55 七つの魔具3
魔法学園には、かなり巨大な図書室がある。
置かれている書籍のほとんどは魔法関係の物で、中には解読されていない文字で書かれた、謎の魔法書もある。
利用するには、魔法学園の生徒全員に発行されている『生徒証』が必要で、貴重な魔法書は閲覧するだけでも記帳が必要となる。
そんな魔法学園の図書室に、私たち、私、ボア、ミラの3人は来ていた。
正規の手続きで入室し、記帳して、魔王や七つの魔具についての本を漁る。
そしていくつかの文献を読み漁り、なんとか七つの魔具の名称を掘り起こした。
言うまでもない事だが、七つの魔具は全部で七つだ。
『混沌の投影機』
『欲望の象徴』
『魔の法の書』
『支配の王冠』
『運命の硬貨』
『破壊の大剣』
『恋人の羅針盤』
この七つだ。
…………。
「知っている名前がいくつかあるね」
ミラが息を吐いた。
私はつい、ボアを見る。
しかしボアはキョトンだ。
そういえば、ボアにはこんな話していなかったかもしれない。
「七つの魔具として記載されている『恋人の羅針盤』だけど、エルスが持っているのよ」
教えてやると、未だボアの顔はクエスチョンマークで埋め尽くされているので、仕方なく私は付け足した。
「さっきアンタが言ったように、魔王を呼び出す方法でエルスが呼び出せるとしても、そのための魔具のひとつをエルスが持っている以上、どうしようもないでしょ、ってこと」
「……ああ、そう言えばそんなことも言った感じだったっけ」
ボアはポンと手を打った。
なんだよ、いくらただの思いつきだからって、自分が言った言葉スルーすんなよ。
思わず机の下のスネを蹴ると、「テッ」ボアが反応して声を上げた。なんてことはまあ、どうでもいいとして。
「わかってる魔具はそれだけじゃないよ。『支配の王冠』は有名な国宝だし、『魔の法の書』はこの図書館のどこかにあると言われている。極めつけは」
ミラは深く、長くため息をついた。
「『破壊の大剣』はユウシャが持っているあの剣だ」
それはあまりに理不尽な事実。なぜならあの剣は、魔界で手に入れたものだと聞いていたからだ。
魔王を召喚するための七つの魔具がハナからこの世界になかったなんて。
「普通であれば、魔王は召喚できなかったはずだってこと?」
確認のために聞いてみると、ミラは苦笑して曖昧に首を振った。
「そうとも言えないさ。エルスが『恋人の羅針盤』を持って行ったように、誰かが『破壊の大剣』を所持した状態で魔界に渡ったのかもしれない」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
「いずれにせよ、エルスが『恋人の羅針盤』を持っている以上、エルスの召喚に魔王召喚を試すなんてことはとれない選択肢になったわけだけど」
「魔具を集めているっていう宗教組織にとっては、諦める要因にはならないよねえ」
エルスが魔界に持ち出しているなんてことは知らないだろうし、もし知ったとしても、他の魔具を集めた後、エルスをこちらの世界に戻すための行動をとればいい話だ。
今の私たちがそうしようとしているように。
「ちなみに他の『欲望の象徴』『運命の硬貨』について、何か情報はないの」
「さてね。某宗教組織は秘密主義らしいから、すでに手に入れた魔具があったとしても、その情報は表にでてこないだろうけど……」
「こんな場所で机上の空論してても答えは出ないんじゃね? ってゆーか、魔王はともかく七つの魔具が特定の何かを召喚するための道具なら、単体であってもなんらかの役に立つかもしれないとか、あれ? オレこの推理、名推理じゃね?」
「うぅ~ん、たしかにそれは……そうかも……いやでも」
「補助魔具って考え自体は悪くはないと思うよ。けど宗教組織を相手取ってまで、七つの魔具に拘る必要があるとは思えないねえ」
ミラの言葉はもっともすぎる。
だけど、都合よくそんな魔具が転がっているだろうか?
「もちろん可能性がある以上七つの魔具について調べるのも悪くはないと思うけど、これだけ身近に何個もあるんだ。目立つことをしたらヤブ蛇になるよ」
「ヤブ蛇ってことはオレの出番じゃね?」
蛇のあだ名を持つボアが自虐する。
「それじゃ、せっかく図書館にいるんだし、他の魔具についても調べてみよっか」
「そうだね。一般的な召喚魔法の本にも、いい情報があるかもしれないよ」
「ちょっ、スルーとか冷たくね?」
ボアが何か言っているが、当然これもスルーして私たちは調べ物を再開することにした。




