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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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13/83

善意は他人の帳簿に書けない

雲餅は糧食の期限を延ばした。


僕の誤りは消してくれなかった。


農業ギルドが帳面を再点検する日、ルミラは広間の扉を閉じ、各組の代表だけを残した。


卓上に帳簿が五冊。


糧食。


宿泊。


建材。


医療。


住民登記。


「第一陣の七十四人が着いたとき、陸店主は一晩無料だと約束しました」彼女は言う。


「登記の条件は補った」


「第二陣、第三陣は」


「同じ規則だ」


「厨房と宿泊組は、いつ知りました」


答えなかった。


「人が入ってからです」ルミラが代わりに言う。「あなたが扉を開けると約束し、厨房は多く煮、職人は多く小屋を組み、医務室は多く病人を受けた。言ったのは無料の一言、払ったのは皆の糧食と夜勤です」


ガルドは珍しく、予算の冗談を言わなかった。


グラボは厨房代表の席に座り、腕には連日鍋を運んで火傷した赤い跡がある。


「やりたい」彼は言う。「だが明日何人前煮くのか、先に知りたい」


マロが建材帳を回す。


「仮住居は製造ギルドに金貨十一枚借りている。今のレンガ注文では、埋めるのに四ヶ月要る」


イヴは薬品が半分しか残っていないと言う。


新しい住民を追い出せと要求する者はいなかった。


言っていることは同じだ。


皆の労働を使って、自分が他人を収容したいと証明し続けてはならない。


以前、ゲストハウスが閉まる前、フロントが六回連続で僕の夜勤を肩代わりした。


そのときも、まず客を泊めてから考えればいいと思っていた。


最後に本部が引いたのは、店全体の賞与だ。


善良がコストを計算しないとき、コストは消えない。


口を開かなかった者の上へ落ちる。


「受け入れるのが速すぎた」と僕は言った。


広間は静かだった。


説明は続けなかった。


「今日から、新しい住民を受けるかどうかは登記組が確かめ、ベッドは宿泊組が分け、公共糧食は農業ギルドが決める。緊急の病人は先に宿屋へ泊めていい。二十四時間以内に議会登記を補う」


宿屋の総鍵の隣にあった木札の鍵三本を、卓へ置く。


穀倉はルミラへ。


宿泊札は牛角族の寡婦マーサへ。この八日、長棚の割り当てをしていた。


登記簿はマロと羽民の書記が共同で保管する。


「あなたは何をするの」とフィア。


「宿屋を見る。それから、僕名義の申請責任だ」


「夜中にこっそり約束しないでしょうね」


「先に起こす」


マーサが一目見る。


「なら、約束しない方がいい」


皆が、やっと少し笑った。


権限を渡しても、帰巣炉は暗くならなかった。


逆に、金色の火光が三本の鍵に沿って一瞬ずつ灯る。


炉火が認めるのは、住民が残りたいということだ。すべての決定が僕を通る必要はない。


新しい規則は、その日のうちに試された。


灰耳族五名が北から来て、うち二人はロックの親戚だ。


ロックは彼らを直接広間へ連れてくる。


「たった五人だ」


宿泊組が調べると、空き寝床は二つしか残っていない。


農業ギルドが口糧を計算し、五人なら三日分は出せる。


登記組が技能と行き先を聞くと、もともと青麦鎮へ行くつもりで、ロックがここにいると聞いて迂回しただけだった。


最後の案はこうだ。老人二人は宿屋、青年三人はロックの家。三日以内に晴風で働くか、南へ続けるかを自分で選ぶ。


ロックはあまり嬉しくない。


「陸店主は以前、こんなに聞かなかった」


ルミラが言う。「だから穀倉は八日分しか残っていない」


三日後、二人は残り農業ギルドへ入り、三人は青麦鎮へ行った。


一家がそれで割れはしなかった。


去る者には道順と妥当な携帯食を渡し、帰巣炉に罰せられもしなかった。


もう一つの争いは配給からだ。


全員、もう半椀減らせと提案した。


ルミラは反対する。


「窯工、渠掘り、家を建てる者は減らせません。体力が落ちれば工期はさらに遅れる」


働いていない病人がなぜ満量なのか、と疑う者もいた。


イヴが薬箱を卓へ置く。


「飢えてから病気になれば、治療の方が高い」


議会は最後に月豆酒、蜂蜜、不要な宴を削り、主食は残した。工房は歌うレンガの一部を糧食に換え、劇団は無料公演を止め、少量の切符代で厨房の塩を買う。


誰もが、少しだけ楽ではなくなる。


誰か一人だけ外へ出されて飢えることはない。


夜、宿屋のカウンターへ戻る。


総鍵が三本減り、壁が空いて見える。


フィアが十二号の鍵を掛け戻す。


「今夜は西斜面の観測に行く。部屋は退室しない」


「なぜわざわざ」


「空の鍵を見て、慣れないでしょう」


「そんなことはない」


「カウンターを五回拭いたわ」


布巾を置く。


彼女はカウンターの端に座り、ポケットから青麦飛行工房の印を押した手紙を一通出す。


「いつ来た」


「午後」


「呼び戻しか」


「まだわからない」


封は切らず、観測紙の下へ押さえるだけだ。


「最後の一枚、風向の記録が終わってから」


門外から羊の声がする。


ガンドが腰を曲げて入ってくる。頭に雲毛の一塊が付いている。


「話がある」


「羊がまた飛んだか」


「違う。お前たちは雲わたを糧食にしている」


「ほかに何ができる」


背後から乳白色の細い糸を一巻出す。


「織る」


牛角族の牧民のうち、織工が六名いる。雲毛を紡いだ糸は軽く、暖かく、普通の雨を恐れない。羽民はとくに、翼を圧さない衣料を必要としている。


問題は、今の紡車が小さすぎることだ。


ガルドは翌日、大型の紡車を作った。


第一版は踏板が重すぎ、織工が半日踏んでも三回転しかしない。


牛角族に力があることと、細かい仕事に石臼のような踏板が要ることは違う。


グラボが鉄軸を外し、木輪とベルトに替える。


第二版はずっと軽快だった。


農業ギルドが雲毛を出し、製造ギルドが道具を作り、商業ギルドが羽民の買い手を繋ぐ。収入は原料、工時、販売の割合で分ける。


封鎖下の晴風に、本道からの搬入に頼らない商品が初めてできた。


もう一方で、ルミラは四十二畝を月豆、麦、甜根、ベリー区に分けた。


河妖が水を引く。


牛角族が土を返す。


灰耳の栽培師が播種の間隔を決め、ロックたち自衛隊志望の青年はいちばん重い土工だけを担当し、黙って畑へ引っ張られない。


十二日後、四十二畝の田が緩斜面に並んだ。


新しい苗は、まだ食べられない。


だが糧食が、薄くなる袋底だけではなくなった。


夕食時、ガンドが最初の一巻、雲毛布を卓へ広げる。


白い霧一層のように軽い。


「雲餅祭りに使える」とギグ。


「祭りは糧食を食います」ルミラがすぐ反対する。


「祭りは抜け道を回る者も呼ぶ」


マロが帳を繰る。


「屋台代、公演切符、見本の販売がすべて公共調達へ入れば、糧食に換えられるかもしれない」


全員が僕を見る。


すぐ頷かなかった。


「手続きどおりに採決する」


議会は賛成七、反対三、棄権一で通った。


ルミラは反対票だ。


散会後、彼女はそれでも準備の一覧を持っていく。


「通った以上、椀が何杯あるか数えねばなりません」


晴風が集落らしくなったのは、この瞬間だ。


全員が賛成するからではない。


反対する者も、決定がどう作られ、帳を誰が負うかを知っているからだ。


窓の外、綿雲羊が新しい田をゆっくり漂う。


ガンドはそれを見て、突然言った。


「ついでに言う。羊が食うのは草じゃない」


「知っている」


「だから草場を守れと人を出すな」


遠くで、新しく当番になった牧羊人が二人、真剣に羊を青草から追い出している。


また一つ、組み直す当番が増えた。


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