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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第3章 中等部
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49 クラス転移

すいません。お久しぶりです。

 HRが始まる直前のことだった。

 先生が来るのを待っていた生徒たちの足元に、漫画やアニメでお馴染みの魔法陣のようなものが浮かび上がる。


 ラノベを愛読する幾人かの生徒は思った。


「キタコレ! クラス転移だ」


 何人かは実際口に出していた。

 そして……。


 予想とは違い、彼らが再び現れたのは、学校の体育館のような場所だった。

 そして彼らを冷めた目で見つめるのは……。


「なにこれ?」


「いや、普通に失敗じゃね?」


「召喚できてるし、成功でしょ?」


「人数多すぎね?」


「…………」


 自分たちより少し下くらいの年齢の男女。しかし顔立ちは、日本人の彼らからみて、外人風だ。

 一人はくすんだ金色の短髪に明るい緑の瞳の少女。小柄で、体型は普通、顔はおそらくかわいい部類なのだろうが、ファンタジーに期待するような圧倒的な存在感はなく、外国にいけばそこらにいそうなレベルの地味系少女だ。

 もう一人は、明るいオレンジがかった金髪に黄緑の瞳、ソバカスがあって快活そうに見える少年だ。中肉中背、鼻が少し上を向いていて愛嬌のある顔とはいえるが、美少年ではないし、高貴な雰囲気も皆無。


 いるのはその二人だけだ。

 なんだろう。ラノベのクラス転移と違う。

 なんというか、しょぼい。


 しかし諦めの悪い、勇気ある厨二がそれを口に出した。


「ス、ステータスオープン」


 ラノベに興味がない面々には意味不明だったが、一部の同志はその勇気を称えた。しかし、


「あ、そういうのないから」


 ソバカスの少年によって、バッサリきられる。


「ふ、ふざけんな!! こんなの誘拐だぞ! わかってん……」


「わ、馬鹿」


 激高した勇気ある厨二が罵倒し、思慮深い厨二があわててその口を塞いだが……。


「あ、これ面倒くさいヤツだ。退喚……っと」


 短髪の少女が、なにやらボードのようなものを操作すると、HRの教室から転移してきた全員が、学校の体育館のような場所から消えていた。









「……というわけで召喚は成功しました」


 私リオナは蛇……ボア=コートに、口頭で事実確認をして、状況に区切りをつけることにした。人数が多かったことなど、まるっとスルーだ。


 ちなみにここは魔法の演習場、私たちは手に入れた召喚装置を使って、無作為な召喚を試したところだ。


「ハイハイハーイ、質問しつもーん!」


 二人きりだというのに、わざわざ手を上げてボアが質問する。


「退喚って言ってたけど、さっきの連中って何処行ったの? 元の場所って感じ?」


そんなの、


「私が知るわけないじゃない」


 私が使ったのは、遺跡から発見されたという曰くの謎の召喚装置だ。それを家電よろしく、適当に設定して召喚ボタンを押してみたに過ぎない。


 その結果、何かが召喚されたのだから、召喚は成功だ。


「ほら、パソコンだって、削除して、ゴミ箱フォルダ空にしても、データがどこかに残ってるって聞くじゃない。それと一緒で、さっきの連中がこの世界のどこかに残ってても、時空の狭間に落ち込んでても、専門家じゃない私にはわからないわけよ。魔法なんてブラックボックスなんだからさ」


「恐いわー。召喚された連中かわいそうだわー」


「ボアはラノベの読みすぎだと思う」


 古来より、悪魔召喚は、召喚者の安全が重視されるシステムだ。

 召喚者の安全のために悪魔を消滅させることはあっても、退喚後の悪魔の安全に配慮する必要など、あろうはずもない。召喚者にとって、後顧の憂いなく消滅させた方が安心なくらいだ。


 ゆえに召喚装置にとって重要なのは、召喚された者の安全ではなく、召喚されたものが召喚者に対して危害を加えられないように処理する仕組みである。


 そうは言っても、たき火が消えても煙が残るように、召喚物を消しても魂みたいなものが残ったら厄介かもしれないから、元の場所に戻して、何事もなかったかのようにしてくれるのが恨みを買わなくていい気はするけど、そのあたりのことは確認のしようもないし、気にしないのが一番だと思う。


「そんなことよりも、この装置で召喚が行えることが確認できたんだから、次のステップに行くわよ」


「……本気で? ストーカーを召喚するなんて、あまり気が進まないって感じなんだけど」


 ボアが往生際悪く渋る。


 その気持ちは私にもよくわかる。

 ストーカー……、エルスを魔界送りにしたのは、私が初等部に入る前、中等部に上がった今となっては6年以上前のことだ。


 最初のうちはよかった。もくろみ通り平和(?)な学校生活を送り、レイスという協力者を得て、ボアという悪友とも再会し、王都の暮らしにも慣れて、魔法のこともいろいろ学んだ。


 だからといってあのエルスに対抗できる力をつけたと楽観視するわけではないけれど、それでも、少しはマシに対抗できるよう準備を整えた。


 しかし、半年で帰還すると予想していたエルスが1年経っても戻らず、2年経ち、3年経って、私は恐れだした。


 エルスが永遠に戻らないなんて希望的観測はできない。

 であれば、エルスはいつか戻る。しかも、魔界でした苦労分の憎悪を蓄積した状態で。


 私は想像し、恐怖した。戻ったエルスをどうなだめるか、悩み始めた。

 そして、少しでも傷を浅くするためには、エルスに一日でも早くご帰還願う必要があると考えた。


 そこで召喚魔法というわけだ。

 私が魔界に行って探すのは危険だし、そもそも魔界で再会した場合、こちらに帰してもらえる気がしない。

 だから私は召喚魔法に賭けることにした。


 思い立ったのが3年前。それから文献を調べて、それらしい装置を探して、何とか骨董品から壊れた物を取り寄せたのが1年前、それを修理に出してようやく手元に届いたのがおとといのことだ。


 それから、この演習場を借りる手続きを学校側に申請して、本日ようやく装置の起動に成功したわけで。


「エルスを恐れる気持ちはわかるし、アンタは特に命の危険があるとは思うけど、何もしないであの子が自力で戻ってくることを考えれば、努力だけはしておいた方がいいって、アンタも納得したでしょーよ」


 そう。最悪、召喚に成功しなくてもいい。

 エルスを心配して、なんとか魔界から連れ戻せるよう、努力した、その姿勢を見せることに意味があるのだ。


「アンタだって、このままエルスが戻らないなんて、希望的観測はできないでしょ?」


「……人ってさぁ、夢を見る生き物じゃないかぁ」


 ボアがひどく遠い目をした。


 ゲス! 感情のままにボアのスネをつま先で蹴る。


「もう最近は悪夢しか見てねーんだよっ」


 エルスの帰還をこれほど望むことなろうとは。

 過去の自分には、けして想像できなかった現実が、今中等部に進学した、12才の私の目の前には、あった。

中等部に入りました。6年ばかり経ってるので、全体的に親密度上がった感じになってるかとは思います。クラス転移の勇者さんたちがどうなったかは永遠の謎で……。


一応完結までのプロットは立ててきたので、週一くらいで更新していきたい予定です。

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