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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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16/83

三千頭の客はチェックインできない

獣群は日の出とともに北斜面を越えた。


先頭は岩背猪だ。


後ろに長牙兎、黒鬣鹿、六眼の巨犀が十数頭押し合う。攻城に来たのではない。駆獣碑に追い詰められ、逃げられる道を必死に探している。


数は三千を超える。


西壁に立ち、最初に浮かんだ考えはこうだった。


この客たちはチェックインできない。


「第一の囮、点火!」セインが命じる。


灰耳族が、酸っぱい草と獣脂を詰めた陶壺を斜面へ押し出す。


刺すような匂いが東風に乗る。


獣群の前部が東へ偏る。


最初の建設が、それを受け止めた。


河妖が分流門を開く。


灌漑渠から溢れた水が低地を浸し、あらかじめ翻した土を泥地にする。数百頭の猪が同時に滑り、後列が押し上げ、勢いが一段落ちた。


ギグが銅鑼槌を上げる。


「二短一長! 東側、成功!」


銅鑼の音が歌うレンガの壁を伝い、谷へ広がる。


羽民が高床小屋の屋根から飛び立ち、仕掛け網を落とす。網は魔物全部を縛るためではない。先頭の数頭の前脚だけを絡め、後方をさらに方向転換させる。


前半の防衛線は有効だった。


半分だけ、有効だった。


六眼の巨犀は泥地を直接突き抜ける。


一頭ごとに宿屋の厨房より大きく、六つの目は駆獣の赤い光に染まり、目標は西壁の後ろの住宅区だ。


「盾壁!」


牛角族が広い木盾を地面へ押し込み、ドワーフが隙間に長槍を架ける。


最初の一頭がぶつかる。


石壁が震えた。


帰巣炉がひびの位置を頭へ送ってくる。


「左側の三段目、二歩下がれ! そこの石基が折れる!」


ガルドがすぐ人を連れて位置を替える。


石塊は次の瞬間崩れた。人は潰していない。


二頭目が一頭目へぶつかる。


牛角族が一列、後ろへ滑る。


セインが剣を抜いて壁を下り、霜が泥地を覆い、巨犀の前脚を凍らせた。


三頭目が側面から迂回する。


「フィア!」


彼女は三十七面の風旗の中央に立ち、すぐには術を使わない。


まず北旗を見る。


次いで低い埃を見る。


杖が落ちたとき、風壁が一枚、正確に巨犀の肩側へ当たった。


ひっくり返すことはできなかった。


だが半歩偏らせ、空の土壁へ突っ込ませた。後ろの住屋ではない。


「成功した!」彼女が叫ぶ。


「まだ終わっていない!」


土壁が砕け、巨犀がまた起き上がる。


ベリーが魔法組から飛び出し、黒鬣鹿の背へ乗り、興奮して火を吐く。


銅鑼台からすぐ、あの雑な長鳴りが伝わる。


「幼竜、持ち場離脱!」ギグが叫ぶ。


ジェリーが壁から弾み、透明な網袋になって、ベリーと黒鬣鹿をまとめて包んだ。


ベリーが中で抗議する。


「先に戻れ!」フィアが叫ぶ。「あなたの持ち場は第二の囮の点火よ!」


食べるものがあると聞き——実際にはないのだが——やっと網から抜け、火鉢へ走った。


第二の囮が点火する。


炎が甜根の匂いを南へ流し、黒鬣鹿を予備の空き地へ誘う。


だが風が、突然弱まった。


濃煙が住宅の傍で止まる。


「風を開け!」セインが叫ぶ。


フィアが杖を上げ、顔色が白い。


さっき風壁を二本続けて維持し、魔力はもう不安定だ。


火系の商人が手伝おうとし、火球は乾いた干し草の山へ落ちた。


「火事だ!」と誰かが叫ぶ。


ジェリーはベリーを戻したばかりで、すぐ火点へ転がる。燃える草屑を吞み、体の内側が真っ赤に光った。


僕がいなくても、多くの仕事は続いて完了している。


河妖が再び水を分け、残り火を消す。


灰耳族が囮を補う。


羽民が投網の向きを直す。


セインは盾壁に硬く支えさせるのをやめ、両翼に分けて巨犀を空き地へ導く。


アランを握る。だが大きな道を急いで開かない。


今の本当の出口は、まだ駆獣碑に歪められている。アランは歩ける道を示せる。パニックの獣群にこちらの意図を理解させることはできない。


最初の二本の防衛線が、先に正しい向きへ連れていかねばならない。


「西側の裂け目を開け!」セインが命じる。


ガルドが仮の低い壁を一段爆破する。


最初の巨犀が空き地を見て、そちらへ曲がった。


二頭目が続く。


歌うレンガの壁は連続の衝撃で、刺すような金切り声を出す。


合図ではない。


耐力の限界に近い。


「全員下がれ!」と僕は叫んだ。


壁が崩れる。


煙塵の中、長牙兎の群れが砕石を越え、厨房へ突入した。


ルミラが追って入ったとき、先頭の兎はすでに人参の籠の半分を銜えていた。


「それは種だ!」


箒を持って三本の路地を追う。


少なくとも、軽い部分はまだある。


日が中天に来たころ、獣群の大半は南東の緩斜面へ誘導されていた。


負傷者十三人。重傷はいない。


西壁の破損は二段。


仮屋が一箇所、巨犀に掠められて潰れた。


第一ラウンドは守った。


セインが陣を整えようとしたとき、北斜面が突然赤い光を発する。


すべての獣群が同時に一瞬止まる。


次いで、南東へ動いていた猪と黒鬣鹿が一斉に頭を向けた。


出口へ向かわない。


晴風の中央を直指する。


そこには帰巣炉、公共厨房三箇所、いちばん密集した住宅がある。


「駆獣碑の向きが変わった」とセイン。


羽民の斥候が高所から急降下する。


「北斜面に操作している者がいる! 術師が少なくとも三名!」


セインが小隊を連れて遮断に向かう。


だが獣群はすでに二度目の疾走を始めていた。


泥地は前のラウンドで踏み固められている。


囮は大半を使い切った。


盾壁も完全ではない。


フィアが風旗のあいだに立ち、杖を握る手が震える。


「あと一度、風を出せる」


「待て」


「待てば住宅へ入る」


「向きが開いていなければ、君の風は速くするだけだ」


目を閉じる。


帰巣炉の範囲に、五百八の微かな向きが同時に浮かぶ。


壁の上にいる住民。


医務室にいる者。


子供と老人はすでに南側の長棚へ入っている。


踏まれてはならない家の一つひとつ、まだ通れる路地の一条一条が、家園の感知ではっきりする。


アランの剣身が、だんだん熱くなる。


「天野陸」それが言う。「南西だ」


僕も見えた。


西壁の欠けたところを越え、人のいない草原がある。


住宅もない。田もない。駆獣碑の匂いもない。


獣群の位置からその草原まで、歩ける道は確かに存在する。


途中に、踏み荒らされた工事場、狭い路地が二本、まだ解体していない旧倉があるだけだ。


アランは閉塞を斬れる。


帰巣炉は家を避けさせてくれる。


フィアの風は出口を獣群の前へ運べる。


前提は、三者の向きが完全に一致することだ。


最初の猪が、すでに市場へ突入していた。


壁から飛び降り、アランを抜く。


「いちばん大きく開け」


剣が低い長鳴りを出す。


金光が刃口から地面へ落ちる。


今度は、三十歩ではない。


晴風全体を貫く。


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