自治鎮には便所が三つ要る
セインは検収表を持ち、晴風を一周した。
戻ってから言った。「原則として、合格は一項もない」
ガルドが槌を卓へ置く。
「道は二十歩敷いた」
「最低要件は幹線への接続だ」
ルミラが井戸を指す。
「井戸の水はきれいです」
「一口しかなく、管理者はスライムだ」
ジェリーが桶から首を出す。
「ぽ」
セインが厳密に補足する。「スライムを差別しているのではない。問題は水質記録と予備水源がないことだ」
フィアが手を挙げる。
「医務室には包帯がある」
「ビスケット缶に入っている」
「缶は洗った」
「それでも医務室にはならない」
いちばん面倒なのは公衆衛生だった。
法は、常住五百人の集落に公共便所を少なくとも三箇所、決まった清掃搬出の方法、汚水の隔離を求める。
ガルドは理解できない。
「荒野はこんなに広い」
「通らない」
ギグは舞台の後ろに穴があると言う。
「通らない」
フィアがジェリーを見る。
ジェリーは素早く井戸の底へ縮んだ。
こうして晴風の第一陣の公共建設は、便所から始まった。
東側は工房に近く、西側は舞台に近く、南側は将来の市場に近い。
ルミラは東便所を田の上流に建てることに反対し、ガルドは下流の地盤が柔らかすぎると考える。二人は最後まで争い、まず試掘坑を一つ掘った。
その日、雨が降り、泥水が斜面を伝って坑へ流れ込む。
セインが傍らに立ち、記録する。
「排水不合格」
ガルドは怒って設計図を裏返した。
「高台の石基に変える」
「費用は」
「銀貨二枚増える」
「認めん」
「安く、速く、頑丈にしろと言う。三つから二つしか選べない」
「安くて頑丈」
「なら遅い」
旧塔の石材を解体して使い、牛角型の排気口はゴブリン劇団が舞台道具を一つ寄付して代えた。
最初の便所ができたとき、ガルドは中に色ガラスの窓を付けた。
「なぜだ」
「採光だ」
二箇所目には風鳴晶を使った。扉を開くと短い音楽が流れる。
「なぜだ」
「人がいる合図だ」
三箇所目はゴブリンが、英雄が便桶の魔物と戦う壁画で埋め尽くした。
セインは項目ごとに検収し、長いあいだ黙っていた。
「条文は禁じていない」
三つの便所は通った。
ジェリーは近づくことを拒否し、工房の灰滓と井戸の泥だけを担当する。
道路の最初の敷設も失敗した。
ガルドが砕石で本道を均す。翌日、レンガを満載した貨車が通り、車輪が緩い石を両側の溝へ全部押し出した。
ルミラは先に排水勾配を作れと提案する。
ゴブリンの会計は、ギルドの金をこれ以上使うことに反対した。
「道路は公共施設だ。商業ギルドだけが払うものではない」
三方は最後に使用割合で分担する。製造ギルド四割、商業ギルド四割、農業ギルド二割。宿屋が金貨半枚を立て替え、公共借入に記す。
「いい、僕が払う」と言いかけたとき、ルミラが卓の下で僕の足を蹴った。
「規則どおりに」
だから金は借入として記し、無条件で埋めなかった。
二度目の舗装は先に側溝を掘り、層ごとに搗き固める。ロックが灰耳の青年を連れて縁石を作り、ドワーフが石を敷き、劇団は歌うレンガの廃品を分岐点へ埋めた。車輪が通ると音がする。夜でも道を間違えにくい。
医務室は、通りかかった半エルフの薬師に救われた。
イヴといった。もともと一晩だけの予約だ。
入居のとき、三号がうるさいと言い、林檎の木が見える部屋へ替えてほしいと要求した。
「二階はまだ直っていない」
「なら退室する」
そのときミロが広間へ駆け込み、膝を一塊すりむいていた。
イヴは溜息をつき、薬箱を開く。
子供を手当てし、宿屋の貯蔵薬草を見、最後に退室を七日延長へ変えた。
「三食は付くか」
「診療を手伝えば付ける」
「もう引退している」
「なら宿泊の相殺だ」
「まず一ヶ月住む」
医務室は、宿屋一階のもとの物置に置いた。
第一版の部屋は通気がなく、薬草の匂いが隣の客を広間まで燻し出した。フィアは三十七枚の観測記録に従い、客室を迂回する細い風道を設計する。
最初に開いたとき、風が薬粉をセインの顔へ吹いた。
彼はくしゃみをしながら「方向、改修要」と書いた。
二度目、気流は安定して高窓から出た。
フィアはその風路図を壁に貼り、長いあいだ見つめていた。
晴風へ来てから、設計どおりに目的地へ着いた最初の風だ。
「祝うか」と僕は聞いた。
「十回、間違えて吹かなくなってから」
口ではそう言い、夕食では酸っぱい実を二粒多く食べた。
十日後、基盤施設は形になった。
井戸が二口。
荒野の旧道へ繋がる石路が一条。
常駐の薬師がいる医務室が一室。
そして過剰に設計された公共便所が三箇所。
臨時議会も、建設の争いの中で自然にできた。
三ギルドが各二名の代表を出し、長期住民が三名、宿屋と自衛準備が各一名。大きな公共支出は過半数の同意が要る。
僕は依然として責任者だ。だがカウンター前の一言で公共糧食と道路予算を決めることはできない。
少し楽になった。
同時に初めて気づく。晴風はもう、宿屋の庭だけではなかった。
検収までのカウントダウンは、あと三十一日。
人口はまだ五十六。
数合わせに人を引っ張る者はいなかった。
本当の空きベッド、備蓄、建てられる土地、仕事の席を道端の掲示に書く。
レンガ工、栽培、運送、木工を優先。
病弱者は宿屋のベッドを申請できる。
初夜の困窮者は無料。二晩目からは当番に入るか、料金を払う。
掲示を出して二日、新しい住民は一人も来なかった。
三日目の朝、ベリーがカウンターに伏せていて、突然顔を上げる。
北を嗅ぎ、何度も鳴いた。
フィアには竜語がわからない。
アランが言った。「たくさんの綿雲羊の匂いがする、と」
「何頭だ」
ベリーは前肢を二本広げ、とても大きな範囲を示した。
「数字の感覚はないのよ」とフィア。
屋根へ上がる。
北の荒野の果てで、白い長い線がゆっくり動いている。
雲ではない。
数百頭の綿雲羊が押し合い、地面に落ちた雪のようだ。羊群の前後には、荷物を背負い、車を押す背の高い影がある。
晴風の人口を揃えるために来たのではない。
移住の隊列そのものが南へ向かっている。
先頭の旗は、すでにこちらの石路へ向きを変えていた。




