先に泊めて、それから依頼
冒険者が晴風を締め出されて三日目、旧風笛は冒険者で満室だった。
任務を受けに来たのではない。
チェックアウトに来たのだ。
「北の護衛へ行けば経歴が認められず、戻っても銀牌に上がれない」隻眼の弓手が鍵を置く。「ここの湯は気に入っている。五年の記録を賭けられない」
「保証金は銅貨二枚、部屋代は今日まで」
「引き止めないのか」
「引き止めて、金穂が経歴を補ってくれるか」
彼は黙った。
銅貨を押し出す。
同じ日にベッド二十七床分が退室した。宿屋は急に空き、厨房が煮た朝食六十食は工事現場へ送るしかなかった。
金穂は冒険者が晴風へ来るのを禁じていない。
来た者一人ひとりに、自分の選択の対価を、見える形で払わせているだけだ。
晴風には、彼らが本当に要る。
路掃きで見つかった魔物の巣を処理し、商隊には護衛が要り、新しい移住で常住人口は八百を超え、治安と野外救援をセインの自衛隊だけに預けられない。
商業ギルドは任務報酬を上げろと提案する。
「青麦ギルドより三割出せば、来る者はいる」
ルミラが聞く。「金はどこから」
「護衛料だ」
「運賃が上がれば、協同組合の月豆はまだ売れるか」
セインは王都へ経歴封鎖が違法だと申し立てろと主張する。
「再審はどれくらい」
「早くて三ヶ月」
フィアが空の卓にうつ伏せになる。
「なら自分で冒険者ギルドを作る。経歴は自分で記す」
隻眼の弓手はまだ出ておらず、聞いて首を振る。
「晴風が自分で出す銀牌は、鎮を出たら誰も認めない」
需要は看板を掛けることではない。
冒険者が任務を引き受け、負傷や失敗ですぐすべてを失わないことだ。
旧風笛の空いた二階を、臨時の冒険者宿舎にする。
「晴風の公共任務を受けるなら、前夜のベッドは半額。護衛中に負傷すれば、治療期の最初の三晩は無料」
ルミラがすぐ反対する。
「無料の部屋代は誰が出す」
「鎮庫だ」
「鎮庫は今、道を直し、学校を建てている」
「ギルドは後で任務から歩合を取る」
「後では、今日の勘定は済まない」
彼女の言うとおりだ。
同僚を全鎮に替え、自分の融通の勘定を払わせそうになった。
最後の規則はこう直す。依頼人が任務総額の五パーセントを救助金へ入れる。ギルドは収入を一件ずつ公開する。宿屋は原価のベッドだけ出し、無制限の延泊は持たない。重傷の救助は医務室と三ギルドが共同で審査する。
「熱血が足りない」フィアが言う。
「帳簿は普通、熱血ではない。燃えているときを除く」
最初の募集に十二人が来た。
六人は旧ギルドに経歴を止められた若い冒険者、三人は短工賃だけ欲しい者、二人は牛角族の住民で運搬から転じたい者、最後の一人が隻眼の弓手だった。
「出ていくんじゃなかったのか」
「青麦の宿屋は、ここより安くない」
「正直は良い癖だ」
最初の任務を壁に貼る。路傍の長牙兎の掃除、学校の材木護衛、行方不明の綿雲羊の捜索、夜間の倉巡り。
任務はすぐ奪い合いになった。
若者は護衛と討伐を選び、倉巡りは誰も取らず、綿雲羊の捜索は職業の印象を損なうと思われた。牛角族の新人は報酬がいちばん高い材木護衛を取ったが、路が細い橋を通るのを見ていなかった。
初日の実行、長牙兎の任務は三人を鎮へ追い返した。
材木車は橋で止まる。
綿雲羊は自分で戻り、ついでに探していた冒険者を二人連れてきた。
「ギルド初日の完了率は四分の一」セインが記録する。「完了した一件は、職員が自ら完了したものではない」
「羊も晴風の住民の一部よ」フィアが言う。
「炉火は認定していない」
「明日も残ると言う」
「柵が閉まっているからだ」
失敗は戦力不足ではない。任務の情報と人員の技能が、まったく噛み合っていない。
翌日、紙を先に奪わせない。
依頼には路程、リスク、必要な技能、予定時間、取消条件を明記する。冒険者は自分ができることと、できないことを書く。ギルドは推薦するだけで、編成を強制しない。
隻眼の弓手は追跡ができるが、近接は不得手だ。
牛角の新人は力があるが、細い橋を通ったことがない。
灰耳の若者ロックは荒原の植物に詳しく、自衛隊へ入りたいが剣術の考査はまだ通っていない。
三人で組んだあと、二度目の長牙兎掃除は正面から追わず、巣を見つけ、穴を二箇所封じ、群れを道から遠い新しい草地へ導いた。
「討伐数が書いてない」旧ギルドから来た若者が不満を言う。
セインが任務条項を繰る。
「依頼の目標は道路の安全だ。兎の牙を得ることではない」
材木は小さな車に分けて橋を通す。牛角の運転は平路の重載だけを持つ。羽民が先に橋幅を知らせ、河妖が橋際に水索を張って横転を防ぐ。
その日、四件の任務は全部完了した。
分配は旧風笛の広間に貼る。依頼金、隊員給与、装備の損耗、ギルド歩合、救助金。銅貨一枚も隠さない。
銀牌の昇級はない。
だが冒険者は、なぜこの金を得たのかが見える。
三日目、チェックアウトした若者のうち二人が戻ってきた。
五日目、北西の旧ギルドの銅牌隊が一隊、宿泊に来た。任務は受けず、晴風の負傷者救助だけを使い、霧谷で落ちた仲間を医務室へ担ぎ込む。
規則では、彼らは晴風ギルドの成員ではない。治療は無料にできない。
受付が少し迷う。
僕は先に負傷者を寝かせ、水を出し、それから費用を話す。
隊長が言う。「銀貨三枚しかない」
医師の見積もりは五枚だ。
「三枚を先に」と僕は言った。「残り二枚は回復期内の軽い任務で返すか、元のギルドへ負担を知らせるか。自分で選べ」
「晴風に入らなくてもいいか」
「ベッドと救助は、募集契約ではない」
その夜、巡房をする。
負傷者は一階の広い扉の部屋へ入れ、担架の出入りを楽にする。夜帰りの護衛は防音室。羽民二人が屋根の横架で寝ると言い張り、少なくとも緊急の起こし方を登録しろと求めた。
廊下の突き当たりで、フィアが各扉に風鈴を掛けている。
「何をしている」
「火災の風鈴。ギルドの人が多い。ジェリーが一つずつ叩くわけにいかない」
ジェリーが水桶から頭を出し、「ぽ」と鳴いた。賛成のようだった。
一ヶ月後、晴風ギルドに冒険者百六人が登録された。
うち長期住民は四十一人だけだ。ほかは元のギルド身分を残し、晴風を通るとき公開任務だけを受ける。誰からも奪っていない。旧ギルドの経歴封鎖は効きにくくなり始めていた。商隊が気にするのは、護衛が約束どおり着くかどうかだ。
新しい校舎も、北門の内側で着工した。
ガルドが予算を抑える方法は、予定の三階を二階にし、二階どちらにも三階用の荷重柱を残すことだった。
「これを抑制と言うのか」
「後で増築するときの節約だ」
基礎を掘った初日、職人は記録にない黒石板を掘り当てた。
二日目、石板全体が掘り出される。広さは庭の半分ほどだ。中央に車輪と道路の印が刻まれ、縁に下向きの扉の隙間がある。
アランが石板に近づき、金光が隙間から滲む。
「下に道がある」とそれが言う。
ガルドが槌で叩く。
地底の奥で、何年も眠っていた巨大な輪が、一目盛り回った。




