最初の旅灯
暖炉の火は、ほんの少ししか明るくならなかった。
堅い餅を一枚、焼くのに足りる。
二十七人が囲んで、食べていいか争うのにも、ちょうど足りる。
「古代術式の反応よ」フィアが炉の前にしゃがみ、鼻先が危うく火に触れる。「食べ物を勝手に入れないで」
ガルドはすでに一片を割っていた。
「味は変わらん」
アランが厳かに言う。「四十年前へ送られたら、本駅の郵便車を急かしておけ」
火は広がらず、帰巣炉のように建物全体を感じさせもしなかった。頭の中に、ごく薄い方向だけが残る。旧風笛は南にあり、道は安全だ。
夜が明けても、その感覚は残っていた。
「分炉ではない」と僕は言った。「路灯に近い」
七号がカウンター後ろに立つ。
「本駅の暖炉の設計用途には、夜間誘導が含まれる」
「これから旅灯と呼ぶ」
「名称変更には授権が要る」
「臨時の別名だ」
「許可する」
出発前、チェックアウトをする。
七号の点検は細かい。手拭い二十三枚、鍵十二本、ガンドがつなぎ合わせたベッド二床、そしてアランがこっそり枕元の棚へ入れろと要求した高級剣油。
「三号室で遺失物を発見した」それがフィアに紙の巻を渡す。
「遺失じゃない。室内の戻り風を測るために、わざと置いたの」
「旅客が退室後に携帯していなければ、遺失だ」
「じゃあ今、出なければ?」
僕は彼女を扉の中から引き出す。
「あとで戻る。先に七号に預かってもらえ」
七号が遺失札に書く。|用途不明、主人が遺失を拒否する紙一巻。|
旅灯は道を直さない。糧も作らない。
だが、それが伝える方向に沿えば、帰りに結界へ埋まった路盤から一度も外れなかった。アランが石板を探し、フィアが風旗を立て、ガルドが悪い区間を標す。速さは昨日の二倍だった。
需要が変わった、ということだ。
道を一度に敷き切る必要はない。区間ごとに方向を示し、風雨を凌ぎ、先を確認できる足場があれば、車隊は通行しながら維持できる。
晴風へ戻り、この考えを臨時議会へ持ち込む。
商業ギルドは旅灯を有料倉庫へそのまま入れたがった。
「倉敷料を払った者だけが方向を知る。収入は安定する」代理会計が言う。
ルミラが反対する。「命を救う路標を、先に積荷表で調べてはいけない」
ガルドは全石の分駅を造り、二層の矢塔と時刻を告げる便所を付けろと言う。
「金は?」と僕は聞く。
「毎回、俺の台詞を先に言うな。仕事がしにくい」
フィアは旅灯を高塔へ掛け、羽民が空から見えるようにしろと主張する。
「暖炉を塔の頂へ?」セインが聞く。
「煙道を風標にできる」
最初の試験で、鎮北の空地に仮の石炉を積む。
住民十八人が一緒に食事し、一晩泊まり、翌日も晴風に残ると言った。条件は主炉の認定と同じなのに、火はまったく反応しない。
フィアが風を足す。
ガルドが風鳴晶を替える。
ベリーが自ら火を噴き、昼食の鍋底を焼き抜いた。
「火の問題ではない」僕は一面のスープを見る。「何かが足りない」
アランが言う。「白楊前駅は、本物の駅舎だ。通る者を待つ人がいて、ベッドがあり、登録があり、閉じられる扉がある」
空地の石炉には何でもある。それを住処と呼ぶ人間だけがいない。
「旅灯は灯台だけではだめです」ルミラが言う。「人が手入れする足場でなければ」
案は、すぐ高くなった。
分駅三箇所にベッド、井戸、糧倉、厩、管理者が要る。晴風は今、道すら直せない。
「既存の建物を先に使える」セインが古い地図を広げる。「白楊前駅が最初だ。白楊河口には廃税小屋があり、霧谷西口には猟師小屋がある」
「税小屋にベッドはない」ガルドが言う。
「猟師小屋に井戸はない」ルミラが言う。
「だから先に手紙を送る。誰が手伝えるか確かめる」フィアが屋根を指す。「空路は地面の完成を待たない」
その午後、羽民三十人が旧風笛へ面接に来た。
第一巻の移住隊について定住した者たちだ。普段は工房で軽い荷を運び、迷った綿雲羊を探す係もいる。先頭の羽民はランジャといった。右翼に風切が二本欠け、話す速さはセインより遅い。
「郵送隊は作れる」彼女は言う。「ただし件数払いには応じない」
商業ギルドの者が、言葉を失う。
「多く送れば多く稼げる。よくないか」
「暴風の日がいちばん難しい。件数はいちばん少ない。件数払いなら、安全点検を避けろと人を追い込む」
若い羽民のアオバは反対した。「固定給はのろい郵便を養う。私は件数払いがいい」
三十人が、先に自分たちで喧嘩を始めた。
ランジャは安全を譲らず、アオバは効率を譲らず、切手を描くだけで遠路は飛びたくない羽民も二人いた。種族の利点は、統一した答えを出してくれなかった。
最初の勤務表も失敗する。
アオバは手紙を三通多く送るため、日没前に白楊前駅を二往復した。二度目の帰りに、宿屋のシーツを干す縄へ突っ込み、シーツ六枚を抱えてジェリーの掃除桶へ落ちた。
ジェリーの「ぽ」は、たいへん不満だった。
フィアが彼の翼を見る。
「もう一便飛べば、明日は足で送ることになる」
最後に、基礎日給に遠距離手当を足し、暴風と夜航は別に数えることにした。一人一日、遠距離は最大二区間。フィアが風況で通行札に署名する。郵送、道路観測、分駅補給はまとめて組み、件数を増やすための重複飛行はしない。
「勤務は公開、手当も公開」セインが規約に印を押す。「例外条項:緊急救援に上限はない。ただし帰還後は強制休息」
アオバが長いあいだ見る。
「三便は飛べると思う」
ランジャがゆっくり言う。「先にシーツ六枚を弁償しろ」
郵送隊ができた最初の夜、旧風笛に空き部屋はなかった。
三階の雲毛置き場を空け、低いベッドを十五床敷く。羽民の睡眠には横木が要る者もいれば、敷布団を好む者もいる。ガルドが夜通し木枠を二列釘打ちし、急ぎ工事として銀貨一枚を請求した。
「鎮庫が出す」
「今回は値切らないのか」
「明朝、三十通が出発する。荷物を掛ける鉤を、もう一列足せ」
一人ずつ鍵を渡し、緊急連絡先と食事の禁忌を登録する。ランジャは窓際を望み、アオバは干す縄の近くを固く拒んだ。切手を描きたかった二人の羽民は信袋の整理を任せられ、旧風笛の屋根が漏る絵柄を本当に描いた。
「なぜ漏りを描く」と聞く。
「わかりやすいから」
反論できない。
翌日、三十の影が宿屋の屋根から上がる。
白楊河口へは税小屋改修の寸法を運び、霧谷の猟師へは協力の誘いを運び、青麦鎮へは最初の直通便を運んだ。旅灯の微光が旧王道に沿って点き、羽民が風の中で路標を一つずつ校正する。
十日目、晴風は二十一里の道を掃き出した。
白楊前駅が、本物の旅人を迎え始める。七号が最初の営業票を送り、宿泊三人、馬換え一頭、危険物アランを普通荷物に分類するのを一度拒否、と書いてあった。
道が、呼吸を始めた。
同じ日の午後、商業ギルドが一車の歌うレンガを、封を切らずに鎮へ引き戻した。
ルミラが荷箱に貼られた見積もりを裂く。
金穂商盟が北西全体で、同時に値段を変えていた。
歌うレンガの買い取りは六割下がった。
雲毛の織物は五割下がった。
月豆は、去年の市価の三分の一しか残っていない。
見積もりの末尾には、アイザック会長の金色の麦穂印が押してあった。




