冒険者も下水を直す
晴風総ギルドが成立した日、討伐任務は掲示壁の六分の一しか占めなかった。
残りは巨人の趾の測量、校正分銅の護送、断橋鎮の泥浚い、許可印の洗い出し、そして旧風笛亭から消えた掛布団三枚の捜索だ。
最後の項がいちばん賞金が高い。
布団はルミラが台帳に載せた雲毛の冬布団だからだ。
老冒険者ホークが壁の前で長いあいだ見ていた。
「昔のギルドは、俺が何を殺せるかしか聞かなかった」
カウンター後ろのセインが表を渡す。
「いまは等高線が描けるかも聞く」
「描けない」
「字は読めるか」
「少しは」
「なら見習い測量員を二人連れていける。原則として、出会った魔物を全部殺してはいけない。経路の記録は牙より高い」
ホークは任務書を持って去り、転職を強いられた屠龍英雄のような顔をしていた。
総ギルドを作ったのは、より大きな看板に替えるためではない。
十二都市にはもともと冒険者等級が十一種、死傷補償が七組、「行方不明がどれだけ続いたら任務失敗か」の定義が少なくとも三種あった。帝国商路が値を下げたあと、護衛の仕事は減り、建設現場は野外生存のわかる人間が足りない。討伐、救援、建設、輸送を、同じ都市間清算の体系へ入れる必要があった。
争いはまず戦闘冒険者から来た。
「橋直しが、なぜ山獣狩りと同じ級なんだ」と誰かが聞いた。
河妖技師がその場で断橋の図を広げた。
「橋下は洪水で、橋上は四百人が渡るからだ。洪水にだけ剣を振ってみろ」
二番目の争いは職人から来た。
ガルドは、化け物を斬ることしかできない人間に耐力構造を触らせない。
「勇敢は槌工証の代わりにならない。壁を壊すのも勇敢だ。弁償のときはいちばん静かになる」
そこで任務等級は危険級と技能級に分けた。危険級が保険と護衛を決め、技能級が検収の署名者を決める。上級剣士は排水隊を守れる。剣が速いからといって技師の印は押せない。
僕はこの条を支持した。
主な理由は、ガルドが「天野陸、単独上番禁止」の槌工記録も事例に添付したからだ。
総ギルド試運転の第一の大任務は、十二都市の許可印洗い出しだった。
三百四十七隊が隔魔粉、母尺、反響レンガを受け取った。羽民は高所から黒い術式の反射を探し、スライムが継ぎ目の泥を掃除し、術師が契約の流れを判断し、職人が分解と組立を担当する。各任務は少なくとも二職種が共同署名する。
初日の誤報は九百箇所を超えた。
鍋底、黒苺ジャム、ガルドが新しく塗った防錆塗料まで、許可印にされた。
二日目、ギルドはアランが複製した試験紋を足した。本物の許可印は試験紋に触れると東方へ偏って明るくなる。普通の黒汚れはならない。
誤報は七十六箇所まで落ちた。
三日目、ホークの小隊が廃料金所の下で許可印の中継箱を見つけた。箱の中に軍令はない。道路番号と起動槽の列だけだ。
セインは証拠品に列し、帝国の陰謀を掌握したとは発表しなかった。証拠が証明できるのは印があることまでだ。いつ、誰が使うかはまだ言えない。
「いま公表すれば、帝国は民生の防犯部品だと言う」と彼は言った。
「本当にそう見える」と僕は番号を見た。「いちばん危険なのは、平時には本当に防犯になることだ」
総ギルドは同時に負傷者転送制度を置いた。宿屋分駅は低価格ベッドを一層空け、病院は任務危険級で薬品を確保し、工房は都市間任務ごとに銅貨半枚を救援金として取る。
銅貨半枚の議論は二日続いた。
最後にアイザックが来た。
金穂商盟のかつての相手が、算盤を卓に置いた。
「人頭で取るな。任務額の千分の五だ。小さい任務は少なく、大きな隊商は多く出す。それから、帝国の倉敷無料は慈善じゃない。欠損でお前たちの経路習慣を買っている」
「なぜ助ける」
「連中は俺の隊商まで印持ち輸送隊にしたがっているからだ。独占は好きだ。他人に独占されるのは好きじゃない」
とても正直だ。
一週間後、魔導車第一段が正式に営業した。
乗客は工員、病人、商人、測量任務を受けた冒険隊二組。旧風笛亭は「早番起こしサービス」を増やした。フィアが風鈴を担当し、僕は一度で通り全部を起こした苦情を処理する。
総ギルドの最初の都市間救援も、その日に起きた。
断橋鎮上流の堤が裂けた。以前なら晴風が主力を出す。いまは現地ギルドが先に河妖を組んで水を封じ、石梯堡の爆破師が魔導車で機材を運び、羽民が風路に沿って根索を投下する。天野陸は現場にいなかった。堤は三時間で安定した。
反響レンガが結果を伝えたとき、議事堂で拍手が起きた。
僕は叩かなかった。
風鈴で割れた窓十二枚の修理代を計算していた。
夕方、ホークが任務を納めた。
山獣は一頭も狩っていない。巨人の寝返り区域を避けられる補修道を描き、雲毛布団を二枚取り戻した。
「三枚目は」
「巨人の耳の下だ」
ルミラは少し考えた。
「不可抗力損耗として登録する」
総ギルド成立後、いちばん早く通った検収だった。
深夜、僕はいつものように旅灯を見た。
十二都市の炉火は感知の中で、十二の違う色の灯のようだ。十一は明るい。一つだけ明滅している。
明滅しているのは南西の月泉城だ。帝国炉環を付けた、あの炉火。
僕は炉門で連絡を求めた。向こうは答えない。
二度目の請求で、その一点の炉光が内側へ縮んだ。
それから完全に消えた。




