最初の一晩を無料にしたあと
最初の移住隊は七十四人だった。
宿屋のベッドは三十六。
門前に立ち、またあの馴染みの台詞を言った。
「最初の一晩は無料だ」
ルミラが後ろで息を吞む。
すぐ補足する。
「病人、老人、幼児連れの家は宿屋。ほかは先に天幕を張れ。今夜は人数を登記し、明日糧食を計算し、明後日に長期の割り当てを決める」
ルミラは、それで頷いた。
来たのは牛角族だ。
隊長はガンドといった。宿屋の大門より頭半分高く、横向きに頭を下げて入るしかない。後ろには牧民、織工、大工が二人、料理人だけをしたい若い男が一人いる。
牛角族が全員、羊を飼いたいわけではない。
グラボという若者は職業欄に「煮込み料理人」と堅く書き、石運びへ回されることを拒んだ。
「力があることと、石が好きなことは違う」
ガルドが言う。「石もお前が好きだとは言っていない」
二人はその日のうちに厨房で、鍋の高さで争った。
普通の竈は低すぎる。グラボは腰を曲げて三十分で吊鍋に三度ぶつかる。ガルドが仮に炉台を高くすると、灰耳族が届かなくなった。
最後に、高い面と低い面の二つの竈にした。
最初の煮込みは一時遅れた。だが全員が熱いものを食べられた。
宿泊は、さらに面倒だった。
牛角族は普通の扉を通れない。
初夜、ガンドは三号の扉枠を壊した。
木枠をカウンターまで担いでくる。
「賠償はいくらか」
「まず記帳する。広い扉の部屋が要る」
「特別扱いは要らない」
「毎日扉一枚壊す方が高い」
旧馬小屋を長棚へ改め、内側の間仕切りを外し、入口を広げる。綿雲羊は斜面で眠り、遠くから見れば動く白い雲だ。
初夜が終わる前に、南から羽民が二十九名来た。
青麦鎮の外で二日待ち、高床小屋を建てていい空き地が見つからなかった。普通の部屋では翼が伸ばせず、開けた空も見えない。
「宿屋の屋根に仮住まいできる」とフィア。
「屋根は直したばかりだ」
「軽いのよ」
ガルドを見る。
「荷重は問題ない」彼は言った。「気持ちの問題だ」
羽民は結局、旧馬小屋の木梁に吊床を敷いた。
翌日、ガルドは解体した足場で最初の高床小屋を組む。一度目は低すぎて、羽民が飛び立つときゴブリン舞台の天蓋をひっくり返した。
二度目は二尺上げ、屋側に開放の離着陸台を残す。
舞台の天蓋には固定縄を足した。
第三陣は河妖だ。
十八人しかいない。起こした問題はいちばん大きかった。
子供二人が水から離れすぎ、肌が割れ始める。宿屋の浴槽は一つだけで、しかもひびが入っている。
ガルドは真っ直ぐな渠を掘り、北側の溪流から直接水を引けと言う。
ルミラは反対した。
「真っ直ぐな渠は新しい田を切る」
「田は迂回できる」
「水はしない」
最初の通水で、渠口に沈砂池がなかった。濁水が斜面を洗い、一路ゴブリンの舞台へ流れ込む。
ギグが膝までの水に立つ。
「今夜は水上劇か」
河妖の子供は、とても喜んでいた。
二度目は二段の沈砂池にし、木の分流門を足す。本渠は田を迂回し、支渠は灌漑溝へ通じ、末端は南斜面で水院になる。
水院は予備の消防池にもなる。
施設は、一つの種族の問題だけを解いていない。
だが問題を一つ解くたびに、木材、石、工時、金が要る。
移住者は止まらなかった。
八日で、六隊が着いた。
自衛隊へ入りたい灰耳の青年、職人を嫌って劇団で芝居を学びたいドワーフ、記帳は得意だが水が怖い河妖もいる。
登記の列はカウンターから院門まで伸びた。
毎日、同じことを聞く。
氏名。
家族の人数。
技能。
健康。
何泊の予定か。
いちばん大事なのは、明日も残る気があるかどうかだ。
残る者ばかりではない。
羽民十一名は二晩休んで南へ続いた。牛角の一家は青麦鎮の親戚を頼る。帰巣炉は止めず、住民数は彼らが去ったあと自然に減った。
退室の日、荷物札を返し、雲毛の携帯食を一包渡す。
「また戻れるか」と羽民が聞く。
「空きベッドがあれば」
「なければ」
「まず飯を食べて、それから考える」
八日目の夜、登記の数字は四百八十七で止まった。
宿屋の正式なベッドは三十六しかない。
山腹は、天幕の灯で埋まっている。
仮の半地穴屋四十八棟が屋根を閉じたばかりで、長棚六棟は寝床で溢れ、公共厨房三箇所が同時に汁を煮ている。牛角族の広い扉の石屋は二棟しかできておらず、門枠にはガルドが髭の濃い牛の頭を刻んでいた。
ガンドが門前で長いあいだ見る。
「なぜ髭がある」
「建築には尊厳が要る」
「牛角族に、こんな髭は生えない」
「今は家が生やした」
食事を共にしたからといって、生活の摩擦は消えない。
工房が夜に鉄を叩き、ゴブリンがうるさいと言う。
劇団が昼に稽古し、ドワーフがもっとうるさいと言う。
双方は互いの小屋を壊しそうになり、最後に反響レンガの廃品で防音壁を積んだ。昼は音を吸い、夜に叩けば、その日いちばん大きな一段を出せる。
初夜に流れたのは、争いそのものだった。
双方とも、相手の声の方が聞きづらいと思った。
臨時議会は、工房と舞台の時間帯を決めざるを得なかった。
部屋番号札を並べ直す時間はない。
毎朝、厨房が糧食を報じる。
昼、宿泊組が空きを報じる。
夕方、医務室が病人を報じる。
夜、僕は宿屋、長棚、仮屋を一周し、錠前と火鉢を見る。帰巣炉は破損を指せる。扉一枚、代わりに閉めてはくれない。
フィアはよく西斜面に観測旗を挿している。
三十七枚目の記録が、もうすぐ終わる。
ある夜、彼女と一緒に巡房した。
「収容したあとも、明日の責任が要ると言ったわ」彼女は言う。
「今は明後日の方が心配だ」
「扉を開けたのを後悔してる」
山腹を見る。
天幕のあいだで湯を分け、高床小屋には羽民の肩掛けが乾き、水院から子供の笑い声が聞こえる。最初の広い扉の石屋に、灯がついたばかりだ。
「先に穀倉を建てなかったのを後悔している」
彼女は笑った。
「いかにも、あなたが言いそうなこと」
翌日、本当の問題が来た。
モリスの糧車が、時間どおりに着かない。
二台目も来ない。
南路を見に行った羽民が知らせを持って戻る。黒茨領が本道に関所を置き、晴風へ向かう糧食、塩、薬草をすべて差し押さえた。
理由は、臨時開拓区は許可のない大口取引をしてはならない、だという。
セインが法条を調べ終え、顔色が冷たい。
「そんな制限はない」
「通してくれるか」
「王都への申し立ては最短十二日だ」
ルミラは穀倉の錠を下ろし、三ギルドの代表を呼ぶ。
広間の中央に、違う糧食を入れた袋を七つ並べた。
「今の使用量で、七日」
「半分にすれば」と僕は聞く。
「十日。老人と子供が先に持たない」
窓の外、登記の列はまだ散っていない。
宿屋のベッドは三十六。
晴風にはすでに四百八十七人いる。
北の緩斜面を見下ろすと、次の移住隊の灯火が、まだ近づいていた。




