三千頭の客はチェックインできない
獣群は日の出とともに北斜面を越えた。
先頭は岩背猪だ。
後ろに長牙兎、黒鬣鹿、六眼の巨犀が十数頭押し合う。攻城に来たのではない。駆獣碑に追い詰められ、逃げられる道を必死に探している。
数は三千を超える。
西壁に立ち、最初に浮かんだ考えはこうだった。
この客たちはチェックインできない。
「第一の囮、点火!」セインが命じる。
灰耳族が、酸っぱい草と獣脂を詰めた陶壺を斜面へ押し出す。
刺すような匂いが東風に乗る。
獣群の前部が東へ偏る。
最初の建設が、それを受け止めた。
河妖が分流門を開く。
灌漑渠から溢れた水が低地を浸し、あらかじめ翻した土を泥地にする。数百頭の猪が同時に滑り、後列が押し上げ、勢いが一段落ちた。
ギグが銅鑼槌を上げる。
「二短一長! 東側、成功!」
銅鑼の音が歌うレンガの壁を伝い、谷へ広がる。
羽民が高床小屋の屋根から飛び立ち、仕掛け網を落とす。網は魔物全部を縛るためではない。先頭の数頭の前脚だけを絡め、後方をさらに方向転換させる。
前半の防衛線は有効だった。
半分だけ、有効だった。
六眼の巨犀は泥地を直接突き抜ける。
一頭ごとに宿屋の厨房より大きく、六つの目は駆獣の赤い光に染まり、目標は西壁の後ろの住宅区だ。
「盾壁!」
牛角族が広い木盾を地面へ押し込み、ドワーフが隙間に長槍を架ける。
最初の一頭がぶつかる。
石壁が震えた。
帰巣炉がひびの位置を頭へ送ってくる。
「左側の三段目、二歩下がれ! そこの石基が折れる!」
ガルドがすぐ人を連れて位置を替える。
石塊は次の瞬間崩れた。人は潰していない。
二頭目が一頭目へぶつかる。
牛角族が一列、後ろへ滑る。
セインが剣を抜いて壁を下り、霜が泥地を覆い、巨犀の前脚を凍らせた。
三頭目が側面から迂回する。
「フィア!」
彼女は三十七面の風旗の中央に立ち、すぐには術を使わない。
まず北旗を見る。
次いで低い埃を見る。
杖が落ちたとき、風壁が一枚、正確に巨犀の肩側へ当たった。
ひっくり返すことはできなかった。
だが半歩偏らせ、空の土壁へ突っ込ませた。後ろの住屋ではない。
「成功した!」彼女が叫ぶ。
「まだ終わっていない!」
土壁が砕け、巨犀がまた起き上がる。
ベリーが魔法組から飛び出し、黒鬣鹿の背へ乗り、興奮して火を吐く。
銅鑼台からすぐ、あの雑な長鳴りが伝わる。
「幼竜、持ち場離脱!」ギグが叫ぶ。
ジェリーが壁から弾み、透明な網袋になって、ベリーと黒鬣鹿をまとめて包んだ。
ベリーが中で抗議する。
「先に戻れ!」フィアが叫ぶ。「あなたの持ち場は第二の囮の点火よ!」
食べるものがあると聞き——実際にはないのだが——やっと網から抜け、火鉢へ走った。
第二の囮が点火する。
炎が甜根の匂いを南へ流し、黒鬣鹿を予備の空き地へ誘う。
だが風が、突然弱まった。
濃煙が住宅の傍で止まる。
「風を開け!」セインが叫ぶ。
フィアが杖を上げ、顔色が白い。
さっき風壁を二本続けて維持し、魔力はもう不安定だ。
火系の商人が手伝おうとし、火球は乾いた干し草の山へ落ちた。
「火事だ!」と誰かが叫ぶ。
ジェリーはベリーを戻したばかりで、すぐ火点へ転がる。燃える草屑を吞み、体の内側が真っ赤に光った。
僕がいなくても、多くの仕事は続いて完了している。
河妖が再び水を分け、残り火を消す。
灰耳族が囮を補う。
羽民が投網の向きを直す。
セインは盾壁に硬く支えさせるのをやめ、両翼に分けて巨犀を空き地へ導く。
アランを握る。だが大きな道を急いで開かない。
今の本当の出口は、まだ駆獣碑に歪められている。アランは歩ける道を示せる。パニックの獣群にこちらの意図を理解させることはできない。
最初の二本の防衛線が、先に正しい向きへ連れていかねばならない。
「西側の裂け目を開け!」セインが命じる。
ガルドが仮の低い壁を一段爆破する。
最初の巨犀が空き地を見て、そちらへ曲がった。
二頭目が続く。
歌うレンガの壁は連続の衝撃で、刺すような金切り声を出す。
合図ではない。
耐力の限界に近い。
「全員下がれ!」と僕は叫んだ。
壁が崩れる。
煙塵の中、長牙兎の群れが砕石を越え、厨房へ突入した。
ルミラが追って入ったとき、先頭の兎はすでに人参の籠の半分を銜えていた。
「それは種だ!」
箒を持って三本の路地を追う。
少なくとも、軽い部分はまだある。
日が中天に来たころ、獣群の大半は南東の緩斜面へ誘導されていた。
負傷者十三人。重傷はいない。
西壁の破損は二段。
仮屋が一箇所、巨犀に掠められて潰れた。
第一ラウンドは守った。
セインが陣を整えようとしたとき、北斜面が突然赤い光を発する。
すべての獣群が同時に一瞬止まる。
次いで、南東へ動いていた猪と黒鬣鹿が一斉に頭を向けた。
出口へ向かわない。
晴風の中央を直指する。
そこには帰巣炉、公共厨房三箇所、いちばん密集した住宅がある。
「駆獣碑の向きが変わった」とセイン。
羽民の斥候が高所から急降下する。
「北斜面に操作している者がいる! 術師が少なくとも三名!」
セインが小隊を連れて遮断に向かう。
だが獣群はすでに二度目の疾走を始めていた。
泥地は前のラウンドで踏み固められている。
囮は大半を使い切った。
盾壁も完全ではない。
フィアが風旗のあいだに立ち、杖を握る手が震える。
「あと一度、風を出せる」
「待て」
「待てば住宅へ入る」
「向きが開いていなければ、君の風は速くするだけだ」
目を閉じる。
帰巣炉の範囲に、五百八の微かな向きが同時に浮かぶ。
壁の上にいる住民。
医務室にいる者。
子供と老人はすでに南側の長棚へ入っている。
踏まれてはならない家の一つひとつ、まだ通れる路地の一条一条が、家園の感知ではっきりする。
アランの剣身が、だんだん熱くなる。
「天野陸」それが言う。「南西だ」
僕も見えた。
西壁の欠けたところを越え、人のいない草原がある。
住宅もない。田もない。駆獣碑の匂いもない。
獣群の位置からその草原まで、歩ける道は確かに存在する。
途中に、踏み荒らされた工事場、狭い路地が二本、まだ解体していない旧倉があるだけだ。
アランは閉塞を斬れる。
帰巣炉は家を避けさせてくれる。
フィアの風は出口を獣群の前へ運べる。
前提は、三者の向きが完全に一致することだ。
最初の猪が、すでに市場へ突入していた。
壁から飛び降り、アランを抜く。
「いちばん大きく開け」
剣が低い長鳴りを出す。
金光が刃口から地面へ落ちる。
今度は、三十歩ではない。
晴風全体を貫く。




