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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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15/83

自衛隊はまず銅鑼から覚える

セインが自衛隊を初めて集めたとき、半日かかった。


「身長順に並べ」


牛角族が最前列へ立つ。


羽民は地面が狭すぎると感じ、全員屋根へ飛んだ。


ゴブリン劇団は公演の隊形を組み、ついでに太鼓も持ってきた。ドワーフは武器架の周りで、槌と短斧をどの列へ分けるか争っている。


ジェリーがいちばん整列していた。


「先に昼飯にするか」と僕は聞いた。


セインは検収表を筒に巻く。


「伝統編成は取り消す」


晴風に軍隊はない。


具体的な仕事ができる者は、たくさんいる。


羽民は巡空隊を組み、獣群を見る。


灰耳族は匂いの囮と仕掛け網を作る。


河妖は灌漑渠を、速く水を出せる泥地へ変える。


牛角族とドワーフが盾壁を組む。


ゴブリンは合図を担当する。晴風でいちばん大きな銅鑼を持ち、リズムに合わせて動くことに慣れているからだ。


第一版の合図は十三種あった。


セインは五種まで減らせと言う。


ギグは「主役登場曲」の存続を主張した。


「戦場に主役はいない」


「なら敵は誰を見ればいい」


最後の五種に登場曲はない。だが雑に長く鳴る一種がある。


意味は、ベリーが持ち場を離れた、だ。


魔法組はフィアが担当する。


成員はイヴ、火球術ができる商人二人、石を熱くすることしかできない徒弟三人、それからベリー。


最初の訓練で、火球が仕掛け網に火をつけた。


河妖が放水して消し、盾壁まで押し倒す。


ベリーは転がる盾を興奮して追い、火を吐いた。


セインは表に長いあいだ書いた。


「少なくとも、問題は早く出た」と僕は言った。


「問題が多すぎて、書ききれない」


二度目は、各組の距離を開いた。


匂いの囮は東側。


泥渠は中央。


盾壁は西斜面を守る。


ゴブリンの銅鑼手は高台に立ち、歌うレンガで合図を各方面へ伝える。


建設で残したものが、やっと戦闘の役を担い始める。


道路は資材を運ぶ。


水渠は地形を変える。


高床小屋は見張りになる。


反響レンガは毎回の演習命令を記録し、終わってから再生する。聞き違えた者が一目でわかる。


僕はアランで開路の練習をする。


雑草、霧、障害に隠された本物の道が見える。帰途は、住民が家へ帰りたい向きを知らせてくれる。


一度目、北斜面へ通じる近道を直接開こうとした。


金線は二十歩行き、未完成の石壁へぶつかった。


「そこに出口はない」とアラン。


「壁の後ろに道がある」


「だが壁は今、本物だ。吾は閉塞を斬れる。存在しないふりはできん」


壁に沿って扉を探すしかない。


二度目、金線は水渠を迂回し、旧道へ繋がった。


道は短い。だが担架隊が泥地を避けられるには足りる。


「戦闘では最前列へ出るな」とセイン。


「出すつもりもない」


アランは大いに不満だった。


「剣を持つ者は勇猛であるべきだ」


「自衛計画では、お前は出口を探す」


「突撃は」


「牛角族の方が頑丈だ」


アランはしばし黙り、現実を受け入れた。


訓練三日目、フィアに二通目の手紙が届く。


今度はカウンターの前で封を切った。


青麦飛行工房は実習資格の回復を認め、本年度の風路試験への参加も許す。


条件は、獣群が着く前に「認証されていない危険集落」を離れること。


出頭期限は、明日の午後だ。


「ずっと欲しかったものだ」と僕は言った。


「ええ」


「三十七枚の記録も終わった」


「最後の一枚、総図がまだ」


「道で描けるか」


答えなかった。


午後の訓練、フィアは連続で二度、風壁を斜めに置いた。


一度は銅鑼架をひっくり返す。


一度は匂いの囮を厨房へ送る。


晴風全体が半日、酸っぱい草の臭いを嗅いだ。


疑われたあと、魔力を増やそうとする。


杖を押さえる。


「今日は止めろ」


「調整できる」


「風旗を見ていない」


フィアが唇を嚙む。


しばらくして、自分から杖を下ろした。


「ごめんなさい」


何もできないとは言わなかった。慰めを待つのでもない。


三十七枚の記録を宿屋の広間に広げ、一枚ずつ照合する。


夜、熱い汁を残しておいた。


「出ていってほしい?」と彼女は聞く。


「それは君の実習だ」


「あなたは」


彼女を見る。


本当に辛いとき、彼女は逆に口数が少ない。


「自分の行きたい向きへ行けばいい。僕が残れと言ったから残るな。工房が帰れと言ったから帰るな」


「問題を返すのが上手ね」


「宿屋は選択のために灯を残す。客の行き先は決めない」


彼女は俯いて汁を飲む。


翌朝、フィアが荷物を背負ってカウンターへ来る。


十二号の鍵が僕の前に置かれた。


退室簿を手に取る。


「決めたか」


「決めた」


鍵を、また持って戻る。


「退室しないことにした」


「荷物は何だ」


「観測道具。西斜面は風が強い」


召還状を、最後の総図の下へ押さえる。


「残ってあなたに付き合うわけじゃない。風路がまだ描き終わっていないの。晴風から飛び立つことも、正式な路線だと工房に見せる」


「試験を逃したら」


「今年は追試がある。獣群を逃せば、風眼を踏み潰される」


西斜面へ走り、三十七面の風向旗を記録どおりに並べ直す。


勘だけではない。


一面ごとに、本物の日付、時刻、風力が対応している。


夕方、羽民の斥候が黒い石片を一塊持ち帰った。


セインは紋章を一目で認めた。


「黒茨領の駆獣碑だ」


駆獣碑はもともと、獣群を町から遠ざけるものだ。


符文の向きを変えれば、指定の場所へ導くこともできる。


羽民は番号付きの反響レンガも一塊持ち帰った。


セインは以前、黒茨の倉庫に証拠用のレンガを六塊置いて、違法な税務を記録していた。この一塊は倉庫から外され、駆獣碑の破片と一緒に北斜面へ捨てられていた。


「中には何がある」と僕は聞く。


「封じを解く前は開くな」とセイン。「公開調査のときに初めて有効だ」


「なら誰かはまだわからない」


「だが王国の駆獣施設を動かした者がいる」


同じ夜、黒茨の使者が宿屋へ来た。


騎士二百名で晴風を守ると提案する。


条件は、土地、臨時管理権、帰巣炉を渡せ、だ。


「接収ではない」使者は言う。「男爵は未熟な集落の責任を代わりに負うだけだ」


「断る」


「魔物の種族は危険になると、自分だけを守る」


ガルドが食卓から顔を上げる。


「誰が魔物だと言った」


ガンドが袖を捲る。


河妖の代表も、自分のことかもしれないと思った。


ギグは椅子の上に立ち、使者に無視されたと抗議する。


争いは一瞬で、訓練より乱れた。


使者を門外へ送る。


戦いの前夜に、宣誓はない。


皆が帰巣炉を囲んで月豆の汁を食べ、持ち場と退避の順を確認する。


「明日、僕のために戦うな」と僕は言った。


ガルドが雲餅を嚙む。


「誰がお前のためだ。俺は窯を守る」


ルミラが言う。「私は田と穀倉を守ります」


ギグは銅鑼槌を抱える。


「舞台を守る」


ベリーは厨房の貯蔵室の鍵を抱いた。


守る対象がいちばん明確だ。


遠く、白石嶺から低い震動が伝わる。


卓の汁面が、小さく波立つ。


三千頭の獣群が着いた。


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