56 七つの魔具4
『魔の法の書』
それが魔法学園の図書館にあるという話は、比較的有名だ。
魔法の真理を記録されているとされるその書が見つかったのは、今から500年前。とある遺跡にあったものを、名もなき冒険者が見つけて、とある国の国王に寄贈されたと言われている。
しかしその記録に不審な点は多く、そもそもその冒険者の名の記録もないことから、時の国王が権力でもって無理矢理奪い取ったのではないか、というのが通説だ。
なんて通説が大っぴらに伝わっている以上、その国は私たちのいる王国のことではなく、100年程前王国に滅ぼされた小国のうちのひとつなのだが、多くの者が使用法がわからず腐らせていたような魔法具を大量破壊兵器として使用し、小国ながら世界に君臨しようとしていた物騒な国だったそうだ。
幸い、といっていいのか、その国の王は悪政を布いていて、その国の民の多くが不満を持っていたため、内部からクーデターを起こさせることに成功し、いくつかの魔法具を使用不能に陥らせたおかげで、なんとか王国は勝利を得ることが叶った、と歴史の本に記されている。
昔と言っても、100年程度のことなので、この記録にはあまり間違いはないだろう。
そしてその、大量破壊兵器の使用を可能にしたのが、『魔の法の書』に記載されていた知識だ。
なので『魔の法の書』は危険物。
王国も『魔の法の書』の手に入れたものの、うかつな運用はできず、扱いに困って、この図書館の最奥に封印することにしたそうだ。
なので普通に閲覧できないし、そもそも所蔵されている場所自体、詳細は秘密となっている。おそらく王族であるグール王子も知らないことだろう。
そんな『魔の法の書』であるから、魔王復活の方法なんてものが載っていても、特に不思議はないかもしれない。というかむしろ、その大量破壊兵器のことを『魔王』と呼んでいる可能性すらある。
次に『支配の王冠』についての記録を紐解いてみよう。
この魔具については、歴史に登場した時点から王国所有となっていた。
というより、王国を建国した初代の王は、元々ただの放浪者だったのが、この王冠を手に入れたせいで王国を建国することになったとされる。
その初代王は清い魂をもつ心優しい人間で、誰かを支配したいなんて野望は持っていなかった。それが、『支配の王冠』を手に入れた瞬間から急に建国に目覚め、覇道を歩み始めたという。
『支配の王冠』の機能の詳細は権威を保ちたい王族によって秘匿されているが、平凡な男が建国の王となった以上、何か偉大な力があったのだろう。
次にエルスの持っていた『恋人の羅針盤』であるが、あれはあの魔法具に体液か何かをセットして、その対象の居場所を感知する魔法具なので、普通にどこにいるかわからない誰かを捜索するのに役に立ちそうだ。
残りの3つ、『破壊の大剣』『欲望の象徴』と『運命の硬貨』については、文献のいくつかに名前が出てくるのみで、それ以上の情報はどこにもなかった。
『破壊の大剣』については実物がユウシャの元にあるのだけれど、ミラによるとただ破壊力の高い大きな剣、という以上の何かはないらしい。
『魔の法の書』を閲覧すれば、何か出て来るかもしれないのだが……。
「というわけで、『魔の法の書』を見せてもらうのが一番の近道かと」
「……それ、本気で言ってるのかい?」
ミラの視線が絶対零度だ。
「や、やだなぁ。冗談に決まってるじゃないデスカ」
「ならいいけどね」
ミラはすぐに鉾を収めてくれた。
こ、怖かった。
すごくいい考えだと思ったのだが、問答する間もなく却下らしい。なぜだ。
「冗談はともかく、七つの魔具が単独でもなんらかの手掛かりになりそうなことは間違いないね」
私の思い付きを冗談で流して、ミラは結論付けた。
「とりあえず破壊の剣については実物が手の届く所にあるんだし、アタシはユウシャの剣を調べてみるよ。アンタたちは残りの『欲望の象徴』『運命の硬貨』について調べてみちゃくれないかい」
「んー、わかった」
「ウィーッス」
ボアも反論する気はなさそうだ。
……って、素直過ぎて違和感があるとか、私はボアをうがった目で見過ぎだろうか?
予約投稿に失敗してたのか、間違って削除したのかわかりませんが、2話分消失してたのであせって再投稿しました。しかし原本なので修正がかなり怪しかったり、読み直しが必要な予感です。




