空から落ちてきた十九人目
宿屋を開いて四日目、僕は十八人の住民を持っていた。
ベッドは一床。
ルミラは、この二つの数字のあいだに少し問題があると考えた。
「少し、ではありません」宿泊簿をカウンターに広げる。「今夜、雨が降るかもしれません。老人が四人、子供が三人、ミロはまだ熱がある。厨房では寝られません。西の倉庫は粮を置きます」
「広間に八人敷ける」
「残りの九人は?」
「僕はカウンターで寝る」
ルミラが顔を上げる。
「陸店主、ご自分を数え忘れています」
これが、昔から会計向きではなかった具体例だ。
午前中、広間を四つに分ける。
炉火のそばを老人と子供に、西壁に荷物、東壁に草筵、カウンター前に油布で仮の着替え場。
部屋札はまだ使い道がない。それでも拭いて、一から十二まで引き出しに並べた。
空白の木札を、広間の中央に掛ける。
|宿泊規則:共同修繕。食料は記帳。退去は自由。|
灰耳の青年ロックが、最後の四字を見た。
「本当に、いつでも出られますか」
「チェックアウトの前に鍵を返せ」
「今、鍵はありません」
「なら、今はもっと自由だ」
彼は笑って、材木を運びに戻った。
ジェリーが灰掃除を担当する。
床を転がる先で、黴まで一層減る。問題は、ゴミと、今置いたばかりの雑巾を区別できないことだ。
口から雑巾を救い出したとき、庭の外で悲鳴がした。
声は、まず空にあった。
それから近づく。
「どいて——まだ急左折、習ってない——」
緑の影が屋根を越える。
直したばかりの瓦が、箒の尾で三枚飛ぶ。
影は裏庭の乾草に突っ込み、草屑が窓から広間へ入ってきた。
アランが壁際で震える。
「敵襲!」
「先に謝る敵は少ない」
裏庭へ走る。
乾草から、まず二切れに折れた箒が出て、古い尖り帽、最後に草の葉だらけの顔が出た。
少女は十九歳くらい、麦色の長い髪、緑のマントのポケットは紙で膨らんでいる。起き上がって最初にしたのは傷の確認ではなく、風に飛ばされた記録紙を掴むことだった。
「踏まないで! 今朝の横風よ」
足を上げる。
「今朝の横風が、煙突を壊しそうになった」
彼女は指差した方を見る。
屋根に、箒型の凹みが一つ増えていた。
「これは制御された着陸よ」
「どこが制御だ」
「着地点が、見える範囲にあった」
アランが小さく言った。「勇者の仲間になる素質がある」
少女は草から這い出し、帽子を直す。
「フィア。青麦飛行工房の見習い風術師。今は実習停止であって、解雇ではない。違いは大きいわ」
「違いは?」
「停止なら、試験に戻れる」
「なぜ停止」
彼女は屋根を見た。
「方向制御に、わずかな誤差がある」
ルミラが後ろから顔を出す。
「瓦、三枚」
「そう、わずか」
広間へ連れていき、水と宿泊簿を渡す。
「まず登録。一晩、銅貨五枚」
フィアはポケットをひっくり返し、銅貨二枚、青い羽根、酸い果乾しの半分、くしゃくしゃの観測紙を七団出した。
「仕事で部屋代を払える」
「何ができる」
「掃除、乾燥、ほこり払い、換気。薪ももっとよく燃やせる」
「戦闘は」
「風刃もできる。標的は、少し広く立ってくれた方がいい」
職業欄に「風術師」と書き、備考に「貴重品は術の風下から遠ざける」と足す。
「なぜここへ」
フィアが、急に真面目になった。
マントの内ポケットから擦り切れた地図を出し、旧風笛のある緩斜面を指す。
「天然の風眼」
「何だ」
「三つの季節風が、ここで向きを変える。西の鉱山から冷たい下降、北の荒野から暖かい上昇、南の青麦鎮は安定した低圧。記録が足りれば、高位術師がいなくても維持できる風路が描ける」
早口で、指が地図を南へ滑る。
「普通の荷車は飛べない。でも羽民と、軽い荷籠と、低位の飛行箒なら行ける。辺鄙な村の実や薬草が、道で腐らなくて済む。子供の頃の村は、毎年半分の収穫を、街へ運ぶ途中でダメにした」
「仕事を探しに来たわけじゃないんだな」
「仕事も探す。観測に一ヶ月要る。金がない」
正直だった。
銅貨二枚を押し戻す。
「一日試用。夕食前の濡れた服を乾かせば、今夜の宿泊に充てる。破損は別」
「決まり!」
ルミラが言う。「まずは一件から」
フィアはもう長机に立っていた。
広間にはマント十六、布団七、僕の着替えシャツ一枚。杖を上げたとき、灰耳族は手を止めた。
「緊張しないで。乾燥の呪は、いちばん基礎の風の生活術よ」
短い呪を唱える。
温風が杖先から出る。
一枚目のマントが膨らみ、水気がすぐ消えた。
「成功した」とロック。
フィアが得意げになる。
「基礎術に問題はないって言ったでしょ」
二枚目も乾く。
三枚目が縄のまわりを半周した。
四枚目で、温風が広間の梁にぶつかり、階段を巻いて上がる。
屋根の傷んだ一帯が、同時に締まるのを感じた。
「止めろ」
「すぐ。風路がちょっと——」
「フィア、止めろ」
逸れた気流を引き戻そうとする。
勘は、魔力を増やせと教えていたらしい。
濡れた服が一列、横に飛んだ。
布団がアランに貼りつき、マントがロックを包む。ジェリーは雑巾を追って階段を上がった。
風は三階で出口を見失う。
次の瞬間、屋根の半分が揃って「かちゃ」と鳴った。
瓦、木片、昨日敷いた油布が、空へ昇る。
巨大な欠けから、陽が広間へ落ちた。
濡れた服は、すべて乾いていた。
フィアは杖を上げたまま。
「乾燥の成果としては——」
ルミラが宿泊簿を胸に抱える。
「屋根が二分の一ない」
「古い梁が先に悪かったのよ」
目を閉じ、宿屋を感じる。
帰巣炉が傷みをはっきり見せる。垂木三本が折れ、北側の瓦面がずれ、煙突のそばにひび。倉庫の材では主梁を替えられない。
飛んだ屋根は林檎の木に落ち、どうにか回収できそうだった。
「賠償は」フィアが小さく聞く。
「まず服を拾え」
「それから?」
「一ヶ月、観測しろ」
顔を上げる。
「残っていいの」
「宿泊と修理は仕事から引く。毎日、本物の風を記録する。勘は禁止。術の前に風下を空けろ」
簿を指す。
「いいなら長期の試住にサイン。工房に戻るなら、いつでもチェックアウト」
フィアは筆を握ったまま、なかなか下ろさない。
「私、禍ばかりだと思わない?」
「少なくとも銀貨二十枚分の屋根を飛ばしたとは思う」
「……直球ね」
「でも、何を探しているかはわかっている。方向は練習できる。屋根も直せる」
紙に名前を書く。
夜、帰巣炉の金火が、小さく膨らんだ。
住民十九。
フィアはその数字に気づかなかった。
院の塀に座り、片手で帽子を押さえ、片手で今日の風を描いている。空白の小旗が三十七、足元に重なり、明日から緩斜面へ立てるつもりらしい。
拾った瓦を積み、顔を上げると、まだ書いていた。
「夕食だ」
「この一枚」
「スープが冷める」
「風は、食べ終わるまで待たない」
「厨房は八時までしか残さない」
彼女はすぐ塀から降りた。
夢は遠いかもしれない。夕食の時間は、比較的近い。
最後に大門を確認し、鍵を下ろす。
北西の風が、屋根のない三階を通り、低い嗚咽を出す。
ルミラが階段の口に立っていた。
「今の人数では、主梁は直せません」
「わかっている」
「あと二度雨が来れば、東壁もやられます」
古い倉庫で見つけた荒野図を広げ、西の山地を指す。
「石背ドワーフがそこで掘っています。石壁と梁がわかります」
地図の鉱洞のそばに、黒い墨で泣き顔が描いてあった。
フィアが覗き込む。
「工房で聞いた。半年前、鉱洞で悪霊が出た」
外の風が破れた頂を抜け、また嗚咽する。
アランは今夜、鞘の中で寝ると要求した。
頭上の二つの月を見る。
十九人目が泊まって一日も経っていない。
最初の外出依頼ができた。
幽霊の出る鉱洞へ行き、人を呼んで、屋根を直してもらう。




