54 七つの魔具2
そもそも召喚魔法という手段を思いついたのは、エルスを送った転移装置のことを思いだしたからだ。
送れるのであれば、取り寄せることもできるはず。
そんな単純な理屈だった。
そして、それに類する装置は比較的簡単に見つかった。
3Dプリンターのような仕組みだったり、時間停止の応用だったり、ハズレも多かったけれど、空間を捻じ曲げるようなワープ理論を展開した装置の存在も、普通に調べるだけで確認することができた。
ただしそれは、この世界に限る、といったもので。
3次元で、2次元の紙を折り曲げることにより、遠くにある点と点を重ねることができるように、この空間からこの空間の間を瞬間移動させる装置は、特定の機関では有効活用されているレベルで存在していた。
しかし。
エルスがいるのはこの世界ではなく魔界である。
魔界にあるエルスを召喚するなんて装置は、魔界の存在自体が一般に知れ渡っていない現状において、簡単に見つかるはずもなかった。
だから私たちが探したのは、異界の物がこの世界に現れた記録。
それを調べに調べて、調べれば調べるほど出所のわからないものはどこにでもあって、それでも、とある時代、一つの地域で、そういったものが大量発生した記録に行き当たり、そこから辿って、例の召喚装置を発見したのである。
光で描かれた魔法陣を投影して異世界の者を召喚する、四角い箱。
人と同じくらいの高さの立方体で、上部には生贄を投入するための穴が開いている。
使用した感じだと、中で生贄を粉砕して、分解し、なんらかのエネルギーを得ているようだった。
当然仕組みはわからないが、前世の世界で電子レンジを愛用していた私にとっては、そんなことは些事である。
ただひとつ問題があって、この召喚装置、どこにも名前らしきものが明記されていなかったのだ。いや、かつては明記されていたのかもしれないが、何せ古いものであるし、擦り切れて解読できない文字が多すぎるのである。
だから、『七つの魔具』のうちのひとつと言われても、なんだかピンとこないというか、それを確信できる要素はどこにもない。
とはいえ、
「七つの魔具の一つに、『この世にあらざる魔王を呼び寄せる、混沌の投影機』ってのがあるんだ。つなげて考えてはいなかったからずっとスルーしていたけど、あらためて字面を見ると、いかにも、って気がしないかい」
このミラの言葉を否定するのは難しい。
ぶっちゃけ気恥ずかしい厨二的名称だとはおもうが、『七つの魔具』なんていう物はその存在自体が厨二的だから、これは致し方の無いところなのだろう。
「……召喚装置が七つの魔具のうちのひとつだったとして、そのことに何の意味があるの?」
なんとなくその答えはわかっているような気がしつつ、確認に意味を込めて聞いてみた。
ミラが頷く。
「魔王の復活を望む宗教組織があるらしい。その組織は魔具を集めているとか」
想像通りだ。
「何かを召喚する装置自体はそれほど希少ではないし、修理して使用するまでは召喚装置が投影機の体を為しているとは知られていなかったから、魔具と繋げて考える者もなっただろうけど」
投影機と判明した今、その組織とやらに目を付けられる可能性も0ではなくなったってことか。
「ところでさぁ」
ボアがヘロっと要らないことを言った。
「エルスが魔王だって可能性はないん?」
「なんだ、その超理論!」
即座に突っ込むも、根拠0のこの意見が不吉すぎてスルーできない。
「だって詳細知らないけどエルスは魔界に行ったんだよね? んで未だ戻ってこれないってことは、魔界はそれなりにヤバイところってことだろ? となると、この世界を滅ぼす程度の力を手に入れててもおかしくないんじゃね?」
ググゥ。この超理論は、魔王の名が初めて出た時にも通じる説得力をもつ。
国を滅ぼすような異世界のナニカ=魔王であるなら、そういった存在を感知して召喚するのが魔王召喚の正体なのであれば、魔界で力をつけたエルスを召喚できる可能性も0ではないのかもしれない。
そしてもしそうであるのならば……、
「もしそうなら、七つの魔具を集めることも選択肢のひとつになるね。どちらにせよ無関係でいられる保証もないし、七つの魔具について調べるのは有用だと思うよ」
ミラが結論付けて、召喚研究会の次の活動は、七つの魔具と魔王召喚について調べることと決まった。




