだって負けられない。
斜面の上から鬼がいっぱい滑って降りてきた。一直線に降りてくる。余裕だ。思い切り走って行って彼らの頭上を飛び越えて斜面を登っていく。後ろを見てもまだ滑ってる。上からは匂いもしない。
横からまだ捕まっていない二人が同時に走ってきた。相変わらずいちゃいちゃした匂いの陽と明だ。
「ふへぇー、あと何分だこれ?」
陽が膝に手をついて息を荒げる。その膝には術の匂いがした。
「お三方、タッチです……」
フユが私たちに優しく触れた。え?と、いちゃつく二人が同時に私の顔を見つめた。
「へぇ~すごかったなぁ!」
食堂で皆カツカレーを頬張りながら、話した。
「それにしても、成羅殿!速かったなぁ~!」
「うんうん、ほんとそうです!俺たち妖を置いて行けるほどでしたもんなぁ」
大勢の皆が楽しそうに話していた。陽が笑いながらカツを噛んだ。
「なぁ、成羅なんかさ怜利っぽくなってる」
隣でも明が首を縦に振って私を見つめてきた。
「ほんと、なんだろうね?」
カツカレーを食べて、怜利に任された外壁を強くする工事を始めた。重い砂利を運ぶのも数十往復だ。これがまた良い筋トレになる。
「成羅、重いよ~!」
明が必死に二十キロの袋を抱いて来ていた。私はしゃがみこんで担ぐ準備をした。明みたいに体の前で抱くよりは背中に乗せた方が全然楽なのだ。
「ほら、置いて?こっちの方が楽なんよ」
二十キロが背中に乗っかって、脚を重くする。前に踏み出してもいつもの半分くらいしか足が伸びない。
「だ、だいじょぶ?」
陽が両肩に二袋ずつ担いで隣を抜かしていった。ぎょっとして、明の顔を見る。どうやら明も同じく驚いていたようだ。
「え? えーと……いち、にぃ、さん、しぃ……、あれ? 八十キロ?」
明のケモ耳がおかしなくらいぴょこぴょこ動いていた。首を傾げては陽のほうを向いて指差しで数を数えている。面白い奴らだ。
「ほら行くよ、」
背中から背負い投げの要領で砂利の袋を投げた。脚が浮いて袋に振り回されたような具合になってしまったけれど。




