表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/23

第二十一話

 私たちは、六人で道を進んだ。あの後、

「やっぱり私も帰る」

と言って聞かない明を怜利が『飛天』で飛ばした。


 八人で走っていた私たちの列も、たった二人減っただけで妙に短く感じた。

 さっきまでいた陽の声はしない。もうしばらくはぴょこぴょこした狐耳を見れない。むかつくほどいちゃいちゃしていたあいつらは、もう故郷に着いたのかな。

 なんて感傷に浸ってみる。


 「疾風、速度上げよう。皆に『疾駆』をおねがい」

「おーけー」

疾風が私たちの前を飛びながら術輪を投げてきた。術式が足に回りだす。

 どんどん一歩で進む距離が伸びていく。速過ぎる。考え事なんかしてる場合じゃない。


 「え、おい!」

疾風が悠希さんに怒鳴った。悠希さんは疾風の術式を解いた。水術式を足に纏わせていた。

「こっちの方がいいよ」

術式を纏った足元と腕から、たくさんの水を吹き出して飛んでいった。あっという間に私たちを抜かしていった。一番後ろにいたのに先頭の怜利も抜かしている。

 「まっけねーぞー」

疾風が木の幹を蹴っ飛ばした瞬間に火花が舞った。音が遅れて防風林に響いた。

 一体、あのバカはなにしているのだか。ただの移動に雷術を使っちゃって。あれじゃあ妖力ももたないだろうに。

「おれも、」

幸璃がその後を生身で付いて行った。明らかに速度は負けているが、疾風の術式が付いた私達よりは断然速い。


 怜利が少しだけ速度を緩めて、私の真横に来る。

「どうする?」

怜利はこっちなんか少しも向かないでそう訊いてきた。

「急ぐ?」

横顔を見詰めてやった。相変わらず日に透けると茶色い髪をしている。成長しても黒くならないのだろうか。不思議な奴。

「じゃあ行こっか」

そこでやっと目が合った。少しだけ考え事をしている目だった。そのくらいは分かる。

 氷術を使って、空中を滑った。流れる景色は走っているときよりも速く消える。

 それを横から見ていた怜利も同じように、氷術を使って滑っていく。少し不器用だった。

「むずいね、」

怜利の小さな声が聞こえた。怜利は途中で『獄縛』を展開して、どっかの蜘蛛男みたいにスイングしていった。


 「よし、着いたね」

少し前に来たことがある漁港に着いた。大きな水族館と、ショッピングモールもある。本当だったら、来年の修学旅行で来るはずだったのだけれど。

 みんな普段着に着替えて無限鞄に荷物を全部しまった。怜利の無限鞄から彩が飛び出てくる。お昼から二時間ずっと、落ち続けていたのだ。


 「皆、今日はここの周りで泊まることにするから自由にしてねー」

怜利が疾風の襟を掴んでそう言った。疾風はもう水族館の方に行く気満々だ。怜利の力だけじゃ止まらない。

「あの、皆本当に問題だけは起こさないように、気を付けて。」

悠希さんも私たちに釘を刺してきた。


 「――何あの子たち。」

後ろからふと聞こえた気がした。若い女の人だった。

 こういうんだから嫌なんだ。怜利の近くにでもいれば何とかなる、と思ってだか、自由時間なのに結局怜利の周りから皆離れなかった。


 「怜利どこ行く?」

訊いてみた。行く場所は分かっているけれど。

「水族館行こうかな」

思った通りだった。そのくらいは分かる。

「私も行ってい――」

「あ!俺も行く!」

疾風が横から入ってきた。

「怜利!券買って」

疾風が手のひらを怜利に出した。コイツ。


 「なあ、お前らうるせえよ」

私たちがまとまって水族館の入り口に向かうと、若いお兄さんがそう言ってきた。内心またこれか、と思える。

「なんか文句あるの?」

疾風がそう言った。

「疾風。」

怜利が疾風の腕を引いた。その腕を幸璃が引っ張って。疾風の口を塞ぐ。

「どうもすみません、うちのバカが。」

彩がそう言う。怜利も悠希さんも同時に頭を下げた。

 別にそこまで騒いでないけれど。私も頭を下げておくことにした。

「わかりゃいんだよ、人外のくせに騒ぎやがってよ。」

「すみませんー」

怜利がそう言った。私たちはそれからしばらく話さないことにした。


 「おかしいよ、」

そう言った彩の独り言がやけに私たちの間に残っていた。


 「成羅、フェネック」

「疾風ー、アロワナ」

「見て見て、カサゴ!」

と、怜利がやけに明るい声で私たちに声を掛け続けた。

 怜利がふーっと、息を吐いた。

「なあ、怜利。俺らうるさい?」

横でぼーっと水槽を見ていた疾風が、突然口を開いた。

「全然だと思う」

ベンチでアイスを食べていた悠希さんが言った。

「出よっか」

彩がそう言った。続いて幸璃が出口に向かった。


 水族館の涼しい空気に、人の子の楽しそうな声が響いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ