善意は他人の帳簿に書けない
雲餅は糧食の期限を延ばした。
僕の誤りは消してくれなかった。
農業ギルドが帳面を再点検する日、ルミラは広間の扉を閉じ、各組の代表だけを残した。
卓上に帳簿が五冊。
糧食。
宿泊。
建材。
医療。
住民登記。
「第一陣の七十四人が着いたとき、陸店主は一晩無料だと約束しました」彼女は言う。
「登記の条件は補った」
「第二陣、第三陣は」
「同じ規則だ」
「厨房と宿泊組は、いつ知りました」
答えなかった。
「人が入ってからです」ルミラが代わりに言う。「あなたが扉を開けると約束し、厨房は多く煮、職人は多く小屋を組み、医務室は多く病人を受けた。言ったのは無料の一言、払ったのは皆の糧食と夜勤です」
ガルドは珍しく、予算の冗談を言わなかった。
グラボは厨房代表の席に座り、腕には連日鍋を運んで火傷した赤い跡がある。
「やりたい」彼は言う。「だが明日何人前煮くのか、先に知りたい」
マロが建材帳を回す。
「仮住居は製造ギルドに金貨十一枚借りている。今のレンガ注文では、埋めるのに四ヶ月要る」
イヴは薬品が半分しか残っていないと言う。
新しい住民を追い出せと要求する者はいなかった。
言っていることは同じだ。
皆の労働を使って、自分が他人を収容したいと証明し続けてはならない。
以前、ゲストハウスが閉まる前、フロントが六回連続で僕の夜勤を肩代わりした。
そのときも、まず客を泊めてから考えればいいと思っていた。
最後に本部が引いたのは、店全体の賞与だ。
善良がコストを計算しないとき、コストは消えない。
口を開かなかった者の上へ落ちる。
「受け入れるのが速すぎた」と僕は言った。
広間は静かだった。
説明は続けなかった。
「今日から、新しい住民を受けるかどうかは登記組が確かめ、ベッドは宿泊組が分け、公共糧食は農業ギルドが決める。緊急の病人は先に宿屋へ泊めていい。二十四時間以内に議会登記を補う」
宿屋の総鍵の隣にあった木札の鍵三本を、卓へ置く。
穀倉はルミラへ。
宿泊札は牛角族の寡婦マーサへ。この八日、長棚の割り当てをしていた。
登記簿はマロと羽民の書記が共同で保管する。
「あなたは何をするの」とフィア。
「宿屋を見る。それから、僕名義の申請責任だ」
「夜中にこっそり約束しないでしょうね」
「先に起こす」
マーサが一目見る。
「なら、約束しない方がいい」
皆が、やっと少し笑った。
権限を渡しても、帰巣炉は暗くならなかった。
逆に、金色の火光が三本の鍵に沿って一瞬ずつ灯る。
炉火が認めるのは、住民が残りたいということだ。すべての決定が僕を通る必要はない。
新しい規則は、その日のうちに試された。
灰耳族五名が北から来て、うち二人はロックの親戚だ。
ロックは彼らを直接広間へ連れてくる。
「たった五人だ」
宿泊組が調べると、空き寝床は二つしか残っていない。
農業ギルドが口糧を計算し、五人なら三日分は出せる。
登記組が技能と行き先を聞くと、もともと青麦鎮へ行くつもりで、ロックがここにいると聞いて迂回しただけだった。
最後の案はこうだ。老人二人は宿屋、青年三人はロックの家。三日以内に晴風で働くか、南へ続けるかを自分で選ぶ。
ロックはあまり嬉しくない。
「陸店主は以前、こんなに聞かなかった」
ルミラが言う。「だから穀倉は八日分しか残っていない」
三日後、二人は残り農業ギルドへ入り、三人は青麦鎮へ行った。
一家がそれで割れはしなかった。
去る者には道順と妥当な携帯食を渡し、帰巣炉に罰せられもしなかった。
もう一つの争いは配給からだ。
全員、もう半椀減らせと提案した。
ルミラは反対する。
「窯工、渠掘り、家を建てる者は減らせません。体力が落ちれば工期はさらに遅れる」
働いていない病人がなぜ満量なのか、と疑う者もいた。
イヴが薬箱を卓へ置く。
「飢えてから病気になれば、治療の方が高い」
議会は最後に月豆酒、蜂蜜、不要な宴を削り、主食は残した。工房は歌うレンガの一部を糧食に換え、劇団は無料公演を止め、少量の切符代で厨房の塩を買う。
誰もが、少しだけ楽ではなくなる。
誰か一人だけ外へ出されて飢えることはない。
夜、宿屋のカウンターへ戻る。
総鍵が三本減り、壁が空いて見える。
フィアが十二号の鍵を掛け戻す。
「今夜は西斜面の観測に行く。部屋は退室しない」
「なぜわざわざ」
「空の鍵を見て、慣れないでしょう」
「そんなことはない」
「カウンターを五回拭いたわ」
布巾を置く。
彼女はカウンターの端に座り、ポケットから青麦飛行工房の印を押した手紙を一通出す。
「いつ来た」
「午後」
「呼び戻しか」
「まだわからない」
封は切らず、観測紙の下へ押さえるだけだ。
「最後の一枚、風向の記録が終わってから」
門外から羊の声がする。
ガンドが腰を曲げて入ってくる。頭に雲毛の一塊が付いている。
「話がある」
「羊がまた飛んだか」
「違う。お前たちは雲わたを糧食にしている」
「ほかに何ができる」
背後から乳白色の細い糸を一巻出す。
「織る」
牛角族の牧民のうち、織工が六名いる。雲毛を紡いだ糸は軽く、暖かく、普通の雨を恐れない。羽民はとくに、翼を圧さない衣料を必要としている。
問題は、今の紡車が小さすぎることだ。
ガルドは翌日、大型の紡車を作った。
第一版は踏板が重すぎ、織工が半日踏んでも三回転しかしない。
牛角族に力があることと、細かい仕事に石臼のような踏板が要ることは違う。
グラボが鉄軸を外し、木輪とベルトに替える。
第二版はずっと軽快だった。
農業ギルドが雲毛を出し、製造ギルドが道具を作り、商業ギルドが羽民の買い手を繋ぐ。収入は原料、工時、販売の割合で分ける。
封鎖下の晴風に、本道からの搬入に頼らない商品が初めてできた。
もう一方で、ルミラは四十二畝を月豆、麦、甜根、ベリー区に分けた。
河妖が水を引く。
牛角族が土を返す。
灰耳の栽培師が播種の間隔を決め、ロックたち自衛隊志望の青年はいちばん重い土工だけを担当し、黙って畑へ引っ張られない。
十二日後、四十二畝の田が緩斜面に並んだ。
新しい苗は、まだ食べられない。
だが糧食が、薄くなる袋底だけではなくなった。
夕食時、ガンドが最初の一巻、雲毛布を卓へ広げる。
白い霧一層のように軽い。
「雲餅祭りに使える」とギグ。
「祭りは糧食を食います」ルミラがすぐ反対する。
「祭りは抜け道を回る者も呼ぶ」
マロが帳を繰る。
「屋台代、公演切符、見本の販売がすべて公共調達へ入れば、糧食に換えられるかもしれない」
全員が僕を見る。
すぐ頷かなかった。
「手続きどおりに採決する」
議会は賛成七、反対三、棄権一で通った。
ルミラは反対票だ。
散会後、彼女はそれでも準備の一覧を持っていく。
「通った以上、椀が何杯あるか数えねばなりません」
晴風が集落らしくなったのは、この瞬間だ。
全員が賛成するからではない。
反対する者も、決定がどう作られ、帳を誰が負うかを知っているからだ。
窓の外、綿雲羊が新しい田をゆっくり漂う。
ガンドはそれを見て、突然言った。
「ついでに言う。羊が食うのは草じゃない」
「知っている」
「だから草場を守れと人を出すな」
遠くで、新しく当番になった牧羊人が二人、真剣に羊を青草から追い出している。
また一つ、組み直す当番が増えた。




