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私とストーカーと魔法の学校  作者: WLCノベル
第2章 初等部
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47 クッキン

引き続きテリヤキ

 その調理場は、食堂の調理場の地下にあった。

 排気口からの匂いを誤魔化すためらしいけれど、思っていた以上に秘密施設であるようだ。


「この寮には庶民出身の奨学生や、貴族とは名ばかりの貧乏貴族もいるから、こういう場所があることが知れると面倒なことになるんだよ」


 レイスが説明してくれる。


「奨学生には食堂の食券が支給されているけれど、それを金に換える生徒も少なくないしね、自給自足を認めたら、雑草を食べる者が出てきかねない」


 まあ、この学校敷地内、異常に森が広いし、雑草と言わず山菜やキノコも採れそうだよね。


「でも調理実習とかあるなら、校内も調理場があるはずよね」


「そうだね。料理部に喧嘩売る気なら、隙を見つけて使えるかもしれないね」


 ちなみに料理部は、体育会系の上下関係で、入学したての生徒が入部したとして、好きに調理場を使える望みはないらしい。


「わかってるとは思うけど、ここもそう頻繁に使うわけにはいかないから」


「了解」


「大丈夫でありますよ! 食材が腐りそうになったら、私が有効に使いますですから!」


「うん、アンナが作って、密輸してくれればいいよね」


「え?」


「料理できるんでしょ?」


「できるでありますが……」


「アンナが作るなら僕は参加しないから」


 ええー、そんな腕なの。

 というかナチュラルにレイスが参加することになってるんだけど、


「レイスも食べるの?」


「この部屋都合したのは僕なんだけど」


「いや、不満があるんじゃなくて、テリヤキが特に好きというわけでもなさそうだったし、食堂の食事も方が好きなんじゃないかと思って」


「ぶっちゃけて言うとそうなんだけど」


 えー、そこは否定しないの?


「正直なところ好奇心? 君はあの、ストーカーの胃袋も掴んでいたんだろ?」


「それ、どこ情報?」


「いろいろとね」


 まあ弁護士の闘いは情報戦だもんね。


「あの!!」


 アンナが話題に割りこんできた。


「そんな無駄話より、テリヤキを作りませんか!」


 すごい熱意だ。

 はぁ、レイスがため息をついている。


 ほんとアンナって、馬鹿な子ほどかわいいって感じだよね。

 男だったらあれだけど、今は女だし。


「それじゃ始めようか。鳥肉頂戴」


「はい!」


 アンナ、いい返事だ。

 私は鳥もも肉を受け取って、しょうゆ、みりん、砂糖、塩、米酒で作った合わせ調味料に漬け込んだ。

 一方みそ汁の用意もする。手鍋に水を張り、昆布を入れて火にかけてから、沸騰したら昆布を取り出して煮干しを投入する。

 同時にフライパンをあっためて……。


 説明遅れたけど、ここの調理具は魔法具だ。

 といってもプロパンガスを使ったガスコンロって感じで、使い勝手に悩む要素は何処にもない。


 とまあそんなわけで、火加減を調節したりしながら、


 合わせ調味料に漬け込んだ鳥もも肉をフライパンにのせ、手鍋から煮干しをすくい取って、麩とわかめを投入する。


 ちなみに、ごはんは炊飯ジャーのような魔法具に任せきりなので、そのうち炊けるだろう。


 後は蓋をしたり蓋をとったりしながら、鳥もも肉に火を通して、手鍋の火を切って、味噌を投入グルグル混ぜて……。


「できたー」


 私が完成した料理を切って取り分けて皿に盛ると、レイスは非常に複雑な表情、アンナはキラキラした目でそれを見つめた。


「どうぞ召し上がれ」


「キターーーー」


 迷いなくテリヤキを口に含んで、さらに口に含んで、リスのようにモグモグするアンナはともかく、レイスは何か文句がありそうだ。


「何?」


「あ、いや……」


 一瞬だけ言い淀んだレイスは、それでも軽く目を逸らして、本音を漏らした。


「テリヤキは大いに焦げている上、肉汁が流れ出てしまっているし、味噌汁はワカメが多過ぎる上、麩はスキヤキに使うような大きな麩だし、なんというか」


「ウマーーー!!! ウマっすよリオナさん!!!」


 アンナが吠えた。絶妙のタイミングだ。

 レイスは会心の一撃を食らって、言葉を失った。


「レイス、料理は目でなく舌で味わうものよ」


 私はしたり顔で、自分の作ったジャングル料理を口に運んだ。


 焦げた醤油のサクサク感が美味しい、肉汁が抜けてパサつく肉が味わい深い、ぬるっとした皮に宿る鳥臭い油がコラーゲンの恵みを感じさせる。

 どろどろに溶けたワカメは口いっぱいに広がり、汁を吸いこんだ大きな麩が、口の中で汁をほとばしらせる。


 うん、まいうー。


「美味しいと思ってしまう自分がちょっと嫌になる料理だね」


 うんざりした顔でそんなことを言いながらも、レイスも結局完食したそうな。

ちょっと失敗した料理って、意外に美味しかったりしますよね。

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