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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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3/83

空から落ちてきた十九人目

宿屋を開いて四日目、僕は十八人の住民を持っていた。


ベッドは一床。


ルミラは、この二つの数字のあいだに少し問題があると考えた。


「少し、ではありません」宿泊簿をカウンターに広げる。「今夜、雨が降るかもしれません。老人が四人、子供が三人、ミロはまだ熱がある。厨房では寝られません。西の倉庫は粮を置きます」


「広間に八人敷ける」


「残りの九人は?」


「僕はカウンターで寝る」


ルミラが顔を上げる。


「陸店主、ご自分を数え忘れています」


これが、昔から会計向きではなかった具体例だ。


午前中、広間を四つに分ける。


炉火のそばを老人と子供に、西壁に荷物、東壁に草筵、カウンター前に油布で仮の着替え場。


部屋札はまだ使い道がない。それでも拭いて、一から十二まで引き出しに並べた。


空白の木札を、広間の中央に掛ける。


|宿泊規則:共同修繕。食料は記帳。退去は自由。|


灰耳の青年ロックが、最後の四字を見た。


「本当に、いつでも出られますか」


「チェックアウトの前に鍵を返せ」


「今、鍵はありません」


「なら、今はもっと自由だ」


彼は笑って、材木を運びに戻った。


ジェリーが灰掃除を担当する。


床を転がる先で、黴まで一層減る。問題は、ゴミと、今置いたばかりの雑巾を区別できないことだ。


口から雑巾を救い出したとき、庭の外で悲鳴がした。


声は、まず空にあった。


それから近づく。


「どいて——まだ急左折、習ってない——」


緑の影が屋根を越える。


直したばかりの瓦が、箒の尾で三枚飛ぶ。


影は裏庭の乾草に突っ込み、草屑が窓から広間へ入ってきた。


アランが壁際で震える。


「敵襲!」


「先に謝る敵は少ない」


裏庭へ走る。


乾草から、まず二切れに折れた箒が出て、古い尖り帽、最後に草の葉だらけの顔が出た。


少女は十九歳くらい、麦色の長い髪、緑のマントのポケットは紙で膨らんでいる。起き上がって最初にしたのは傷の確認ではなく、風に飛ばされた記録紙を掴むことだった。


「踏まないで! 今朝の横風よ」


足を上げる。


「今朝の横風が、煙突を壊しそうになった」


彼女は指差した方を見る。


屋根に、箒型の凹みが一つ増えていた。


「これは制御された着陸よ」


「どこが制御だ」


「着地点が、見える範囲にあった」


アランが小さく言った。「勇者の仲間になる素質がある」


少女は草から這い出し、帽子を直す。


「フィア。青麦飛行工房の見習い風術師。今は実習停止であって、解雇ではない。違いは大きいわ」


「違いは?」


「停止なら、試験に戻れる」


「なぜ停止」


彼女は屋根を見た。


「方向制御に、わずかな誤差がある」


ルミラが後ろから顔を出す。


「瓦、三枚」


「そう、わずか」


広間へ連れていき、水と宿泊簿を渡す。


「まず登録。一晩、銅貨五枚」


フィアはポケットをひっくり返し、銅貨二枚、青い羽根、酸い果乾しの半分、くしゃくしゃの観測紙を七団出した。


「仕事で部屋代を払える」


「何ができる」


「掃除、乾燥、ほこり払い、換気。薪ももっとよく燃やせる」


「戦闘は」


「風刃もできる。標的は、少し広く立ってくれた方がいい」


職業欄に「風術師」と書き、備考に「貴重品は術の風下から遠ざける」と足す。


「なぜここへ」


フィアが、急に真面目になった。


マントの内ポケットから擦り切れた地図を出し、旧風笛のある緩斜面を指す。


「天然の風眼」


「何だ」


「三つの季節風が、ここで向きを変える。西の鉱山から冷たい下降、北の荒野から暖かい上昇、南の青麦鎮は安定した低圧。記録が足りれば、高位術師がいなくても維持できる風路が描ける」


早口で、指が地図を南へ滑る。


「普通の荷車は飛べない。でも羽民と、軽い荷籠と、低位の飛行箒なら行ける。辺鄙な村の実や薬草が、道で腐らなくて済む。子供の頃の村は、毎年半分の収穫を、街へ運ぶ途中でダメにした」


「仕事を探しに来たわけじゃないんだな」


「仕事も探す。観測に一ヶ月要る。金がない」


正直だった。


銅貨二枚を押し戻す。


「一日試用。夕食前の濡れた服を乾かせば、今夜の宿泊に充てる。破損は別」


「決まり!」


ルミラが言う。「まずは一件から」


フィアはもう長机に立っていた。


広間にはマント十六、布団七、僕の着替えシャツ一枚。杖を上げたとき、灰耳族は手を止めた。


「緊張しないで。乾燥の呪は、いちばん基礎の風の生活術よ」


短い呪を唱える。


温風が杖先から出る。


一枚目のマントが膨らみ、水気がすぐ消えた。


「成功した」とロック。


フィアが得意げになる。


「基礎術に問題はないって言ったでしょ」


二枚目も乾く。


三枚目が縄のまわりを半周した。


四枚目で、温風が広間の梁にぶつかり、階段を巻いて上がる。


屋根の傷んだ一帯が、同時に締まるのを感じた。


「止めろ」


「すぐ。風路がちょっと——」


「フィア、止めろ」


逸れた気流を引き戻そうとする。


勘は、魔力を増やせと教えていたらしい。


濡れた服が一列、横に飛んだ。


布団がアランに貼りつき、マントがロックを包む。ジェリーは雑巾を追って階段を上がった。


風は三階で出口を見失う。


次の瞬間、屋根の半分が揃って「かちゃ」と鳴った。


瓦、木片、昨日敷いた油布が、空へ昇る。


巨大な欠けから、陽が広間へ落ちた。


濡れた服は、すべて乾いていた。


フィアは杖を上げたまま。


「乾燥の成果としては——」


ルミラが宿泊簿を胸に抱える。


「屋根が二分の一ない」


「古い梁が先に悪かったのよ」


目を閉じ、宿屋を感じる。


帰巣炉が傷みをはっきり見せる。垂木三本が折れ、北側の瓦面がずれ、煙突のそばにひび。倉庫の材では主梁を替えられない。


飛んだ屋根は林檎の木に落ち、どうにか回収できそうだった。


「賠償は」フィアが小さく聞く。


「まず服を拾え」


「それから?」


「一ヶ月、観測しろ」


顔を上げる。


「残っていいの」


「宿泊と修理は仕事から引く。毎日、本物の風を記録する。勘は禁止。術の前に風下を空けろ」


簿を指す。


「いいなら長期の試住にサイン。工房に戻るなら、いつでもチェックアウト」


フィアは筆を握ったまま、なかなか下ろさない。


「私、禍ばかりだと思わない?」


「少なくとも銀貨二十枚分の屋根を飛ばしたとは思う」


「……直球ね」


「でも、何を探しているかはわかっている。方向は練習できる。屋根も直せる」


紙に名前を書く。


夜、帰巣炉の金火が、小さく膨らんだ。


住民十九。


フィアはその数字に気づかなかった。


院の塀に座り、片手で帽子を押さえ、片手で今日の風を描いている。空白の小旗が三十七、足元に重なり、明日から緩斜面へ立てるつもりらしい。


拾った瓦を積み、顔を上げると、まだ書いていた。


「夕食だ」


「この一枚」


「スープが冷める」


「風は、食べ終わるまで待たない」


「厨房は八時までしか残さない」


彼女はすぐ塀から降りた。


夢は遠いかもしれない。夕食の時間は、比較的近い。


最後に大門を確認し、鍵を下ろす。


北西の風が、屋根のない三階を通り、低い嗚咽を出す。


ルミラが階段の口に立っていた。


「今の人数では、主梁は直せません」


「わかっている」


「あと二度雨が来れば、東壁もやられます」


古い倉庫で見つけた荒野図を広げ、西の山地を指す。


「石背ドワーフがそこで掘っています。石壁と梁がわかります」


地図の鉱洞のそばに、黒い墨で泣き顔が描いてあった。


フィアが覗き込む。


「工房で聞いた。半年前、鉱洞で悪霊が出た」


外の風が破れた頂を抜け、また嗚咽する。


アランは今夜、鞘の中で寝ると要求した。


頭上の二つの月を見る。


十九人目が泊まって一日も経っていない。


最初の外出依頼ができた。


幽霊の出る鉱洞へ行き、人を呼んで、屋根を直してもらう。


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