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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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12/83

四百八十七のベッド

次の隊列は、晴風へ入らなかった。


ルミラは宿泊組に北斜面で登記小屋を出させ、先に人数、病状、持参の携帯食を数える。


二十六人のうち九人に青麦鎮の親族がいる。羽民の巡空隊が関所を迂回して送り、残る十七人は二晩仮住まいしてから去就を決める。


扉を閉じたわけではない。


扉の向こうに席がいくつあるかも、はっきり言わねばならないと、やっと認めたのだ。


宿屋は病弱者と幼児の集中宿泊になった。


一号から六号まで全部直り、各室に二段ベッドを四台置く。広間は夜なら十二人敷ける。昼は敷布団を片付け、厨房、登記、議会に道を譲る。


鍵を、対応する木札の下へ一つずつ掛ける。


「病人が退室したら、シーツは熱湯で煮る」とイヴ。


「薪が倍になる」


「病気は十倍になる」


彼女の勝ちだ。


ほかの住民は仮住居へ分かれた。


灰耳族の半地穴屋は暖かい。だが第一陣の窓が低すぎ、雨の日に泥水が滲む。ロックが窓台を上げ、門前に浅い溝を足した。


羽民の高床小屋は軽い。強風では大きく揺れる。フィアが観測旗に合わせて向きを直し、ガルドが交差した引き索を増やす。第二版は揺れなくなった。代価は、離着陸台が宿屋の煙突に真正面だということだ。


最初の羽民が飛び立つとき、全身に煤を浴びた。


煙突はそのあと高くした。


水院は当初、流水だけがあり、浅瀬がなかった。河妖の幼児は眠ると深い方へ滑り、牛角族は灌漑水を取りに来る。双方は水位で二日争った。


ガルドは石堰を足せと言う。


河妖の代表は、石堰が流れを断つと考える。


最後に三段の水院にした。上層は飲み水、中層は居住、下層は洗濯と灌漑。分流門は河妖が管理し、鍵は一組を宿屋のカウンターに置く。夜間、水を出す者がいなくなるのを防ぐためだ。


広い扉の石屋の家具も作り直しだ。


普通の椅子は牛角族の重さに耐えず、ガルドが作った最初の石椅子は重すぎて動かせない。グラボが厚い木と鉄箍で長椅子を改めた。三人座れて、厨房ではまな板にもなる。


「これは厨房道具だ」と彼は言う。


ガンドが座る。


「今は椅子だ」


二人は帰属で夕食まで争った。


仮の土屋四十八、長棚六、高床の小屋二十二、水院が一つ。八日で空から生えたものではない。


木材は旧駅舎の倉、枯木林、商隊の掛け買いからだ。


石材は風鳴鉱区が先に納め、製造ギルドの帳につける。


搗き土の壁は住民が共同で施工し、参加した者は初月の宿泊を相殺する。


家の一つひとつが、誰かの工時か、どのギルドかの金を借りている。


ガルドが総予算を持ってきたとき、三度見た。


「承認額を二割超えている」


「普通だ」


「どこが普通だ」


「最初から超えるとわかっていた。だから出した数字はすでに抑えてある」


「それは抑制とは言わない」


「お前が同意しやすい数字、と言う」


臨時議会は屋根飾りを三つ、歌う排水溝を一条、牛の頭の髭の鍍銅部分を全部削った。


ガルドは最後の一項を、とくに不満に思った。


本当に息が詰まるのは糧食だ。


黒茨領が本道を封鎖したあと、厨房は世帯人数で食事札を出す。


子供、病人、重労働は優先して足りる量。


ほかは酒と甘いものを減らし、主食は減らさない。


一日目、公共厨房三箇所の鍋の大きさが違い、食事札は椀で数えていた。南厨の椀は北厨より一回り大きく、列の者が南へ歩き始める。


マロはその日のうちに木杓子で定量にした。


二日目、木杓子はグラボが煮込みを掬うのに持っていった。


三日目、各厨房に容量を刻んだ銅杓子一組が渡り、台帳へ登記される。


公共の規則は、壮大な宣言ではないことが多い。


一人ひとりが掬う汁を、だいたい同じにすることだ。


封鎖四日目、商人が一人、抜け道を回り、麦粉を二袋こっそり持ってきた。


値段は平時の四倍。


買いたかった。


ルミラは拒んだ。


「買えば、あとの者も値を上げます」


「糧食は三日分しかない」


「農業ギルドは緊急糧を二倍まで受け取れます。それを超える分は議会の同意が要る。カウンターに立っているからといって、今日書いたばかりの規則は変えられません」


商人は最終的に二倍で取引し、歌うレンガを一車交換して去った。


自分の身分で、さらに金を足さなかった。


とても落ち着かない。


夜の巡房で、牛角族の子供が聞く。「明日も朝ごはんはある?」


「ある」


「明後日は」


「ある」


言い終えて気づく。これも計算していない保証だ。


広間へ戻ると、ルミラが最後の七袋を数えていた。


「さっき子供に、明後日も朝ごはんがあると約束した」


「あります」彼女は言う。「でも、あなたが約束したからではありません」


「では何だ」


「ガンドが代わりの食べ物を見つけました」


ガンドが北斜面へ案内する。


数百頭の綿雲羊が夜色に押し合い、背の白毛は雲のように蓬々としている。頭を下げても草は食わず、草先の水気と空気中の遊離魔力だけを吸う。


「雲毛は三日ごとに一層伸びる」とガンド。「紡げる。焼いても食える」


「毛を焼くのか」


「毛じゃない。いちばん外側の新しい雲わただ」


小さな塊を千切り、手の中で薄い一枚に揉む。


フィアが暖風で少し炙る。


雲わたはすぐ膨れ、真っ白な餅になる。


一口嚙む。


味はない。塩を入れ忘れたパンのような口当たりだ。


「食べられる」とルミラ。「月豆の醤を足せば足ります」


問題は、刈れないことだ。


見知らぬ者が近づくと、綿雲羊は膨れ、四蹄が地面を離れる。


ガンドが実演したとき、最初の一頭が屋根の高さまで浮かんだ。


フィアが言う。「私がやる」


風で羊を下へ押す。


向きは正確だった。


力が少し大きかった。


羊は着地したあと怒り、彼女の懐へぶつかる。フィアは羊を抱えたまま斜面を転がり、一路さらに十二頭を飛ばした。


三十分後、晴風の上空は白い羊だらけだ。


羽民が高所から囲む。


子供が箒に乗って追う。


ベリーは新しい菓子だと思い、雲毛の一塊を銜えて離さない。


ジェリーは地面に広がり、落ちる羊を受け止め、連続で青い薄焼き七枚に潰された。


深夜までかかり、やっと方法がつかめた。


馴染みの牧民が先に宥める。


フィアは細い風だけで向きを固定する。


羽民が上空で逃げ道を塞ぎ、灰耳族が長い柄の鋏で両側から外層の雲わたを刈る。


最初の一回で、雲餅が三千枚以上取れた。


厨房三箇所が同時に火を入れる。


月豆の醤、塩、少量の蜂蜜で味がついた。グラボは砕けた雲餅を煮込みへ入れ、意外に腹持ちがよくなった。


糧食は二日分から、八日分まで延びた。


根本的な解決ではない。


羊群の産出には周期があり、月豆の田はまだ四十日で熟す。封鎖はいつまでも続くかもしれない。


だが翌朝、あの牛角族の子供は熱い雲餅を受け取った。


「明後日もある?」


今度は、すぐ答えなかった。


ルミラを見る。


彼女は厨房の在庫を計算する。


「今の人数なら、あります」


「ある」と僕は言った。


子供は卓へ走って戻る。


ルミラが新しい帳面を渡してきた。


表紙には、糧食、宿泊、住民登記の連合簿、とある。


「今日から、宿屋の三十六床だけを記してはいけません」彼女は言う。「山腹の寝床、すべてに数が要る」


一頁目を開く。


正式ベッド三十六。


仮の寝床四百五十一。


合計、ちょうど四百八十七。


晴風には、まだ五百の本当のベッドはない。


だが少なくとも、今夜誰がどこで眠るかを、数え始めていた。


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