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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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4/83

泣く鉱洞

ドワーフを呼びに出る前に、僕はまず、宿屋の店主らしいことをした。


部屋割りだ。


東側の客室を二部屋、さっき片付けた。床はまだ堅い。老人と子供が一室、ルミラがほかの灰耳の女性三人と一室。青年たちはこれまでどおり広間で寝る。フィアは階段脇の小さな物置だ。


彼女の部屋への要求は一つだけだった。


「窓は西向きにして」


「そこには窓がない」


「開ければいいでしょう」


「修繕の借金、銀貨二枚追加だ」


「なくてもいい」


十二と刻まれた古い鍵を渡す。


「扉はまだ閉まらない。鍵は先に持っておけ」


「なぜ?」


「住客には鍵があるべきだからだ」


彼女は鍵を朝日にかざして見て、真剣にポケットへしまった。


「屋根は私が償うわ」


「先に、二箇所目の賠償を作るな」


旅館のことはルミラに任せた。


僕とフィアとロックは西の鉱区へ向かう。ジェリーは気づかないうちに背負い袋へ潜り、青い頭をほんの少しだけ出していた。


アランはそれが気に入らない。


「なぜスライムには専用席がある」


「奴には剣鞘がないからだ」


「吾も袋に入れる」


「底を突き破る」


荒野の道は、地図より長かった。


午前はまだ腰までの草だ。午後になると地面が持ち上がり、青灰色の岩が土層から顔を出す。遠くの煙突は煙を吐いていない。鉱車の軌道は、野草に半分埋まっていた。


石背ドワーフの集落は、山麓にあった。


石の家は低くて頑丈で、門前には槌と酒杯の形をした風鈴が下がっている。だが通りには人ひとりいない。炉はすべて消えていた。鉄を叩く音さえ聞こえない。


ロックが声を落とす。


「引っ越したのか」


「カーテンが動いている」と僕は言った。


いちばん近い石屋の窓の隙間に、目が一つ見えた。


フィアが手を振る。


窓はすぐ閉まった。


アランが言う。「危険人物を見たあとの反応として妥当だ」


「誰のことだ」


「屋根を飛ばす方だ」


フィアが剣鞘を叩いた。


「剣も飛ばせるわよ」


集落の果てが鉱洞だ。


洞口に、新しい木札が釘で打たれていた。


|内に悪霊あり。入るべからず。夜間は絶対に入るべからず。とくに、悲鳴をあげる者を連れて入るべからず。|


「最後の一文は、あとから足したな」とロック。


「試したということだ」と僕は言った。


木札の向こうから、低い泣き声が聞こえる。


「うぅ——」


フィアが僕の外套の袖を掴んだ。


「怖がってるんじゃないわ。風術師は接触で隊列の位置を把握する必要があるの」


「今、風はない」


「だからこそ必要よ」


泣き声が、もう一度した。


今度は、岩壁の反対側に顔を押しつけた者のように近い。


「うぅ——うぅ——」


洞口脇の木桶が突然開き、髭の乱れたドワーフが中から立ち上がった。手には鉄槌。


フィアは、本当に悲鳴をあげた。


風が彼女の足元から弾け、木桶ごとドワーフを二歩押し戻す。


「やめろ!」ドワーフが叫ぶ。「吾は門番だ!」


「誰が桶に隠れて門を守るのよ」


「泣くものが外へ出ない。中へ入った者だけがやられる! だから外に隠れるに決まってるだろ!」


彼はガルドといった。石背鉱区の親方だ。


彼の話では、半年前、鉱洞が藍晶の層を掘り当ててから、毎晩、女の泣き声が響くようになった。松明は理由もなく消え、道具は翌朝、別の場所にある。度胸のいい鉱夫が数人、悪霊を罵りに入ったところ、泣き声が家までついてきて、一晩中鳴り続けたという。


「だから採掘を止めたのか」と僕は聞いた。


「まず七日止めた。そのあと祓魔師を呼んで銀貨十二枚使った。それから今まで止まっている」


「晶層はどこだ」


「主坑道のいちばん奥だ」


「案内してくれ」


ガルドの髭が、一度揺れた。


「お前たちは何をしに来た」


「屋根の壊れた宿屋がある。そちらが直せるときいた」


「だから先に悪霊を片づけるのか」


「少なくとも、外へ出る気になってもらいたい」


ガルドは僕を値踏みし、フィアを見る。


「彼女は大丈夫か」


「方向は保証できない。風は大きい」


「ちょっと」


ガルドは結局、ドワーフを三人集めた。


それぞれ鉄兜をかぶり、松明と槌を持つ。僕とフィアにも一つずつ渡された。


アランにも一つ。


「吾に兜は不要だ」


「鉱の中は落石がある」とガルド。


「剣に頭はない」


僕は鉄兜を剣柄にかぶせ、紐で締めた。


「今はある」


入洞すると、光はすぐ闇に吞まれた。


古い軌道が坑道を下り、空気は湿り、足元には時おり砕石が転がる。壁には十歩ごとに魔法灯がある。すべて消えていた。


フィアが杖で微光を灯す。


光は左へ半尺ずれた。


「照明まで偏るのか」


「左の人への配慮よ」


左にいたガルドが、右へ寄った。


泣き声が、さらに奥から来る。


「うぅ——」


ドワーフの一人が、すぐ足を止めた。


「また来た」


アランが鞘の中で、厳粛な剣鳴を出す。


「天野陸、吾を抜け」


「悪霊を斬れるのか」


「お前が先を歩くときの自信は増やせる」


奥へ近づくほど、泣き声は混ざる。


前にいることも、頭上にいることも、たまに背後から響くこともあった。ジェリーは背負い袋へ縮み、丸い気泡を二つ、布の縫い目に貼りつけている。


曲がり角を一つ過ぎたところで、フィアの杖が突然消えた。


闇が落ちてくる。


ガルドの後ろで、誰かが息を吞んだ。


岩壁の向こう側からも、同じ息吞みが聞こえた。


「真似している」とロック。


「声を出すな」ガルドが小さく言う。


僕たちは同時に息を止めた。


岩壁の向こうが、しばし静かになる。


それから、三度の打撃が響いた。


どん。


どん。


どん。


ガルドが槌を握りしめる。


「以前は叩かなかった」


僕はアランを抜いた。


銀白い剣身が闇の中に微光を浮かべる。坑道全体は照らさない。だが右側の岩壁に、細い金線が現れた。


扉の隙間のようだ。


「この後ろに道がある」とアラン。


「地図にはない」


「封じられているだけだ。存在しないわけではない」


僕は岩壁に顔を寄せる。


内側がまた三度叩いた。今度はずっと急だ。


ロックが耳を貼りつける。


「残響じゃない。人がいる」


ガルドの顔色が変わった。


「旧通気坑だ」


半年前、藍晶層を開いたとき、主坑道が一度崩れた。行方不明は出なかった。それで脇の小さな通気坑を行き止まりとして封じたのだ。


だが今、壁の向こうには確かに何かが叩いている。


金線を辿り、いちばん薄い位置を探す。


ガルドが槌を振り上げた。僕も予備の短い鶴嘴を握る。


帰巣炉は宿屋に遠く、確かに助けにはならない。


ガルドが先に一打。足は安定し、力は肩背から槌頭へ落ち、無駄がない。


僕は彼の姿勢に合わせて両足を直し、鶴嘴を振り下ろした。


石屑が飛ぶ。


ガルドが僕を一目見る。


「練習したか」


「していない」


「さっきの打ち方だ」


「盗み学びか」


「なら、料金だ」


二打目はそれほど正確ではなかった。親指の付け根が痺れる。


これは帰巣炉の新しい能力ではない。


見よう見まねだ。本当に使える域には、まだ遠い。


交代で岩壁を掘る。


最後の石板が倒れたとき、冷風が割れ口から猛然と噴き出した。


泣き声が突然大きくなる。


百を超える声が闇の中で同時に嗚咽した。


フィアの照明が再び灯る。


割れ口の向こうに、閉じ込められた鉱夫はいなかった。悪霊もいなかった。


岩壁一面に、半透明の青い結晶が生えている。


冷風が結晶の群れを抜け、晶片が互いに震え、高低の違う泣き声を出す。先ほどの打撃は、風に押されて壁へ往復していた旧鉱車だった。


ガルドは、長いあいだ立っていた。


「半年、石に脅されていたのか」


アランが言う。「正確には、音楽の才能がある石にな」


フィアはもう袖を離し、晶壁の前へ歩いていた。


目を閉じてしばらく聴き、ポケットから観測紙を一枚出す。


「石の問題じゃない」


「では何だ」とガルド。


「風口が狭すぎて、向きも乱れている。少し時間をくれれば、声を変えられる」


彼女は杖を上げた。


僕はすぐ押さえる。


「先に言え。崩れるか」


「崩れない」


「飛ぶか」


「鉱洞は飛ばない」


「昨日も屋根は飛ばないと思っていた」


彼女は考えた。


「じゃあ、いちばん小さな風からにする」


今度は、勘で魔力を増やさなかった。


地面にしゃがみ、紙片で風を一箇所ずつ試し、ガルドに指二本幅の小孔を二つ掘らせる。


最初の風を送ると、泣き声はしゃっくりになった。


二番目の風で、晶壁全体が金切り声をあげる。


フィアは耳を押さえ、孔をやり直した。


三度目、低い泣き声がゆっくり伸びる。


晶片が一枚、先に鳴った。


次いで二枚、三枚。


澄んだ音符が岩壁を層ごとに伝い、誰かが地底で巨大な竪琴を弾いているようだった。


鉱洞の外から、さらに多くのドワーフが音を辿って走ってくる。


ガルドは藍晶を撫で、目が少しずつ明るくなる。


「風鳴晶だ」


「高く売れるか」と僕は聞いた。


「先に金の話はするな」


彼は振り返り、僕の肩を掴んだ。


「お前の宿屋は、どれほどの屋根を直す」


「半分だ」


「塔は」


「半分崩れている」


「塀は」


「穴もある」


ガルドの笑みが、だんだん濃くなる。


「職人十二名。明朝着く」


僕も笑った。


「費用はどうなる」


「鉱を救った。工賃は無料だ」


宿屋の経験から言えば、相手が特定の項目を無料だと強調したときは、ほかの項目をすぐ確認した方がいい。


だが鉱洞の奥でまた音楽が響き、ドワーフたちはすでに歓声をあげていた。


ガルドが胸を叩く。


「屋根どころか、五十年立つ塔を建ててやる!」


翌日の朝、石材と道具を積んだ小車が十二台、旧風笛の門外に停まった。


ガルドはまず宿泊名簿を渡した。


それから、もっと長い紙をもう一枚。


いちばん下に太い筆でこうあった。


材料費、道具摩耗費、運送費、食費、酒代前払い。


合計、銀貨四十七枚。


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