炉火は命令を知らない
教団修士は廃陶窯に三晩住んだ。
最初の夜、迎火の礼をした。
二晩目、聖名を四百遍写した。
三晩目、十二種の香料を揃えて炉架へ倒した。
第三炉は灯らなかった。
近所は三日、洗濯物が干せなかった。
封鎖線の向こうで、修士たちが仮の敷きに座っているのが見えた。王都の聖堂から来て、荷物は整い、食物は足り、シーツは新しい。
だが誰もが、いつ帰れるかを聞いていた。
帰巣炉が住民と認めるのは、ともに飯を食い、本当に一晩泊まり、自分で明日も残りたいと願うことだ。
教団が終えたのは、いちばん命じやすい二項だけだった。
ヘルマーは家を増築させた。
ガルドがあの家を見れば、その場で解体を求めただろう。壁に排湿層がなく、屋根は歪んだ梁を一本共有し、二十室に窓は二枚しかない。
「住居ではない」と僕は看守将校に言った。「次の雨で崩れる」
「教団建築はお前の検収対象ではない」
「人に当たったら誰が負う」
長槍をより固く横たえる。
その午後、雨が降った。
東側第一列の屋根が漏れ、修士たちは盆を一列に置いた。夜、風が強くなり、共用の梁が断裂の音を出した。
僕とフィアは封鎖壁を越えた。
今度、セインはついてこなかった。
外で、危ない家へ緊急に入れる例外説明を用意していた。
アランが固着した後門を切る。
「左!」と僕は叫んだ。
フィアが風を屋根裏へ送り、沈む瓦をしばらく支えた。修士たちがベッドと箱を引き出し、最後の一人が敷居を越えたところで、屋根一列が泥水へ落ちた。
怪我はなかった。
アランの鞘を瓦が一枚かすっただけだ。
「吾が活路を開いたというのに、屋根で吾を襲うとは」
「屋根は教団に入っていない」
救い出された若い修士が濡れた布団を抱えて震える。
「教宗は、誠意をもって残れば聖火が受け入れると」
「残りたいか」
彼は城内の聖堂の方角を見た。
「母がまだあそこにおります」
「なら帰れ」
「命令です」
「炉火は知らない」
他の修士も荷物をまとめ始めた。
ヘルマーが着いたとき、仮の住人は半分出ていっていた。
雨のなかに立ち、金紋の長袍に泥がつく。
「点火の儀式を壊したな」
「家が先に崩れた」
「一時の不便は克服すべきだ」
煉瓦職人の一人が封鎖線の外から叫ぶ。
「六年直した窯だ!」
彼はタウル、ここの元の住人代表だ。
教団が入ったあと、煉瓦職人は東郊の馬小屋へ移された。三家族が一つの間仕切りを共有し、窯の粘土と道具は中に残ったままだ。
「戻りたいか」と僕は聞いた。
「戻りたい」
「炉種のせいか」
「窯がここにあるからだ。子供のベッドもある」
ヘルマーが振り返る。
「ここは聖所に徴用された」
タウルが捺印のある古い賃貸契約を掲げる。
「徴用補償の銅貨一枚も払っていない」
セインがやっと泥地を越えて着いた。
「調べた。摂政院が教団に認めたのは炉種の保管だけで、土地徴用は認めていない。原住人の追い出しは無効だ」
看守将校が文書を受け取り、表情がどんどん悪くなる。
「メルヴィン公爵の口頭命令が——」
「安置案の代わりにはならない」
雨がますます強くなる。
煉瓦職人は封鎖を突破しなかった。
路傍に棚を組み、普通の泥炉を二基立て、持ってきた餅を焼き始めた。
香りが陶窯へ流れる。
残っていた修士たちが顔を見合わせ、封鎖線を出た。
布を支える者。
濡れきっていない薪を渡す者。
タウルは餅を分け、何を信じているかは聞かなかった。
銀の匣の炉種に、はじめて温度が出た。
ヘルマーが匣の蓋を勢いよく開け、迎火の祈詞を唱え始める。
火は祭壇へ向かわなかった。
銀の匣の縁から転がり落ち、風に動かされる赤い実のように泥地を越え、二基の普通の泥炉のあいだに止まった。
煉瓦職人、修士、近くで雨を避ける者が火を囲み、夕飯を食い終えた。
タウルが皆に聞く。
「明日も窯を直すか」
「先に屋根だ」
「まだ住むか」
「補償ももらっていないのに、住まない理由がない」
炎が一気に棚の上を越えた。
第三炉が灯った。
ヘルマーは封鎖線の内側に立っていた。
儀式と銀の匣と、命令に従う人を用意した。
本当に炉火を灯したのは、追い出され、なお戻って屋根を直すと決めた人たちだった。
教団の炉奪取失敗はその日のうちに王都へ広まった。
ヘルマーはもう人を送って炉を運ばなかった。
やり方を替えた。
翌日、街の聖堂すべてに十二炉の古図が掛かる。説教する者は、古代戦争は十二都市が主従を分けなかったから道が崩れたのだと言う。
商人の手元にビラが届く。
|晴風が主炉なら、炉門の貨物はすべて先に晴風税を納める。|
地方領主へ届いた版はこう書いてあった。
|分火都市の住民は自動的に晴風の属民になる。|
南区の者がマーサに、なぜ第二炉が主炉になってはいけないのかと聞きに来た。
陶窯の者も、古代文献を最初に見つけた王都に他の炉火を管理する権利があるのかと聞いた。
晴風内部からも知らせが届く。
製造ギルドが、主炉は道路維持をいちばん負っているのだから統一の通行料を取るべきだと提案した。
まだ揃っていない十二炉が、文献に一度もなかった座を争い始めていた。
フィアが各地から届いた風の便りを食堂の長机に敷き詰める。
いちばん北の一通は塩沼港からだ。
潮が引いたあと顔を出した旧塔で、第四の炉種を見つけた。
信に忠誠の求めはない。主炉争いもない。
海水で皺になった一行だけがある。
|道は通していい。先に子供が通学する木橋を高くしてくれ。|




