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銅貨一枚で廃駅舎を買っただけなのに、魔物の荒野で国ができてしまった  作者: Karr


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10/83

自治鎮には便所が三つ要る

セインは検収表を持ち、晴風を一周した。


戻ってから言った。「原則として、合格は一項もない」


ガルドが槌を卓へ置く。


「道は二十歩敷いた」


「最低要件は幹線への接続だ」


ルミラが井戸を指す。


「井戸の水はきれいです」


「一口しかなく、管理者はスライムだ」


ジェリーが桶から首を出す。


「ぽ」


セインが厳密に補足する。「スライムを差別しているのではない。問題は水質記録と予備水源がないことだ」


フィアが手を挙げる。


「医務室には包帯がある」


「ビスケット缶に入っている」


「缶は洗った」


「それでも医務室にはならない」


いちばん面倒なのは公衆衛生だった。


法は、常住五百人の集落に公共便所を少なくとも三箇所、決まった清掃搬出の方法、汚水の隔離を求める。


ガルドは理解できない。


「荒野はこんなに広い」


「通らない」


ギグは舞台の後ろに穴があると言う。


「通らない」


フィアがジェリーを見る。


ジェリーは素早く井戸の底へ縮んだ。


こうして晴風の第一陣の公共建設は、便所から始まった。


東側は工房に近く、西側は舞台に近く、南側は将来の市場に近い。


ルミラは東便所を田の上流に建てることに反対し、ガルドは下流の地盤が柔らかすぎると考える。二人は最後まで争い、まず試掘坑を一つ掘った。


その日、雨が降り、泥水が斜面を伝って坑へ流れ込む。


セインが傍らに立ち、記録する。


「排水不合格」


ガルドは怒って設計図を裏返した。


「高台の石基に変える」


「費用は」


「銀貨二枚増える」


「認めん」


「安く、速く、頑丈にしろと言う。三つから二つしか選べない」


「安くて頑丈」


「なら遅い」


旧塔の石材を解体して使い、牛角型の排気口はゴブリン劇団が舞台道具を一つ寄付して代えた。


最初の便所ができたとき、ガルドは中に色ガラスの窓を付けた。


「なぜだ」


「採光だ」


二箇所目には風鳴晶を使った。扉を開くと短い音楽が流れる。


「なぜだ」


「人がいる合図だ」


三箇所目はゴブリンが、英雄が便桶の魔物と戦う壁画で埋め尽くした。


セインは項目ごとに検収し、長いあいだ黙っていた。


「条文は禁じていない」


三つの便所は通った。


ジェリーは近づくことを拒否し、工房の灰滓と井戸の泥だけを担当する。


道路の最初の敷設も失敗した。


ガルドが砕石で本道を均す。翌日、レンガを満載した貨車が通り、車輪が緩い石を両側の溝へ全部押し出した。


ルミラは先に排水勾配を作れと提案する。


ゴブリンの会計は、ギルドの金をこれ以上使うことに反対した。


「道路は公共施設だ。商業ギルドだけが払うものではない」


三方は最後に使用割合で分担する。製造ギルド四割、商業ギルド四割、農業ギルド二割。宿屋が金貨半枚を立て替え、公共借入に記す。


「いい、僕が払う」と言いかけたとき、ルミラが卓の下で僕の足を蹴った。


「規則どおりに」


だから金は借入として記し、無条件で埋めなかった。


二度目の舗装は先に側溝を掘り、層ごとに搗き固める。ロックが灰耳の青年を連れて縁石を作り、ドワーフが石を敷き、劇団は歌うレンガの廃品を分岐点へ埋めた。車輪が通ると音がする。夜でも道を間違えにくい。


医務室は、通りかかった半エルフの薬師に救われた。


イヴといった。もともと一晩だけの予約だ。


入居のとき、三号がうるさいと言い、林檎の木が見える部屋へ替えてほしいと要求した。


「二階はまだ直っていない」


「なら退室する」


そのときミロが広間へ駆け込み、膝を一塊すりむいていた。


イヴは溜息をつき、薬箱を開く。


子供を手当てし、宿屋の貯蔵薬草を見、最後に退室を七日延長へ変えた。


「三食は付くか」


「診療を手伝えば付ける」


「もう引退している」


「なら宿泊の相殺だ」


「まず一ヶ月住む」


医務室は、宿屋一階のもとの物置に置いた。


第一版の部屋は通気がなく、薬草の匂いが隣の客を広間まで燻し出した。フィアは三十七枚の観測記録に従い、客室を迂回する細い風道を設計する。


最初に開いたとき、風が薬粉をセインの顔へ吹いた。


彼はくしゃみをしながら「方向、改修要」と書いた。


二度目、気流は安定して高窓から出た。


フィアはその風路図を壁に貼り、長いあいだ見つめていた。


晴風へ来てから、設計どおりに目的地へ着いた最初の風だ。


「祝うか」と僕は聞いた。


「十回、間違えて吹かなくなってから」


口ではそう言い、夕食では酸っぱい実を二粒多く食べた。


十日後、基盤施設は形になった。


井戸が二口。


荒野の旧道へ繋がる石路が一条。


常駐の薬師がいる医務室が一室。


そして過剰に設計された公共便所が三箇所。


臨時議会も、建設の争いの中で自然にできた。


三ギルドが各二名の代表を出し、長期住民が三名、宿屋と自衛準備が各一名。大きな公共支出は過半数の同意が要る。


僕は依然として責任者だ。だがカウンター前の一言で公共糧食と道路予算を決めることはできない。


少し楽になった。


同時に初めて気づく。晴風はもう、宿屋の庭だけではなかった。


検収までのカウントダウンは、あと三十一日。


人口はまだ五十六。


数合わせに人を引っ張る者はいなかった。


本当の空きベッド、備蓄、建てられる土地、仕事の席を道端の掲示に書く。


レンガ工、栽培、運送、木工を優先。


病弱者は宿屋のベッドを申請できる。


初夜の困窮者は無料。二晩目からは当番に入るか、料金を払う。


掲示を出して二日、新しい住民は一人も来なかった。


三日目の朝、ベリーがカウンターに伏せていて、突然顔を上げる。


北を嗅ぎ、何度も鳴いた。


フィアには竜語がわからない。


アランが言った。「たくさんの綿雲羊の匂いがする、と」


「何頭だ」


ベリーは前肢を二本広げ、とても大きな範囲を示した。


「数字の感覚はないのよ」とフィア。


屋根へ上がる。


北の荒野の果てで、白い長い線がゆっくり動いている。


雲ではない。


数百頭の綿雲羊が押し合い、地面に落ちた雪のようだ。羊群の前後には、荷物を背負い、車を押す背の高い影がある。


晴風の人口を揃えるために来たのではない。


移住の隊列そのものが南へ向かっている。


先頭の旗は、すでにこちらの石路へ向きを変えていた。


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