晴風連合領
先遣軍撤退後の第一の議案は、建国ではない。
屋根直しだ。
旧風笛亭の北塔は全壊し、本棟は三分の一欠けている。十二都市から来た代表は庭で会議するしかなく、頭上にはフィアが仮に張った防雨風幕がある。
風幕は議論開始十分後に漏った。
雨水が正確に僕の茶椀へ落ちた。
「方向は間違っていない」とフィア。「カップが臨時に場所を変えたのよ」
見慣れた説明で、戦争の第一段が本当に終わったと確認できた。
戦損リストは七日かけて、ようやく初稿ができた。
死者九十一、行方不明十七、重傷四百六。断橋鎮下城三百二十戸が浸水し、羽民住居塔が二座焼け、石梯堡北井は少なくとも半年生産停止、晴風西壁と旧風笛亭北塔は再建が要る。
私有家屋の賠償、公共修復金、軍費は分けて登録した。
帝国先遣軍が残した装甲車を、そのまま戦利品として被災住民へ充てることはできない。一部は徴用された帝国商人の財産で、公開照合を待つ。晨鐘砲台は十二都市が共同封存し、どの都市も私に分解してはならない。
ヴィザー使節は退室のとき、窓半分ぶんの損壊費を払った。
「雨除けの二つの穴は当方の所為ではない」と彼は言った。
「ブルームだ」
「龍谷へ請求してくれ」
ブルームは最終的にカップを四個、弁償した。
ガルドはカップでは屋根が直らないと言い、ボニーは売り先次第だと言った。二日後、龍族蒐集家が十二金貨でそのうち一つを買い、北塔に最初の木材が入った。
修復に奇跡はない。
魔導車は先に負傷者を運び、それから石材を運ぶ。月泉城ガラスは輸出を一時止め、焼けた窓へすべて回した。断橋鎮は自ら水に浸かりながら、水工隊六組を晴風の消防管直しへ送った。石梯堡は産量が減り、ガルドは装飾工事を全部止めた。
「連合議事堂門口の髭像十二体も含むのか」と僕は聞いた。
「あれは必要構造だ」
「荷重を受けていない」
「精神を受けている」
ルミラは予算から十一体を消し、一体をガルドが標準化に協力した補償として残した。
アランは旧風笛亭のもとの二号室に安置された。
扉に「修理中、妨げないでください」と掛かっている。十二都市の職人が毎日交代で点検し、すぐに熔接しようとする者はいない。断口の開路術式はなおゆっくり動いている。誤った一槌で、二度と目覚めなくなるかもしれない。
僕は毎日、高級剣油を二瓶送る。
飲めない。少なくとも帳簿には残る。
八日目、十二都市代表が再び同じ卓に座った。
『炉火協約』は自治と相互開門だけを定めていた。先遣軍の一戦が隙間を晒した。共同調達を審査する責任者がいない。都市間防衛は臨時調整に頼り、帝国が一都市の産業を押し下げたとき、他都市に固定の援助手続きがない。
月泉城代表が最初に連合領の成立を出した。
帝国許可印の受入をいちばん早く主張した、その人間だ。
「当時の妥協が短期損失を避けられた、という考えは今もある」と彼は言った。「事実は、永久許可の代価を低く見ていたと証明した。だが新しい章程は保証せねばならない。総管理人でも、危険が見えたと言うだけで公開証拠と表決を飛ばしてはならない」
誰かが僕を見た。
「同意する」と僕は言った。
「まだ表決していない」
「なら僕の同意は個人意見として記せ」
章程は九日、話し合った。
晴風は首都になれない。輪番議会の第一站になるだけだ。十二都市は各一席の基礎票を持ち、人口関連事務には比例票を足す。小都市は晴風の一票で潰されない。大都市も多数の人間の代わりに永遠に払わなくていい。
共同議会が担当するのは四事だ。都市間道路と標準、共同防衛、貿易争議、災害救援。
糧食、住居、教育、地方産業はなお各都市が決める。
加入には現地の公開表決が要る。
退出もできる。ただし共同債務を清算し、道路、負傷者、外にいる住民の権益を前もって整えねばならない。
「連合領の最高職位は何と呼ぶ」とゴブリン記録係が聞いた。
領主を出す者がいた。執政官を出す者もいた。
僕は言った。「輪番召集人だ」
「椅子並べ係に聞こえる」
「もともと並べる人間が要る」
最終的に共同議会は各都市が選んだ代表で構成された。ルミラが晴風の首席議員になり、ガルドが工業標準委員会を主宰し、フィアが風路と龍運を担当し、セインは公開投票で初代共同防衛官に選ばれた。
セインは宣誓のとき、僕に跪かなかった。
紙の縁を揃え、章程どおりに読んだ。
「私は連合議会が法に従って出した防衛決定に従い、違法命令への拒否義務を留保する」
聞いたなかで、いちばん安心できる忠誠の言葉だ。
実際、忠誠の言葉ですらない。
十二都市の住民登録は戦後二ヶ月で十二万を超えた。
この数字は炉火から跳ね出てきたのではない。
十二万の違う暮らしの中に現れた。月泉城学校に徒弟が二クラス増え、断橋鎮新街の広い門に牛角水工が住み、魔導車の早番に客車四両を増結し、旧風笛亭の朝食パンが三籠から九籠になった。
新しい面倒の中にも現れた。
糧価が一割上がり、晴風の家賃が二割上がり、三都市が転入制限を求めた。共同議会は成立祭で覆い隠さない。先に臨時家賃申告と新穀倉融資を通し、それから祭の日付を決めた。
署名当日、十二都市は同じ旗を上げなかった。
各都市の旗はなお自分の席の後ろに掛かり、中央に十二条の接する道路を描いた地図を一枚敷いただけだ。
僕は晴風を代表して名を書いた。
王ではない。
十二都市の主人でもない。
初代輪番召集人であり、なお北塔の修理代を借りている宿屋の店主だ。
その夜、旧風笛亭は北塔のないまま再開した。
広間には十三卓しか置けず、より多くの人間が庭に座る。九十一の小さな灯が壁際に置かれ、この戦争で戻れなかった人間の場所を空けている。祝賀と追悼を二日に分けなかった。厨房の手が足りないからだ。生き残った人間は、なお飯を食わねばならないからだ。
ベリーは祭典ケーキを無事に届けた。
全員が分け終わるまで待ち、最後の一切れを取った。
フィアが隣に座り、新しい鍵を一本、僕の掌へ置いた。
「二号室の予備鍵。アランが目覚めたら、夜間の部屋回りはあなたよ」
「お前は」
「十二都市の無料延泊を、また代わりに約束しないよう、思い出させる係」
炉火が、風線でいっぱいの彼女の指を照らした。
答えようとしたとき、緊急反響レンガが鳴った。
レンガの中に先遣軍の声はない。
低く、はっきりした男が曜石帝国の詔を読む。
「十二の叛城は秩序を拒み、帝国道路を毀ち、帝国財産を抑留した」
「朕、オードラン、自ら西征する」
庭の上の月光が、一瞬暗くなった。
東の空に、存在してはいけない黒日が一つ昇る。光はない。内側へ回る暗い焔だけだ。十二座の帰巣炉が同時に縮み、卓辺の九十一の記念灯も東方へ傾いた。
アランのいる二号室から、折れた剣が寝台枠に当たる音がした。
反響レンガが最後の一句を言い終えた。
「黒日の至るところ、すべての私有炉火は、消える」




