↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/83

自分たちの車輪

セインは差押え文書を持って、青麦鎮へ行った。


二日後、別の文書を持ち帰った。


さらに厚い。


「追及は失敗した」紙の端をカウンターに揃える。「金穂北倉は、青麦北口で唯一の王国認証検査場を持つ。北西貨物補充条例により、入場検査していない貨物は暫定差押えできる」


「補充条例は誰が出した」


「金穂商盟だ」


「誰が承認した」


「金穂の糧運に頼る地方領主、七人」


「誰が取り消せる」


「王都交通庁。通常の再審は六ヶ月」


残りは七十九日だ。


法は無効になっていない。


車より遅いだけだ。


車夫十二人は旧風笛に住み、荷を待っている。荷は押さえられ、手数料は出ない。牛を飼い、馬草を買うのは毎日続く。


三日目の朝、いちばん若い車夫が鍵をカウンターへ戻した。


「チェックアウトする」


「荷はまだ戻っていない」


「金穂の者が昨夜、来た。入れれば、差押え記録は取り消せる」


ほかの者は、彼を罵らなかった。


家族四人が収入を待っている。勇気では牛は飼えない。


保証金を返し、約どおり二晩分も免除する。さらに四人の車夫が続いてチェックアウトし、十二台のうち七台が残った。


鍵がカウンターへ落ちる、その一打ずつが、値下げ票より効いた。


「追及は続ける必要がある」セインが言う。「だが道路期限を再審に預けてはいけない」


「なら自分たちの検査場を造る」ガルドが言う。


「認証に少なくとも三ヶ月要る」


「金穂の倉庫を奪う」ガンドが言う。


「原則として許されない」


「次のページに例外はあるか」


「ない」


フィアが窓から顔を出す。


「空から運ぶ。金穂は地上の車を見る。箒は見ない」


「月豆五十袋なら、羽民三十人が八往復」ランジャがゆっくり計算し終える。「人が落ちる」


どの案も、一つの問題を解決し、二つ作る。


庭に残った七台を見る。


「晴風は自分の車隊を作る」


商業ギルドの代表が首を振る。


「車が足りない。駄獣が足りない。差押えのリスクを負う者もいない」


「なら青麦北口は通らない」


旧王道の終点は、青麦鎮ではない。


北へ霧谷を抜け、ドワーフ山城へ直結する。道はまだ直っていないが、旅灯とアランは前の二十一里を指せる。


最初の一便が通れば、晴風はすべての荷を金穂唯一の倉門へ押し込む必要がなくなる。


車隊を組むのは、実際より簡単に聞こえる。


牛角族は重車を引くのを厭わないが、駄獣扱いされるのは厭う。正式な運転手当と、車両の決定権が要る。


羽民は案内を厭わないが、濃霧の低空飛行は拒む。


河妖は水膜で鮮度を保てるが、各車に水槽を載せろと言う。重量で荷が二割減る。


商業ギルドは商品を多く積みたがる。


ルミラは十日分の口糧を必ず持てと譲らない。途中の補給は当てにできない。


ガルドは各車に予備輪を一つずつ増やせと言う。


「水、糧、輪を積んだら、何を積む」会計が聞く。


「生きて戻る車夫を積む」と僕は言った。


最初の試し積みで、六台が現場で過重になった。


ガンドが先頭車を北門から出した途端、平路で車軸が呻く。後続が避けようとして水槽をひっくり返し、河妖職人の鮮度保持の水膜が道いっぱいに広がり、見物の二人を月豆畑へ滑り込ませた。


ルミラが畦に立ち、口調は相変わらず穏やかだ。


「今夜、シーツを洗う人は三名に増えます」


荷を全部卸して、分け直す。


すべての車が、すべての機能を持たなくていい。


重貨車二台は牛角が運転し、煉瓦と道具を積む。糧車二台は河妖の水槽で鮮度を保つ。修理車一台はガルドの道具と予備輪。補給車一台は灰耳族が糧を見る。最後の一台は三割を空け、負傷者と故障の転送専用にする。


羽民は地面すれすれで先導せず、見通しのいい高所から色つきの路標を落とす。フィアは風向きで発着時刻を決め、一人ひとりの案内はしない。


「先頭車の上を、ずっと飛べる」


「お前は風路の全体図も描く必要がある」


「二つはぶつからない」


「前回、ぶつからないと言ったとき、宿屋は屋根の半分を失った」


彼女は二秒、黙る。


「今度は幌一枚まで」


セインが、晴風車隊の最初の章程を書く。


運賃は公開。


運転、案内、鮮度保持、修理は別々に給与を数える。


荷主が商品リスクを持ち、車隊が操作過失を持ち、天候リスクは公共保険金が半分を払う。どのギルドも全車両を独占できない。緊急の糧運が優先。


「保険金はどこから」と僕は聞く。


「運賃ごとに二十分の一を取る」


「最初の一便に収入はない」


「鎮庫が金貨一枚を立て替える」


ルミラが帳を繰る。


「多くて銀貨五枚。道路の資金を、一便に全部預けられない」


足りない分は僕が持つ、と言いかけた。


フィアが先に筆で手の甲を叩く。


「また全部の車輪が壊れないと保証するつもり?」


「違う」


「盃を拭く速さが上がった」


盃を置く。


最後に、製造、農業、商業の三ギルドが銀貨二枚ずつ、鎮庫が銀貨五枚、参加する車夫は給与の一割を延払いで出資した。誰も家計の全部を預けず、成功のあとで車隊を独占できる者もいない。


七台を積み直す。


ガルドが車軸を検め、河妖職人が水槽を見、羽民が幌に晴風の風標を塗る。ベリーが横に赤い火を足したがり、全員一致で否決された。荷がすでに燃えているように見えるからだ。


出発前夜、旧風笛は二階を全部車隊に空けた。


部屋は職務で分け、種族では分けない。夜航の羽民はいちばん静かな防音室、牛角の運転は広い扉の部屋、河妖職人は浴室に近い二室。七号が白楊前駅から分駅登録の書式を一式送り、危険物欄まで残してあった。


アランはそれを見て、たいへん怒った。


「なぜ車隊全部で、吾だけが単独登録なのだ」


「ベリーが行かないからだ」


厨房は未明三時に火を入れて飯を作る。


ルミラが十日分の口糧を七つに分け、各車が予備糧を勝手に開くのを禁じた。ボニーはまだ晴風に来ていない。菓子は宿屋の料理人が作り、見た目は普通だったが、ベリーが門口で番をして、味は悪くないと証明していた。


隊員一人に、旅灯の印を刻んだ木札を渡す。


「はぐれたら、まず止まれ。勝手に探すな。羽民の青煙は路通、赤煙は引き返せ。アランは道を開ける。崖の上に橋は出せない」


「吾がよく橋にされそうな言い方だ」


ガルドが鞘を叩く。


「焦るな。道路工事では必ず要る」


明け方、七台が晴風を出る。


金塗りはなく、幌も揃っていない。牛角の運転席は広くなり、羽民の高架の横木は物干しのように見え、河妖の水槽は一路、細い水光を揺らした。


たいへん不揃いだ。


だがどの車輪も、このリスクを負うと決めた者のものだった。


前の二十一里は順調に通る。


白楊前駅が輓牛を替え、七号が各車に最初の分駅印を押す。その先、旧王道はまだ掃いていない霧谷へ入る。


夕方、アオバが車隊の最後の短い箋を持ち帰る。


紙には、ガンドの歪んだ一行だけがあった。


|霧が動く。道もついて動く。今夜、二盞目の灯がない。|


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。